第三章 第2話 道中
道は、
続いていた。
---
村を出て、
五日。
---
まだ、
半分にも届かない。
---
空は高く、
風は乾いている。
---
キャラバンの列が、
進む。
---
馬。
---
荷車。
---
人。
---
足取りは、
少しずつ重くなる。
---
アンが、
肩を回す。
---
「思ったより長いねぇ」
---
トールが、
前を見たまま言う。
---
「まだ半分も来てねぇぞ」
---
アンが、
顔をしかめる。
---
「それは聞きたくなかった」
---
小さな笑い。
---
すぐに、
消える。
---
前方。
---
道が、
狭くなる。
---
土が減り、
岩が増える。
---
山道に、
入っている。
---
その時。
---
馬が、
止まる。
---
前列が、
詰まる。
---
「止まれ!」
---
隊長の声。
---
列が、
止まる。
---
ジョーが、
前を見る。
---
道の先。
---
崩れている。
---
岩。
---
大きい。
---
道を、
塞いでいる。
---
トールが、
舌打ちする。
---
「またかよ」
---
隊長が、
短く言う。
---
「崩す」
---
それだけだった。
---
ジョーが、
前に出る。
---
岩に、
手を当てる。
---
動かない。
---
重い。
---
トールが、
並ぶ。
---
「押すぞ」
---
アンも、
来る。
---
「はいよ」
---
三人で、
力を込める。
---
軋む。
---
少し、
動く。
---
もう一度。
---
押す。
---
転がる。
---
道が、
開く。
---
リーネは、
後ろにいる。
---
だが。
---
視線は、
別の場所。
---
風。
---
鼻を、
わずかに動かす。
---
何かを、
探るように。
---
やがて。
---
道が、
通れるようになる。
---
列が、
動く。
---
だが。
---
リーネは、
すぐには歩かない。
---
立ち止まる。
---
ジョーが、
振り向く。
---
「どうした」
---
リーネが、
小さく言う。
---
「……匂いが違います」
---
アンが、
首を傾げる。
---
「山の匂いでしょ?」
---
リーネが、
首を振る。
---
「違います」
---
「混ざってます」
---
トールが、
鼻を鳴らす。
---
「何も感じねぇぞ」
---
リーネが、
少しだけ考える。
---
言葉を、
選ぶように。
---
「焦げた匂い……に似てる」
---
「でも、違う」
---
ジョーが、
黙る。
---
風が、
吹く。
---
ほんのわずか。
---
一瞬だけ。
---
鼻を刺す。
---
すぐに消える。
---
気のせいかと思うほど。
---
アンが、
顔をしかめる。
---
「……今、ちょっと変だったね」
---
トールが、
眉をひそめる。
---
「俺も感じた」
---
短く言う。
---
リーネが、
小さく頷く。
---
「一定じゃないんです」
---
「風に乗って……断続的に来る」
---
ジョーが、
前を見る。
---
何も見えない。
---
煙も。
---
火も。
---
ただ、
山道が続いている。
---
静かだ。
---
だが。
---
どこか、
おかしい。
---
ジョーが、
一歩進む。
---
「行くぞ」
---
短く言う。
---
隊長が、
頷く。
---
列が、
動く。
---
ゆっくりと。
---
山の奥へ。
---
まだ見えない、
何かに向かって。
---
違和感だけを、
残したまま。
---
一行は、
進んでいった。




