第四章 第6話 見届けた代償
朝。
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空気が、
重い。
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何も変わらないはずなのに、
何かが違う。
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トールが、
呼び出される。
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アン。
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待っている。
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腕を組んで。
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視線は、
逃がさない。
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「……来たね」
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低く。
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トールが、
首をかしげる。
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「なんだよ」
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いつも通り。
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それが、
気に食わない。
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アンが、
一歩踏み出す。
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「昨夜のリーネ、見てないでしょ」
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トールの顔が、
わずかに動く。
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「……何があった」
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アンの目が、
細くなる。
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「やっぱりね」
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吐き捨てるように。
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「何も分かってない」
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一歩、
詰める。
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「――あんた、リーネがずっとどんな気持ちだったか、わかってないでしょ!」
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声が、
強くなる。
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トールが、
言葉を失う。
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アンが、
続ける。
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「リーネはね、臆病なの!」
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間。
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「唐突すぎるあんたの告白で、びっくりしただけ!」
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突きつける。
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トールが、
何も言えない。
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アンが、
さらに踏み込む。
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「まだガルドの方が、女心わかってるよ!」
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吐き出す。
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トールが、
揺れる。
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「一度でも惚れた女を――」
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息が、
詰まる。
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声が、
震える。
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「……泣かすなよ……」
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小さく。
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崩れる。
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アンの目から、
涙が落ちる。
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止められない。
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トールが、
完全に固まる。
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どうしていいか、
分からない。
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オロオロするだけ。
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やがて。
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アンが、
息を整える。
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涙を、
拭う。
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顔を上げる。
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そして。
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言う。
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「リーネはね」
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一拍。
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「ジョーに、ちゃんと好きって言ったよ」
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トールの目が、
開く。
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「どんな気持ちで」
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「どんな理由で好きなのか」
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はっきりと。
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「全部」
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一拍。
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「ジョーも受け入れた」
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静かに。
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そして。
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「……私の目の前で」
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落ちる。
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沈黙。
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完全に、
終わる。
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トールの中で、
何かが崩れる。
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言葉が、
出ない。
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動けない。
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そこに、
ガルドが来る。
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一部始終、
聞いていた。
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腕を組んだまま。
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「……だから言ったろ」
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短く。
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トールを見る。
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「お前は、人の気持ちを読まなさ過ぎ」
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それだけ。
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刺さる。
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トールが、
俯く。
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何も言えない。
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シーンが変わる。
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アン。
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一人。
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座っている。
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静か。
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何もしていない。
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ただ、
考えている。
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(ジョーが、リーネを受け入れた)
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(リーネは、アタシの親友)
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(ジョーは……アタシが惚れた男)
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息を吐く。
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(面倒見るよって言っておきながら……)
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小さく、
笑う。
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(アタシも……ザマァないよね)
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その時。
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アンに、
こみ上げる違和感。




