第四章 第3話 決意 後編
夜。
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扉の外。
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足音が、
遠ざかる。
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リーネの気配が、
消える。
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アンは、
動かない。
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見ている。
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その背中。
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完全に、
見えなくなるまで。
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やがて、
静寂。
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アンが、
小さく息を吐く。
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「……頑張ったね」
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ぽつり。
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優しさ。
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本音。
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だが。
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それで終わらない。
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目が、
変わる。
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静かに、
前を向く。
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歩き出す。
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迷いはない。
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扉の前。
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止まる。
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一瞬だけ、
目を閉じる。
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そして、
開く。
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覚悟が、
そこにある。
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扉を開ける。
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中へ。
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静かな空気。
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ジョーが、
立っている。
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変わらない。
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アンが、
一歩、入る。
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身体を預ける。
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自分の気持ちを乗せて。
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逃げ道を断つように、
扉を、
閉める。
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カチャリ。
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音が、
やけに大きく響く。
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「……行った?」
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軽く。
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ジョーが、
頷く。
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アンが、
小さく笑う。
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「そっか」
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一歩。
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踏み出す。
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距離を、
詰める。
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「見てたよ」
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短く。
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「全部」
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一拍。
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「……あの子」
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視線を、
落とす。
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「本気だったね」
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小さく。
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「怖かっただろうに」
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本音。
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だが。
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顔を上げる。
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ジョーを見る。
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「でもさ」
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一歩、
さらに近づく。
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「アタシの覚悟も」
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一拍。
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「……甘くないよ?」
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低く。
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ジョーが、
短く言う。
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「……変わらない」
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一拍。
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「俺たちが分かってれば、それでいい」
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静かに。
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アンが、
ほんの少しだけ、
笑う。
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「……アタシはね」
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一歩、
さらに踏み込む。
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視線を、
外さない。
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「受け入れたいの」
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距離が、
なくなる。
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「ここで、終わらせない」
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低く、
確かに。
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ジョーは、
何も言わない。
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だが、
視線を逸らさない。
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受け止めている。
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アンが、
息を近づける。
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「ほんと……」
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わずかに、
笑う。
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「罪な男だよ」
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責めない。
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選んでいる。
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自分で。
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そのまま、
身体を寄せ、
口吻る。
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……逃がさない。
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……離れない。
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……離さない。
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夜。
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静かに、
深くなる。
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ユラユラと揺れ続ける。
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二人の影。
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離れない。
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離さない。
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ランタンの灯りと共に。




