第一章 第7話 境界
村の入口は、静まり返っていた。
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だが、
空気は張り詰めている。
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立っている、数人の男たち。
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手には農具。
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か……あるいは、それに近いもの。
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鋤。
鍬。
棒。
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どれも、
武器として振るえる形だった。
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その中心に、
一人の男が立っている。
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年配。
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周囲より一歩前。
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自然と、そこに立っている。
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「……そいつか」
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低い声だった。
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ガルドが、一歩前に出る。
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「ああ……そうだぜ、村長」
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それだけで、
状況は伝わっていた。
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視線が、一斉にジョーへ向く。
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値踏み。
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警戒。
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排除の意思。
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誰も、何も言わない。
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沈黙が、重く落ちる。
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その中で、
ジョーは動かない。
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ただ、
立っている。
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逃げない。
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構えない。
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視線も、
逸らさない。
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その様子が、
逆に警戒を強めていた。
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「どこから来た」
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村長が問う。
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短く、
無駄のない言葉。
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ジョーは、
わずかに間を置いた。
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「俺は……ジョー……」
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それ以上は、言わない。
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沈黙が、続く。
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空気が、
さらに張る。
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その時。
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沈黙を破ったのは、リーネだった。
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「あの……」
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一歩、前に出る。
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小さな動きだった。
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だが、
止める者はいない。
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「その人……」
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言葉を選ぶ。
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迷いが見える。
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それでも、
顔を上げた。
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「助けてくれたの」
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その一言で、
空気が揺れる。
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遅れて、トールも早口でこう言った。
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「煙の中から現れて……リーネを助けたんだ」
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村の男たちの表情が、変わる。
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完全な敵ではない。
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だが、
信用もしていない。
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揺れている。
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その中で、
ガルドだけは動かない。
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腕を組み、
ジョーを睨んでいる。
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「……それだけだ」
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それ以上は知らねぇ、とでも言いたげだった。
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村長は、しばらく黙っていた。
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ジョーを見る。
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全体を見る。
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そして、
ゆっくりと口を開く。
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「……中に入れる」
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周囲がざわつく。
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「ただし」
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一拍、置く。
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「勝手な真似はするな」
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ジョーは、
何も言わない。
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ただ、
小さく頷いた。
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それで十分だった。
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道が、わずかに開く。
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境界が、
ひとつ越えられる。
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だが、
受け入れられたわけではない。
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まだ、
外の者だった。




