第三章 第10話 迫る危機
扉の外。
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熱が、
わずかに和らぐ。
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だが。
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空気は、
重いまま。
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トールが、
壁にもたれる。
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苛立ちが、
隠せない。
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「……あいつ」
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吐き捨てる。
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アンが、
腕を組む。
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「説明もしないで、信用しろは無理だね」
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リーネが、
俯く。
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「でも……」
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言葉が、
続かない。
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ジョーは、
何も言わない。
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ただ、
布を見る。
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破れた、
意匠付きの布。
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指で、
なぞる。
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裂け方。
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整いすぎている。
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「……襲われた痕じゃない」
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小さく、
呟く。
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トールが、
顔を向ける。
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「何が言いたい」
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ジョーは、
視線を上げる。
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「自分で裂いた」
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短く言う。
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アンが、
眉を寄せる。
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「なんのために?」
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間。
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ジョーが、
低く言う。
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「……あの罠がヒントってところか」
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沈黙。
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トールの表情が、
わずかに変わる。
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―――
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工房の中。
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熱。
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金属音。
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グスタフが、
腕を組む。
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ガルドを見る。
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「……掘りに行ったはずだよな」
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低く言う。
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「戻ってこないから、死んだと思ってた」
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間。
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「で、盗賊と一緒か」
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視線が、
鋭くなる。
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ガルドは、
目を逸らす。
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「……襲われた」
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短く言う。
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グスタフが、
鼻を鳴らす。
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「見りゃ分かる」
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一歩、
近づく。
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「そのまま仲間入りか?」
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ガルドの目が、
わずかに揺れる。
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「……違う」
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低く言う。
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「利用された」
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それだけ。
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グスタフが、
目を細める。
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「で、逃げてきたってわけか」
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ガルドが、
小さく頷く。
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「……先に来た」
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短く言う。
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グスタフが、
ため息を吐く。
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「面倒なもん抱え込んできやがって」
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だが。
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その目は、
わずかに柔らぐ。
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「外の連中には?」
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短く問う。
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ガルドが、
黙る。
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視線が、
落ちる。
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「……最低限でいい」
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低く言う。
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「巻き込む必要はねぇ」
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グスタフが、
鼻で笑う。
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「もう巻き込んでるだろ」
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短く言う。
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沈黙。
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金属音だけが、
響く。
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―――
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扉が、
開く。
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熱が、
流れ出る。
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ガルドが、
出てくる。
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一行を見る。
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視線が、
交わる。
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トールが、
前に出る。
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「……で?」
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低く言う。
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「何があった」
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ガルドが、
一瞬だけ迷う。
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そして、
口を開く。
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「……グスタフの依頼だ」
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短く言う。
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アンが、
眉を上げる。
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「依頼?」
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ガルドが、
続ける。
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「火魔石の採掘」
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空気が、
わずかに動く。
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リーネが、
小さく息を呑む。
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ガルドが、
続ける。
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「そこで、盗賊に襲われた」
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それだけ。
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トールが、
睨む。
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「それで?」
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ガルドは、
視線を外す。
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一瞬だけ、
リーネを見る。
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すぐに、
逸らす。
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「……後は、今は言えねぇ」
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低く言う。
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間。
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「でも、もう時間がない」
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視線が、
わずかに揺れる。
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「採掘場の……いや」
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小さく、
言い直す。
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「すべてのドワーフ工房」
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低く、
はっきりと。
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「この国の緊急事態なんだ」
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空気が、
止まる。
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誰も、
すぐには言葉を出せない。
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トールが、
歯を食いしばる。
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アンも、
黙る。
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リーネが、
ガルドを見る。
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迷いと、
信じたい気持ち。
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混ざっている。
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ジョーは、
何も言わない。
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ただ、
見ている。
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断片は、
揃い始めている。
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だが、
まだ足りない。
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それでも。
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動かなければならない。
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空気が、
変わる。
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静かに。
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確かに。




