第四章 第1話 帰郷
村。
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朝。
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風が、
通る。
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変わらない。
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はずの、
音。
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木を打つ音。
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人の声。
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だが。
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声が、
多い。
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少しだけ。
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聞き慣れない、
言葉。
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訛り。
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リーネが、
足を止める。
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見る。
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知らない顔。
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子ども。
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母親。
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荷を持つ男。
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目が合う。
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すぐ逸らされる。
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遠慮。
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居場所を、
探すような視線。
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「……誰?」
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小さく、
呟く。
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声。
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「……戻ったか」
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振り返る。
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ダン。
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立っている。
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腕を組み、
静かに。
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一歩、
近づく。
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リーネを見る。
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わずかに、
目が細くなる。
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「……おかえり」
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短く。
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それだけ。
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リーネが、
一瞬だけ、
言葉を失う。
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「……ただいま」
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小さく、
返す。
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トールが、
笑う。
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「おう!」
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「ちゃんと帰ってきたぞ」
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ダンが、
小さく頷く。
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ジョーに、
視線を向ける。
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一瞬、
止まる。
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「……変わってねぇな」
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ぼそり。
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ジョーは、
何も言わない。
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だが、
わずかに、
視線だけ返す。
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それで、
終わる。
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アンが、
近づく。
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「ただいま」
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ダンが、
軽く頷く。
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「……ああ」
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短く。
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それだけ。
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トールが、
思い出したように言う。
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「そういや、ガルドな」
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ダンが、
視線を向ける。
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アンが、
口を開く。
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「ドワーフの国で会ったんだ」
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軽く。
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リーネが、
続ける。
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「……助けられたの」
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一拍。
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「あの場を、動かしたのはガルドだった」
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静かに言う。
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ダンの目が、
わずかに細くなる。
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ジョーが、
ぼそりと付け足す。
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「……あいつなりに、考えて動いてる」
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短く。
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「悪くない」
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ダンが、
小さく頷く。
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「……そうか」
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トールが、
周囲を見る。
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「隣の村だ」
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「泉スライムにやられたって」
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視線の先。
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知らない顔。
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家族連れ。
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簡易の小屋。
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布と縄。
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急ごしらえ。
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人が、
動いている。
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受け入れている。
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リーネが、
それを見る。
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前なら、
ありえない。
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この村は、
閉じていた。
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なのに。
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今は、
違う。
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ダンが、
言う。
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「こっちで引き取った」
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それだけ。
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説明は、
いらない。
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火。
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囲われている。
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石と土。
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距離。
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離れている。
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子どもが、
走る。
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止まる。
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印の前で、
立ち止まる。
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振り返る。
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大人を見る。
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うなずき。
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下がる。
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覚えている。
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教えられている。
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ジョーが、
それを見る。
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何も言わない。
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だが、
視線が動く。
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距離。
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配置。
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確かめている。
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リーネが、
ちらりと見る。
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合う。
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逸らす。
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胸が、
少しだけ、
速くなる。
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理由は、
分からない。
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トールを見る。
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まっすぐ。
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分かりやすい。
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安心する。
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だが。
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また、
ジョーを見る。
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静か。
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なのに、
気になる。
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「……なんだろ」
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小さく。
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後ろ。
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アン。
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足取りが、
わずかに遅い。
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視線が、
一瞬だけ、
落ちる。
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腹に、
触れかける。
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やめる。
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顔を上げる。
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「どうした?」
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トールが、
振り返る。
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アンが、
笑う。
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「なんでもないよ」
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軽く。
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だが、
ほんの少し、
遅い。
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ダンが、
それを見る。
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何も言わない。
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視線を外す。
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村。
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戻った場所。
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同じ、
はずの場所。
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だが。
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人が増え、
声が増え、
距離が変わる。
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そして。
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それぞれの中で、
何かが、
動いていた。




