第二章 第7話 閑話 アンとリーネ
夕方。
---
集会所の外。
---
作業の音が、
遠くに聞こえる。
---
木を切る音。
---
人の声。
---
その中で。
---
少しだけ離れた場所。
---
ジョーが、
一人で立っていた。
---
手には、
布。
---
重い。
---
だが、
安定している。
---
視線を落とす。
---
確かめる。
---
「……使える」
---
小さく呟く。
---
背後から、
足音。
---
軽い。
---
迷いがない。
---
アンが、
隣に立つ。
---
距離が、
近い。
---
「ふーん……」
---
横から覗き込む。
---
「リーネが気になるのも、わかるわぁ」
---
軽く言う。
---
ジョーは、
視線を動かさない。
---
「そうか」
---
短く返す。
---
アンが、
口角を上げる。
---
一歩、
近づく。
---
「つまんないねぇ」
---
指先で、
軽く胸元をはだける。
---
わずかに、
肌が覗く。
---
さらに、
距離を詰める。
---
顔を、
寄せる。
---
「もっとさ」
---
低く、
囁く。
---
「見たいでしょ?」
---
ジョーが、
わずかに視線を上げる。
---
アンを見る。
---
少しだけ、
間。
---
「見たいな」
---
それだけ言う。
---
アンが、
笑う。
---
「正直じゃん」
---
さらに、
顔が寄る。
---
ジョーの口元に、
アンの唇が近づく。
---
その時。
---
足音。
---
止まる。
---
リーネが、
立っていた。
---
無言。
---
ただ、
見ている。
---
視線が、
止まる。
---
アンと、
ジョーの距離。
---
近い。
---
近すぎる。
---
胸の奥が、
わずかに動く。
---
理由は、
わからない。
---
だが。
---
目を逸らせない。
---
アンが、
視線を向ける。
---
一瞬。
---
間。
---
そして。
---
「……残念!」
---
あっけらかんと、
笑う。
---
一歩、
離れる。
---
胸元を、
戻す。
---
「んじゃ〜ね〜」
---
軽く手を振る。
---
そのまま、
去っていく。
---
風が、
抜ける。
---
静かになる。
---
リーネは、
その場に立っている。
---
動かない。
---
少しだけ、
息が浅い。
---
目を閉じる。
---
そして、
小さく息を吐く。
---
開く。
---
視線を、
ジョーに向ける。
---
何も言わない。
---
何も変えない。
---
だが。
---
もう、
同じではなかった。
---
アンに、
助けられたのだと、
思った。
---
同時に。
---
その助けが無ければ、
気づけなかったのだとも。
---
複雑な感謝だった。
---
けれど。
---
この気持ちは、
絶対に知られたくない。
---
ジョーには、
なおさら。
---
ジョーは、
布を見る。
---
何も言わない。
---
リーネが、
近づく。
---
少しだけ、
距離を保つ。
---
「……それ」
---
短く言う。
---
ジョーが、
頷く。
---
「内側が重い」
---
「外は弾く」
---
淡々と答える。
---
リーネが、
布に触れる。
---
指先で、
確かめる。
---
「……うん」
---
小さく頷く。
---
それだけだった。
---
少しの沈黙。
---
ジョーが、
口を開く。
---
「使う」
---
短く言う。
---
リーネが、
顔を上げる。
---
ジョーは、
視線を外す。
---
「準備がいる」
---
それだけだった。
---
リーネが、
小さく頷く。
---
「手伝う」
---
短く言う。
---
ジョーは、
一瞬だけ見る。
---
そして、
頷く。
---
夜。
---
月が、
昇る。
---
静かな光が、
落ちる。
---
それぞれの思惑が、
月夜に照らされていた。




