第二章 第4話 持ち帰ったもの
村に戻った。
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逃げて正解だった。
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命拾いした。
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数時間しか離れてないのに、
空気が軽い。
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森とは、
違う。
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二人は、
無言で歩く。
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トールは、
自警団の方へ。
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ジョーは、
そのまま進む。
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分かれる。
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集会所。
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村長と、
ダンがいた。
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ジョーが入る。
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視線が、
向く。
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「……戻ったか」
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村長が言う。
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ジョーは、
頷く。
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「泉があった」
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短く言う。
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ダンの目が、
わずかに動く。
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「……何を見た」
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ジョーは、
少しだけ考える。
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「多い」
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それだけだった。
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その頃。
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自警団。
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トールが、
話している。
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身振りが、
大きい。
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「数が違うんだよ!」
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「切っても、切っても!」
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苛立ちが混じる。
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やがて。
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再び、
集会所。
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全員が揃う。
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トールも、
戻っていた。
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息は、
落ち着いている。
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だが、
顔は険しい。
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村長が、
全員を見る。
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「話せ」
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短く言う。
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トールが、
口を開く。
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「切れなくなる」
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「途中からだ」
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剣を見せる。
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「ベタつく」
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ダンが、
眉を寄せる。
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「付いたか」
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トールが、
頷く。
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「体液だと思う」
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「刃に残る」
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ジョーが、
口を開く。
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「なぜだ」
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短く。
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ダンが、
少しだけ笑う。
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「色付きのスライムは、
もっとネバネバするが」
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「透明に近い青だったんだろ?」
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トールが、
顔をしかめる。
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「ああ」
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ダンが、
頷く。
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「スライムの中でも、
一番弱いタイプだ」
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トールが、
眉をひそめる。
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「なんだそりゃ」
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ジョーは、
袋に手を入れる。
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中から、
半透明の塊を取り出す。
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形は崩れている。
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だが、
完全には消えていない。
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机の上に置く。
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全員の視線が、
そこに集まる。
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ジョーは、
それを見ながら言う。
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「倒したやつが残ってた」
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「泉に戻れなくなったやつだ……と、思う」
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その時。
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一人の声が、
軽く割り込む。
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「おっ!戦利品だね!」
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自警団の中でも、
一際目立つ女が、
身を乗り出す。
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「要らないなら貰うよ!」
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場の空気が、
わずかに動く。
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トールが、
ちらりと見る。
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「アン……お前な」
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アンは、
気にしない。
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視線は、
机の上の塊に釘付けだ。
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トールが、
口を開く。
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「水魔法でもぶつけて、
破裂させられないか」
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ダンが、
首を振る。
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「この村じゃ、
数人しか使えない」
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トールが、
眉をひそめる。
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「少ねぇな……」
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村長が、
静かに言う。
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「適性だ」
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「無い者は使えん」
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沈黙。
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ダンが、
小さく息を吐く。
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「この村で水魔法が使える数人はな……火が理由だ」
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トールが、
顔を上げる。
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「こないだみたいな、か?」
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ダンは、
答えない。
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代わりに、
村長を見る。
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村長は、
何も言わない。
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ただ、
一度だけ頷く。
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それだけだった。
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空気が、
少しだけ重くなる。
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ダンが、
続ける。
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「だから水だ」
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「火を止めるために覚えた」
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トールが、
わずかに息を呑む。
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ジョーが、
口を開く。
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「使えないやつは?」
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ダンが、
少しだけ笑う。
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「スクロールがある」
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「一回きりだがな」
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トールが、
顔を上げる。
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「巻物のやつか」
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ダンが、
頷く。
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「広げりゃ発動する」
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「誰でもな」
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沈黙。
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村長が、
口を開く。
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「火だ」
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全員の視線が、
集まる。
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「昔からだ」
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「スライムは火で処理する」
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トールが、
顔を上げる。
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「……じゃあ何で」
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ジョーが、
遮る。
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「水が多い」
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短く言う。
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ダンが、
小さく笑う。
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「そういうことだな」
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村長が、
頷く。
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「泉か」
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静かに言う。
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トールが、
拳を握る。
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「どうする」
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村長が、
ジョーを見る。
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試すように。
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ジョーは、
少しだけ考える。
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「少し、考えさせてくれ……」
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それだけだった。




