第六章 第3話 小さな異変
泉のほとり。
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静寂。
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ジョーは、
動かない。
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そのままの姿勢で、
立っている。
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「……ジョー?」
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リーネが、
小さく呼ぶ。
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返事はない。
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一歩、
近づく。
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「ねぇ」
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少し強く。
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それでも、
動かない。
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風が、
吹く。
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水面が、
揺れる。
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だが。
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ジョーだけが、
止まっている。
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リーネは、
眉をひそめる。
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「……さっきの」
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一拍。
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「なんて言ってたの?」
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小さく、
呟くように。
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「かしこ……何とか……」
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言葉を探す。
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その時。
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「……ああ」
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ジョーが、
動いた。
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まるで、
何もなかったように。
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「どうした?」
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振り返る。
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リーネが、
一瞬言葉を失う。
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「どうした、じゃないよ」
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少し強く。
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「途中までは動いてたのに」
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一拍。
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「そこから、ずっと止まってた」
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短く。
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「……え?」
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ジョーが、
眉をひそめる。
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リーネが、
続ける。
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「“かしこ……何とか……”までは普通だった」
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一拍。
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「そのあと」
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言葉を切る。
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「全然、動かなかった」
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一拍。
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「……5分くらい?」
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沈黙。
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ジョーは、
少しだけ視線を落とす。
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「……そうか」
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小さく。
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一拍。
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リーネが、
改めて聞く。
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「で、さっきのって何?」
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まっすぐに。
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ジョーが、
軽く息を吐く。
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「ああ」
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短く。
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「俺の国の祈り方だ」
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一拍。
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「神を敬って」
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「報告する」
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それだけ。
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リーネが、
少しだけ頷く。
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「……そうなんだ」
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だが。
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視線は、
まだジョーに向いている。
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完全には、
納得していない。
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ジョーは、
それ以上は何も言わない。
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ただ、
泉を一度だけ見た。
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何かを確かめるように。




