第ニ章 第13話 クベルハイム
森。
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泉の周囲。
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炎は、
弱まっていた。
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焦げた匂いが、
まだ残る。
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だが。
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もう、
暴れてはいない。
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静かだ。
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水面が、
揺れる。
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小さく。
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穏やかに。
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ジョーが、
立つ。
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濡れたまま。
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息は、
もう整っている。
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手には、
神像。
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泥に、
まみれている。
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だが。
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壊れてはいない。
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ダンが、
近づく。
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無言で、
それを見る。
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しばらく、
何も言わない。
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ただ、
手を伸ばす。
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神像に、
触れる。
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静かに。
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確かめるように。
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トールが、
息を吐く。
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「……終わったのか」
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小さく言う。
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誰も、
すぐには答えない。
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風が、
抜ける。
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水面が、
揺れる。
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その時。
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神像が、
淡く光る。
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全体が。
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静かに。
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優しく。
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揺れるように。
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誰も、
言葉にしない。
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だが。
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全員が、
見ていた。
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ダンが、
ゆっくりと口を開く。
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「……祀り直す」
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短く言う。
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それだけだった。
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ジョーが、
頷く。
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トールも、
黙って頷く。
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後方。
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アンが、
肩を回す。
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「腹減ったなぁ」
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軽く言う。
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空気が、
少しだけ緩む。
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リーネが、
それを聞く。
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小さく、
息を吐く。
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視線は、
神像。
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そして、
ジョーへ。
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すぐに、
逸らす。
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何も言わない。
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村人たちが、
集まる。
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泉を、
見る。
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そして、
神像を見る。
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誰も、
騒がない。
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ただ、
見ている。
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その中で。
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村長が、
一歩前に出る。
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神像を、
見つめる。
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そして。
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ぽつりと、
呟く。
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「クベルハイムが……戻った」
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誰も、
否定しない。
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風が、
抜ける。
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水面が、
揺れる。
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静かに。
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穏やかに。
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そこには、
守られるべきものがあった。




