第四章 第8話 欠落のなかで
アンが、
居なくなってから。
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数日。
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リーネが、
杖を構える。
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新しい。
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まだ、
馴染みきっていない。
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それでも。
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目は、
迷っていない。
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トールが、
腕を組んで見る。
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「やってみろよ」
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軽く。
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リーネが、
小さく頷く。
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一拍。
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そして。
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振り返る。
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ジョーを見る。
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少しだけ、
不安が混じる。
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「……失敗しちゃったら」
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間。
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「消してね?」
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小さく。
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ジョーが、
静かに頷く。
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それで、
十分だ。
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リーネが、
前を向く。
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杖を握る。
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集中。
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火種が、
生まれる。
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小さい。
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揺れている。
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不安定。
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「……まだ弱いな」
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トールが、
ぼそり。
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「うるさい」
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リーネが、
返す。
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火が、
少し大きくなる。
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だが。
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制御が、
甘い。
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揺れる。
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散る。
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「っ……!」
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広がる。
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ほんの一瞬。
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ジョーが、
動く。
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「そこまでだ」
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短く。
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火が、
消える。
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完全に。
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静寂。
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リーネが、
息を吐く。
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「……やっぱり失敗」
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苦笑。
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トールが、
肩をすくめる。
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「最初はそんなもんだろ」
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一拍。
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「でも、形にはなってた」
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リーネが、
少し笑う。
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「……ほんと?」
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「前よりはな」
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短く。
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ガルドが、
横から言う。
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「暴発しても消せるなら問題ない」
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それだけ。
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リーネが、
小さく笑う。
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以前のように。
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自然に。
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ぎこちなさは、
ない。
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あの夜のことは、
誰も触れない。
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触れなくても、
成り立っている。
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ジョーが、
火を見る。
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変わらない。
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だが。
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一瞬だけ、
視線が外れる。
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何もない場所へ。
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すぐに戻る。
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誰も気づかない。
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その時。
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ダンの声。
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「ジョー」
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全員が、
振り向く。
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ダンが、
立っている。
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表情は、
固い。
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「領主から呼び出しだ」
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一拍。
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空気が、
変わる。
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「隣村との合併の件だ」
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さらに。
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「……泉の件も含めてな」
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重い。
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リーネの表情が、
引き締まる。
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トールが、
口を閉じる。
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ガルドが、
目を細める。
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ジョーは、
何も言わない。
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だが。
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静かに、
立ち上がる。
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日常が、
終わる。
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次が、
始まる。




