第四章 第11話 水のかたち
泉を出てから、
しばらく。
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水の感覚が、
残っている。
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消えない。
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ジョーが、
手を見る。
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「……まだ、いるな」
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小さく。
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リーネが、
隣で笑う。
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「当たり前でしょ」
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軽く。
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「もらったんだから」
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一歩、
前に出る。
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振り返る。
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「やってみて」
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短く。
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ジョーが、
頷く。
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集中する。
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だが。
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何も起きない。
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「……出そうとしてるでしょ」
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リーネが、
言う。
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見抜く。
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ジョーが、
わずかに眉を動かす。
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「違うのか」
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「違う」
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一歩、
近づく。
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距離が、
縮まる。
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リーネが、
手を取る。
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自然に。
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「火みたいに、出すんじゃないの」
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静かに。
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「水はね」
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一拍。
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「そこにあるもの」
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優しく。
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「形を作るんじゃなくて」
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「流れに、乗るの」
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ジョーが、
目を細める。
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理解する。
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しようとする。
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そのまま、
手が重なる。
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離れない。
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「……こうか」
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小さく。
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空気が、
揺れる。
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水が、
現れる。
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小さい。
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形は、
曖昧。
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だが。
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確かに、
そこにある。
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リーネが、
笑う。
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「うん」
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嬉しそうに。
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「今の、いい感じ」
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ジョーが、
水を見る。
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静かに。
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そして。
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消す。
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自然に。
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息を吐く。
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「……難しいな」
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「最初はね」
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軽く。
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だが。
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離れない。
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手が、
まだ。
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触れている。
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気づかないふりを、
している。
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時間が、
過ぎる。
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何度も、
繰り返す。
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失敗して。
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形になって。
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崩れて。
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それでも。
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少しずつ。
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掴んでいく。
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気づけば。
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空が、
暗くなっている。
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夜。
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灯りが、
揺れる。
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静かだ。
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誰も、
いない。
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二人だけ。
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ジョーが、
言う。
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「……泊まっていくか?」
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リーネが、
目を伏せる。
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一拍。
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小さく、
息を吐く。
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「……うん」
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それだけ。
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それで、
十分だった。
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言葉が、
なくなる。
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距離が、
近い。
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離れない。
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触れる。
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自然に。
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拒まない。
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水のように。
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流れて。
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重なって。
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受け入れていく。
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灯りが、
揺れる。
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二人の影も、
揺れる。
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静かに。
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深く。
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夜が、
満ちていく。




