第三章 第1話 契約の先
村。
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昼。
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ダンの家。
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戸が、
叩かれる。
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短く。
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二度。
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ダンが、
顔を上げる。
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「入れ」
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低く言う。
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戸が、
開く。
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商人が、
立っていた。
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キャラバンの隊長。
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一歩、
中に入る。
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周囲を、
見る。
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「約束、覚えてるな?」
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静かに言う。
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ダンが、
頷く。
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「鎖の値引きの件だな」
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短く言う。
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商人が、
息を吐く。
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「頼みがある」
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間。
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「ドワーフの国だ」
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ダンの目が、
わずかに動く。
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「仕入れが止まってる」
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「連絡も来ない」
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「ただ事じゃない」
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静かになる。
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ダンが、
立つ。
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「場所を変える」
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それだけ言う。
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外へ。
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村の広場。
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ジョーと、
トールがいる。
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アンもいる。
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リーネは、
まだ来ていない。
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ダンが、
全員を見る。
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「依頼だ」
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短く言う。
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商人が、
前に出る。
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「ドワーフの国からの仕入れが止まった」
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「原因を調べて」
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「できるなら、解決してほしい」
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空気が、
変わる。
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ジョーと、
トールが、
視線を交わす。
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その時。
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アンが、
口を開く。
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「アタシも行くよ」
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あっさりと。
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ダンが、
眉を寄せる。
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「自警団はどうする」
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アンは、
肩をすくめる。
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「もう話つけてある」
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「引き継ぎも済んでる」
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それだけだった。
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ダンが、
一瞬止まる。
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そして。
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小さく頷く。
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「……なら、いい」
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その時。
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足音。
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リーネが、
現れる。
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まっすぐに、
ダンを見る。
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「私も行きます」
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迷いがない。
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ダンの顔が、
変わる。
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「だめだ」
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即答だった。
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「危険すぎる」
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リーネは、
引かない。
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「必要です」
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「調合も、分析も」
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「私がやれます」
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一歩踏み出す。
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「その代わり」
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「無茶はしません」
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「前には出ません」
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間。
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「だから、行かせてください」
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空気が、
張る。
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その時。
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アンが、
口を挟む。
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「大丈夫だよ」
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軽く。
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だが、
強く。
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「アタシも着いてるから」
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リーネの隣に立つ。
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「変な虫も寄らせないって!」
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笑う。
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だが、
目は本気だった。
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ダンが、
二人を見る。
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長く。
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黙る。
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やがて。
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息を吐く。
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「……条件だ」
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低く言う。
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「無茶はするな」
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「前には出るな」
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間。
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「必ず戻れ」
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それだけだった。
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リーネが、
小さく頷く。
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ダンが、
目を逸らす。
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「……戻ってこい」
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低く。
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「必ずだ」
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リーネに向けて。
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間。
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商人が、
続ける。
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「距離は、馬で半月ほどだ」
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「徒歩なら二月はかかる」
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ダンが、
補足する。
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「後半は山道だ」
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それだけだった。
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静かになる。
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ジョーが、
息を吐く。
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「それが条件なら」
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一拍。
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「やるしかないな」
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低く言う。
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トールが、
笑う。
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「付き合うさ」
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肩を回す。
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アンが、
笑う。
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「面白そうじゃん」
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軽く言う。
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リーネは、
何も言わない。
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ただ、
頷く。
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ダンが、
四人を見る。
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順に。
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確かめるように。
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そして。
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頷く。
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「準備は三日」
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短く言う。
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「それ以上は待たせない」
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商人が、
息を吐く。
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「助かる」
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本音だった。
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ダンが、
背を向ける。
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「装備を整えろ」
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それだけだった。
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風が、
吹く。
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村の外へ。
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続く道。
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まだ、
見えない。
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だが。
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確かに、
繋がっている。
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四人の行き先は、
決まった。




