第四章 第14話 対価
夕方。
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火は、
落ち着いている。
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鍋は、
空。
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商隊の者たちは、
眠っている。
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静かだ。
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リーネが、
顔を上げる。
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はっきりと。
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「大丈夫」
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一拍。
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「ちゃんと効いてる」
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迷いはない。
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言い切る。
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トールが、
息を吐く。
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「……ならいい」
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ガルドが、
短く頷く。
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ジョーは、
何も言わない。
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ただ、
その言葉を信じる。
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その時。
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商隊の男が、
ゆっくりと歩いてくる。
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まだ、
ふらついている。
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だが。
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立っている。
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「……助かった」
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深く、
頭を下げる。
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一拍。
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顔を上げる。
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「礼をさせてくれ」
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短く。
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「好きな奴隷を持っていけ」
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空気が、
止まる。
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ジョーの目が、
揺れる。
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「……奴隷……?」
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小さく。
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現実として、
初めて見る。
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トールが、
軽く言う。
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「あぁ、そういう商隊か」
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ガルドも、
頷く。
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「納得だな」
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ダンも、
何も言わない。
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受け入れている。
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ジョーだけが、
言葉を失う。
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「……本当に、いるのか……」
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並ばされている。
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奴隷たち。
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人間。
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獣人。
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合わせて、
十一人。
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男が多い。
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女は、
少ない。
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子供もいる。
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年齢も、
ばらばらだ。
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首から、
札が下がっている。
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「裁縫」
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「料理」
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「農」
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「狩り」
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「戦」
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「算」
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簡単な、
区分と数字。
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子供には、
何も書かれていない。
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ガルドが、
前に出る。
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「……なら」
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一拍。
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「二人でもいいか?」
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商人が、
頷く。
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「ああ、構わん」
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ガルドが、
トールを見る。
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「遠慮するな」
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短く。
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「お前なら、どれを選ぶ」
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トールが、
歩く。
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視線を走らせる。
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止まる。
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一人。
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小さな影。
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他の後ろに、
隠れるように立っている。
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だが。
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目は、
逸らさない。
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怯えている。
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それでも、
逃げない。
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トールが、
迷いなく言う。
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「……こいつだ」
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短く。
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子供を指す。
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ガルドが、
視線を動かす。
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札を見る。
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「狩り」
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一拍。
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本人を見る。
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無駄に動かない。
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周囲を、
見ている。
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理解している。
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「……俺はこいつだ」
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静かに、
獣人の女を選ぶ。
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選ばれた二人が、
前に出される。
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鎖が、
外される。
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その時。
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ダンが、
口を開く。
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「待て」
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短く。
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全員の動きが止まる。
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「子供は領主の所に連れて行けない」
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一拍。
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「獣人もだ」
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静かに。
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だが、
はっきりと。
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トールが、
顔をしかめる。
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「……そうなの?」
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ガルドは、
すぐに理解する。
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「……なら、一度戻す」
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ダンが、
頷く。
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「村に戻れ」
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短く。
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「俺たちが戻るまで待機だ」
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トールが、
息を吐く。
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「分かった」
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ガルドも、
頷く。
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選ばれた二人を見る。
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「行け」
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それだけ。
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命令でもなく、
説明でもない。
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ただの、
事実の提示。
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二人は、
頷く。
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逆らわない。
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二人を連れて、
歩き出す。
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村へと。
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ジョーは、
その背中を見ている。
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何も言えない。
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ただ。
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世界の一部を、
知った。




