第四章 第10話 守り神
声が、
響く。
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直接、
意識に。
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柔らかい。
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だが、
どこか寂しい。
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「君が、この泉を助けてくれたんだね」
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ジョーは、
何も言わない。
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ただ、
聞く。
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静かに。
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「数十年前――」
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一拍。
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「この村の長が、まだ子供だった頃」
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水面が、
わずかに揺れる。
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「ここは、とても神聖な場所だった」
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穏やかに。
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「すべての生命に必要な水」
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「だから、人々は拝み、礼を言っていた」
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静かに。
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だが。
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その声音が、
沈む。
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「でもね」
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一拍。
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「君も聞いたでしょ」
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「村が焼き討ちされたって」
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空気が、
冷える。
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「あの男は」
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「人を取り込み、奪う」
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「とても、悪辣な者だった」
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低く。
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「君が掬い上げてくれたあの像はね」
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一拍。
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「その男に蹴られ、踏み躙られて」
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「そして――」
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間。
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「誰も祈れないようにと、この泉に投げられた」
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静寂。
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「僕はね」
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小さく。
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「とても、悲しかった」
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水面が、
揺れる。
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「そして――」
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「恨んだ」
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一拍。
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「強く、強く」
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「その男を」
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空気が、
歪む。
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「気づいた時には」
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「僕の魔力が暴走していた」
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静かに。
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「……あのスライムはね」
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一拍。
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「この泉で起きた悲しい出来事と」
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「僕の魔力暴走が原因だったんだ」
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謝るように。
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「ごめんね」
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小さく。
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「迷惑をかけて」
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「恨みに飲まれて……」
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「覚えていない部分も、多いんだ」
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「数十年分ほど」
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長い時間。
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「でも」
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一拍。
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「君の祈りを見て、思い出した」
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優しく。
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「平々凡々が、一番幸せだって」
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静かに。
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「だから、あの子たちには悪いけど」
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「こうして、話せる機会を作ったんだ」
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一拍。
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「僕を」
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「この泉を」
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「助けてくれて、ありがとう」
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深く。
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「お礼に――」
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水面が、
静かに光る。
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「君に、水の力をあげる」
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「水魔法が使えるようになるよ」
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音が、
消える。
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静寂。
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ジョーは、
何も言わない。
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ただ、
受け止める。
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そして。
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意識が、
戻る。
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「ジョー!」
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声。
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「おい、ジョー!」
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トールだ。
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目を、
開ける。
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景色が、
戻る。
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泉。
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祠。
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リーネ。
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ガルド。
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「……悪い」
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小さく。
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「なんだ?」
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まるで、
寝起きのような感覚。
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トールが、
息を吐く。
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「一時間だぞ」
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呆れたように。
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「祈ったまま動かなくなってよ」
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リーネが、
顔を歪める。
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「心配したんだから……」
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涙声。
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ジョーが、
ゆっくりと起きる。
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ガルドが、
言う。
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「……何かあったんだろ?」
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変わらない。
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ジョーが、
少しだけ間を置く。
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そして。
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答える。
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「泉の守り神に、会ってた」




