第三章 第15話 引き際
沈黙。
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目の前。
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大きな火魔石。
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人の頭ほど。
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整然と、
並んでいる。
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数。
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多すぎる。
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トールが、
息を呑む。
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「……これ、全部かよ」
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グスタフが、
低く言う。
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「触るな」
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短く。
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「一つでも弾けりゃ終わりだ」
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ジョーが、
視線を走らせる。
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間隔。
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距離。
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密度。
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「……連鎖する」
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小さく言う。
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ディーターが、
杖を握る。
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「制御は……無理だ」
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声が、
低い。
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その時。
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小石。
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転がる。
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カツン。
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一つの火魔石に、
触れる。
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一瞬。
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沈黙。
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次の瞬間。
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ボッ!!
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炎。
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大きい。
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長い。
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熱が、
押し寄せる。
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すぐ隣。
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別の火魔石。
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熱で、
揺らぐ。
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グスタフが、
叫ぶ。
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「引け!!」
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一斉に、
下がる。
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火は、
収まる。
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だが。
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わかる。
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これは、
始まれば終わらない。
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トールが、
息を吐く。
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「……無理だろ、これ」
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グスタフが、
短く言う。
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「無理だ」
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迷いがない。
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ジョーが、
頷く。
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「戻る」
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短く言う。
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だが。
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グスタフが、
一歩出る。
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近づく。
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慎重に。
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一つ。
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火魔石を、
持ち上げる。
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布で包む。
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ゆっくりと。
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「これだけでいい」
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低く言う。
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「証拠だ」
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全員が、
頷く。
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戻る。
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来た道。
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板。
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一枚ずつ。
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慎重に。
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踏み外さない。
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やがて。
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抜ける。
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洞窟の外。
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空気が、
軽い。
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誰も、
すぐには話さない。
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理解している。
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あれは、
手に負えない。
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―――
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グスタフの工房。
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扉が、
開く。
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中へ。
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門番ドワーフ。
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数人。
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振り向く。
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グスタフが、
短く言う。
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「報告だ」
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布を、
置く。
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中身を、
見せる。
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火魔石。
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大きい。
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門番の顔が、
変わる。
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「……なんだ、これは」
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低い声。
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グスタフが、
言う。
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「採掘場だ」
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短く。
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「やられてる」
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沈黙。
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空気が、
張る。
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誰もが、
理解する。
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暴発事件は、
ただの事故じゃない。




