第六章 第4話 備えあれば……
ダンの家。
……もとい。
併設した自警団待機所に、
人が集まっている。
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クベルハイム。
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そして、
隣村モンテールの面々。
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合併を控えた、
二つの村の自警団。
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机を挟み、
向かい合う。
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外では、
冷たい風が鳴っていた。
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初冬。
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村人達は、
まだ冬支度を終えていない。
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薪。
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炭。
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保存食。
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火を使う仕事も、
増えていた。
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部屋の中央。
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ダンが、
炭を手に取り、
机に線を引く。
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「……ここが泉で」
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短く。
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さらに、
線を書き込む。
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「こっちがクベルハイム」
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反対側。
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「森を挟んで、モンテール」
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炭の線。
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簡素な地図。
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その時、
装備の整った男が身を乗り出した。
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腰の剣。
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革鎧。
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年は、
ジョー達とそう変わらない。
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だが。
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胸を張る姿には、
強い自負が見えた。
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「モンテール自警団長、ハインだ」
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短く。
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「モンテール側には、泉からの用水路を着工中だ」
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少し、
誇るように。
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炭の線を、
指でなぞる。
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「次はクベルハイム側だ」
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「合併するなら、水を使いやすくしないと」
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数人が、
頷く。
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実際、
間違ってはいない。
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冬は、
水汲みも重労働になる。
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火を使うなら、
水も必要だ。
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ハインは、
さらに続けた。
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「泉の待機所も建て始めてる」
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一拍。
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「水汲み桶の保管場所にも使える」
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「見回りの拠点にもなる」
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だが。
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ダンが、
低く口を開いた。
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「大きさは?」
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静かに。
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「村人も増える」
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「自警団も増える」
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その時。
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モンテール側の男が、
口を開いた。
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「徒歩じゃ限界になるな」
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低い声。
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「範囲も広くなるしな」
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部屋の空気が、
少し変わる。
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それは、
全員が感じていた事だった。
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領地は広がった。
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人口も増えた。
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自警団の人数も、
増えてはいる。
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だが。
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村人総数に対する、
一人頭の負担は増えている。
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夜警。
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見回り。
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火の確認。
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森。
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泉。
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全部を、
徒歩だけで回るには限界がある。
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ダンが、
短く言った。
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「待機所を大きくし、厩も併設だな……」
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一拍。
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「巡回を、手間取らない方向へ……」
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そこで、
ガルドが口を開いた。
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「馬は増やそう」
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短く。
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全員の視線が向く。
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ガルドは、
続けた。
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「森や山で捕まえる」
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一拍。
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「人に慣らす」
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短い言葉。
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だが、
現実的だった。
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その横。
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獣人の女性が、
静かに頷く。
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森。
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獣。
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その扱いは、
彼女達の方が慣れている。
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ダンが、
腕を組む。
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「出来るのか」
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ガルドは、
即答した。
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「任せろ」
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短く。
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その言葉に、
無駄は無かった。
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沈黙。
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モンテール側の男が、
小さく息を吐く。
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「建て直しか……」
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少し考え、
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「いや」
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「増築、だな」
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ダンが、
静かに頷いた。
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「小さいと何かと面倒だからな」
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短く。
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「動線も変わる」
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「水桶置き場も増やす」
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「仮眠場所も必要だ」
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一拍。
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「中途半端に建てるなよ」
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静かな声。
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だが、
重い。
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一方。
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ハインが、
小さく鼻を鳴らす。
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「まぁ、見回りはちゃんとやってる」
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軽く。
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「さっきも小火を見つけて消したばかりだ」
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誇るように。
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「やるべき事は、ちゃんとやってる」
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一拍。
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「村人は炭を作る」
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「冬を越える準備もしてる」
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「俺達は、それを見て回る」
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モンテール側の数人が、
頷いた。
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ジョーは、
小さく視線を落とす。
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火を、
知らない訳じゃない。
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ただ。
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向き合い方が違う。
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そして。
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火は、
そんなのお構いなしだ。




