第四章 第4話 決意の結果
朝。
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変わらない。
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空気も、
音も。
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人の動きも。
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いつも通りだ。
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ジョーは、
立っている。
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火の配置。
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風の流れ。
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問題はない。
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少し、
位置をずらす。
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それだけ。
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誰も、
気にしない。
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それでいい。
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視線を上げる。
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リーネ。
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遠く。
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動きが、
少しだけ、
硬い。
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目が、
合いそうになる。
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逸らされた。
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別に、
気にしない。
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そのまま、
視線を外す。
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アン。
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反対側。
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いつも通り。
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動きに、
迷いがない。
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少しだけ、
こちらを見る。
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逸らさない。
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それだけ。
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ジョーは、
何も言わない。
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必要がない。
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昨日のことも、
変わらない。
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何も、
変わっていない。
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そういうものだ。
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ただ。
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少しだけ、
違う。
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距離。
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間。
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空気。
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言葉にするほどじゃない。
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だが、
分かる。
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それだけだ。
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昼。
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作業が、
落ち着く。
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ジョーが、
歩き出す。
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向かう先は、
一つ。
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ダン。
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座っている。
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いつも通り。
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ジョーが、
立つ。
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「……ダン」
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短く。
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ダンが、
顔を上げる。
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「どうした」
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それだけ。
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ジョーが、
少しだけ、
間を置く。
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そして、
言う。
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「話がある」
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珍しい。
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ダンが、
黙る。
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聞く姿勢になる。
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ジョーが、
続ける。
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「俺は」
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一拍。
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「この世界の人間じゃない」
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静かに。
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ダンの目が、
わずかに動く。
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だが、
遮らない。
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ジョーが、
続ける。
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「別の世界から来た」
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説明はしない。
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必要がない。
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「火の扱いも」
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「知識も」
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「全部、そこで覚えたものだ」
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短く。
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それだけ。
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ダンが、
息を吐く。
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「……だからか」
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小さく。
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納得するように。
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ジョーが、
続ける。
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「戻れると思ってた」
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一拍。
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「だから、関わらなかった」
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「情が湧けば」
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「戻る時に、面倒になる」
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淡々と。
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だが。
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「……もう無理だ」
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短く。
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断定。
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「気配がない」
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それだけ。
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沈黙。
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ダンが、
ゆっくりと、
頷く。
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「……そうか」
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それだけ。
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否定も、
驚きもない。
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受け止める。
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それだけだ。
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ジョーが、
言う。
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「だから決めた」
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一拍。
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「ここで生きる」
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はっきりと。
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迷いはない。
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ダンが、
少しだけ、
笑う。
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「今さらだな」
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短く。
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ジョーは、
何も言わない。
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その通りだ。
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ダンが、
立ち上がる。
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「なら」
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一拍。
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「ちゃんと言っとけ」
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それだけ。
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視線が、
外へ向く。
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仲間たち。
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いつもの場所。
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ジョーが、
振り返る。
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歩き出す。
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足は、
止まらない。
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夕方。
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いつもの場所。
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ガルド。
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トール。
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アン。
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リーネ。
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四人がいる。
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ジョーが、
立つ。
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視線が、
集まる。
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静かになる。
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ジョーが、
言う。
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「……話がある」
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それだけ。
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誰も、
口を挟まない。
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待つ。
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ジョーが、
続ける。
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「俺は」
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一拍。
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「この世界の人間じゃない」
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空気が、
止まる。
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だが、
止まらない。
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「別の世界から来た」
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「今まで黙ってた」
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「戻るつもりだったからだ」
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短く。
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無駄がない。
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そして。
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「……だが、無理だ」
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断定。
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「だから」
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一拍。
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「ここで生きる」
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それだけ。
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沈黙。
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風の音だけが、
通る。
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最初に動いたのは、
トールだった。
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「……へえ」
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少しだけ、
笑う。
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「よく分かんねえけどさ」
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肩をすくめる。
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「ジョーはジョーだろ?」
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それだけ。
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「なら、いいじゃん」
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軽く。
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それで終わり。
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ガルドが、
鼻で息を吐く。
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「……やっぱりな」
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短く。
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ジョーを見る。
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「怪しいヤツだとは思ってた」
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一拍。
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「見立て通りだ」
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それだけ。
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だが、
続ける。
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「……だが」
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足元の薪を、
軽く蹴る。
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「村に貢献してるのも事実だ」
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視線を逸らす。
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「認めたくはないが」
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小さく。
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「認める」
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それだけ。
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アンは、
何も言わない。
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ただ、
見ている。
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ジョーを。
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一度、
目を閉じる。
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胸の奥で、
何かがほどける。
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(……まだ)
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わずかに、
息を吐く。
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(まだ、一緒に居られるんだ……)
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小さく、
笑う。
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らしくないほど、
柔らかく。
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そして、
目を開ける。
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視線を、
外さない。
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逃がさない。
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変わらない。
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リーネが、
一歩だけ、
踏み出す。
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迷いながら。
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それでも、
言う。
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「……話してくれて」
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少しだけ、
間があく。
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「ありがとう」
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小さく。
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ジョーを見る。
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だが。
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視線が、
揺れる。
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(やっぱり……)
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胸の奥。
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ざわつく。
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(気になる)
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トールの声。
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あの目。
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(……どうしよう)
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答えは、
出ていない。
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出ているのに、
決められない。
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リーネが、
視線を落とす。
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揺れている。
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まだ。
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だが。
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もう、
知らなかった頃には、
戻れない。
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ジョーは、
動かない。
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変わらないが、
変わっていく。
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それが、
答えだった。




