第四章 第7話 巣立ち
あれから、
数週間。
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村に、
客が来る。
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ロン。
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肩に、
荷を担いでいる。
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「久しぶりだな」
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ロンが、
笑う。
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リーネが、
駆け寄る。
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「ロン!」
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嬉しそうだ。
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ロンが、
荷を下ろす。
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布に包まれたものを、
取り出す。
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「グスタフに渡すよう頼まれてたやつだ」
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短く。
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差し出す。
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リーネが、
受け取る。
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開く。
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杖。
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新しい。
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細工が、
美しい。
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リーネの目が、
輝く。
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「……これ……!」
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声が、
弾む。
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何度も、
握る。
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確かめる。
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そして。
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振り返る。
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走り出す。
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ジョーの元へ。
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「ジョー!見て!」
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無邪気に。
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嬉しそうに。
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ジョーが、
視線を向ける。
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何も言わない。
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だが、
静かに微笑む。
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それで、
十分だ。
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リーネが、
さらに笑う。
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その様子を、
アンが見ている。
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静かに。
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少しだけ、
寂しそうに。
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そして。
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ロンに、
声をかける。
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「で?」
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軽く。
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「いつまで居て、
次は何処まで行くんだい?」
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ロンが、
肩をすくめる。
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「明日には出る」
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短く。
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「王都だ」
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一拍。
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「グスタフが最初に露店出した場所だ」
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それだけ。
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アンが、
小さく笑う。
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「へぇ」
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興味がある。
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ふと、
視線を外す。
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何かを、
考える。
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そして。
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ダンの方を見る。
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「なあ、ダン」
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呼ぶ。
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ダンが、
振り返る。
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「アタシさ」
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一拍。
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「ちょっと外、見てきたい」
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軽く言う。
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だが、
目は真面目だ。
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「ガルドみたいにさ」
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肩をすくめる。
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「見聞広げたい」
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それだけ。
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ダンが、
黙る。
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少しだけ、
考える。
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そして。
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頷く。
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「……止める理由はないな」
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短く。
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アンが、
笑う。
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「だろ?」
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軽い。
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だが。
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すぐに、
ジョーたちの方へ歩く。
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足を止める。
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「……しばらく留守にするけどさ」
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一拍。
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「戻ってくるからな!」
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いつもの調子。
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明るく、
笑顔で。
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それで、
終わらせる。
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誰も、
深く聞かない。
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聞けない。
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アンが、
背を向ける。
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歩き出す。
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止まらない。
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荷をまとめる。
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早い。
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迷いがない。
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そして。
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ロンの隣に立つ。
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「行こうぜ」
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半ば、
強引に。
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ロンが、
苦笑する。
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「……早いな」
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アンが、
笑う。
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「明日だと気が変わっちゃうしね」
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軽く。
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だが。
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振り返らない。
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一度も。
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そのまま、
歩き出す。
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村の外へ。
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朝の光の中へ。
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誰も、
追わない。
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ただ、
その背中を、
見送る。
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朝の光の中へ、
消えていく。




