第ニ章 最終話 宴と酒と男と女
村。
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夜。
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灯りが、
揺れる。
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笑い声。
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酒の匂い。
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宴は、
続いていた。
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村長が、
立つ。
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杯を掲げる。
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「本日をもって」
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低く、
響く声。
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「この者を、クベルハイムの一員として迎える」
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視線が、
集まる。
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ジョーへ。
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ざわめき。
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そして。
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拍手。
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誰も、
異論はない。
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それだけで、
十分だった。
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酒が、
進む。
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笑いが、
増える。
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アンが、
笑っている。
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大きな声で。
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肉を、
頬張りながら。
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トールが、
巻き込まれている。
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リーネは――
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もういない。
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開始から、
三十分。
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顔を赤くして、
帰宅。
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そのまま、
眠っている。
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場面が、
変わる。
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宴の外。
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夜風。
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冷たい。
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静かだ。
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騒ぎが、
遠くなる。
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ジョーが、
立つ。
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息を吐く。
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肩の力が、
抜ける。
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その時。
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足音。
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後ろから。
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「お疲れさん」
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軽い声。
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アンだった。
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隣に、
立つ。
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距離が、
近い。
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「凄いね、あんた」
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笑う。
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「村長に認めさせるなんてさ」
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少しだけ、
顔が寄る。
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吐息が、
触れる。
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「普通じゃないよ?」
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声が、
低くなる。
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ジョーは、
目を逸らす。
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アンが、
くすっと笑う。
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「リーネには悪いけどさ」
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間。
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空気が、
変わる。
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さらに、
顔が寄る。
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ジョーの口元に、
アンの唇が近づく。
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「……私も惚れちゃったよ」
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柔らかく、
囁く。
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触れる。
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離れない。
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そのまま。
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アンが、
押す。
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強く。
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迷いなく。
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ジョーの背中が、
木に当たる。
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距離が、
詰まる。
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ジョーの口元に、
アンの唇が近づく。
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アンが、
小さく笑う。
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「……わかるよね?」
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影が、
重なる。
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月が、
雲に隠れる。
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その声は、
宴の笑い声に、
かき消される。
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しばらくして。
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静寂。
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風が、
戻る。
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アンが、
軽く息を吐く。
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少しだけ、
乱れている。
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横目で、
ジョーを見る。
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「……勢いだったけどさ」
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小さく言う。
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「アタシで良かったのかい?」
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ジョーは、
少しだけ考える。
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そして。
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静かに、
答える。
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「誰に知られても」
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「誰も知らなくても」
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「この事は、俺たちが知ってればいい」
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それだけだった。
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アンが、
目を細める。
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一瞬、
笑う。
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そして、
肩をすくめる。
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「敵わないなぁ……」
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小さく呟く。
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「リーネには、絶対に言えないや」
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くるりと、
背を向ける。
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そのまま、
歩き出す。
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宴の灯りへ。
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ジョーは、
動かない。
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ただ、
夜を見ている。
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遠くで、
笑い声。
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風が、
抜ける。
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それぞれの思惑が、
月夜に照らされていた。




