第三章 第8話 工房
門を、
くぐる。
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熱が、
増す。
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空気が、
重い。
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金属を打つ音。
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遠くで、
響く。
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煙。
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あちこちから、
立ち上っている。
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だが。
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どれも、
どこか不安定。
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アンが、
顔をしかめる。
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「普通の煙じゃないね」
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リーネが、
小さく頷く。
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「混ざってます……何か」
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ジョーは、
何も言わない。
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ただ、
見る。
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街の奥。
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嫌な予感だけが、
残る。
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門番が、
前を歩きながら言う。
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「グスタフなら、人間とも商売してる」
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少し間。
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「……グスタフもアレだが」
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鼻を鳴らす。
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「腕は確かだし、情に厚い」
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ちらりと、
隊長を見る。
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「お前さんの噂は聞いたことがあるぜ」
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キャラバン隊長が、
小さく笑う。
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「ああ、ロンだ」
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短く答える。
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「俺を知ってたのか」
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ロンが、
軽く肩をすくめる。
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一行は、
歩き続ける。
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石の道。
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削られた壁。
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所々に、
焼け跡。
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新しいものもある。
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トールが、
低く言う。
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「最近のか……」
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門番は、
何も答えない。
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やがて。
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止まる。
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一つの工房の前。
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他よりも、
少し整っている。
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だが、
同じように煤が残る。
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門番が、
顎で示す。
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「ここだ」
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短く言う。
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ロンが、
前に出る。
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扉を、
叩く。
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重い音。
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しばらくして。
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内側から、
足音。
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扉が、
開く。
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現れたのは、
男。
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ドワーフより、
わずかに背が高い。
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だが、
体は分厚い。
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髭はある。
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だが短い。
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目は、
鋭い。
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一瞬。
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ロンと、
目が合う。
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わずかな間。
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男が、
鼻を鳴らす。
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「……相変わらずか」
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低く言う。
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ロンが、
肩をすくめる。
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「お互い様だ」
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短く返す。
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アンが、
小さく呟く。
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「知り合いかい?」
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男が、
答える。
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「……まあな」
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視線を、
外さない。
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「グスタフだ」
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ぶっきらぼうに言う。
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グスタフが、
一行を見る。
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「……連れてきたのか」
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短く言う。
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ロンは、
何も答えない。
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グスタフが、
背を向ける。
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「入れ」
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一行が、
中へ入る。
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熱。
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さらに強い。
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鉄。
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工具。
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焦げた匂い。
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そして。
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奥。
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気配。
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ジョーが、
足を止める。
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視線。
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影。
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一人。
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壁もたれて、
立っている。
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静かに。
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こちらを、
見ている。
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トールが、
息を呑む。
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アンの表情が、
固まる。
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リーネの手が、
わずかに震える。
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ジョーが、
低く言う。
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「……」
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言葉は、
出ない。
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だが、
全員が理解する。
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そこにいるのは。
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ガルドだった。




