第一章 第8話 聴聞
集会所は、静かだった。
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外よりも、
音がない。
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人がいるのに、
気配だけが重い。
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視線が集まる。
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ジョーに。
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中央に、座らされていた。
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囲まれている。
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逃げ場はない。
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正面に、
村長。
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左右に、
数人の男たち。
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入口付近に、
リーネとトール。
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壁にもたれかかるように、
ガルド。
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そして、
その隣に、
年のいった男。
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腕を組み、
黙って状況を見ている。
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誰も、
口を開かない。
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沈黙が、
場を支配していた。
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やがて、
村長が口を開く。
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「……名は」
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短い。
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だが、
逃がさない問いだった。
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ジョーは、
わずかに間を置いた。
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「……ジョー」
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それだけを言う。
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「どこから来た」
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続けて問う。
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ジョーは、
答えない。
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答えられない。
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沈黙が落ちる。
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空気が、
一段重くなる。
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「……分からねぇ、か」
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村長が、小さく呟く。
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「目的は」
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次の問い。
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「……ない」
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短い答え。
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ざわり、と空気が揺れる。
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「ふざけてるのか」
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誰かが言う。
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「目的もなく来るやつがいるか」
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もっともな言葉だった。
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ジョーは、
何も言わない。
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その時。
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「……あの」
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リーネだった。
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「その人……本当に、助けてくれたの」
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「火も……ちゃんと消してくれた」
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「私じゃ……できなかった」
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空気が、
わずかに動く。
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遅れて、トールが口を開く。
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「本当だ」
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「煙の中から現れて……リーネを助けたんだ」
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視線が、
再びジョーに向く。
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完全な敵ではない。
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だが、
信用もしていない。
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ガルドが、
低く言う。
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「……だからって、信用できるかよ」
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村長は、
目を閉じた。
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考える。
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やがて、
目を開く。
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「……しばらく置く」
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場が動く。
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「ただし」
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視線が刺さる。
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「勝手なことはするな」
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「外には出るな」
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一拍。
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「トール」
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「わかった」
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巨躯が目立つ、
水を持ってきた男が返事をした。
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「それと」
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「ダン」
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「分かってる」
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腕を組んだ年長の男が、低く答えた。
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それで決まった。
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二人での監視。
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「ガルド、ちょっとこい」
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呼ばれた男が、
ゆっくりと歩み寄る。
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警戒を崩さないまま、
村長の側へ。
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低く、
耳打ちされた。
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「……お前はトールとダンを監視しろ」
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ガルドは、
一瞬だけ耳を疑った。
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なぜ、
自分がジョーの監視ではないのか。
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だが、
すぐに表情を戻す。
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何も言わない。
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ただ、
短く頷いた。
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「……今日はここまでだ」
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村長が言う。
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人が、
動き出す。
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ざわめきが戻る。
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だが、
視線はまだ残っていた。
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ジョーに向けられたまま。
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受け入れられたわけではない。
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ここは、
まだ外だった。




