28話:敵の奇襲部隊を見つける
敵輸送部隊が帝国側へ引き返すのを確認した私たちは排莢した薬莢を回収し、一度森を引き返すことにした。
理由は補給部隊が到着しなかった帝国側の動きを確認するため。
「後方はかなり混乱しているようですね」
今回はあえて王国軍側へ戻るための位置ではなく、帝国軍の後ろに広がる森に潜伏して様子を確認している。
木の上に登り帝国軍部隊の動きを確認してきたルーナが落ち葉を避けた地面に状況を書いてくれる。
「つまり王国軍と対面している部隊はそのままにして、何個かの部隊を後方で再編している?」
「おそらくは、輸送部隊の護衛強化、あるいは私たちの捜索、または王国軍への奇襲ではないかと」
「護衛強化と私たちの捜索はわかるけれど、なんで王国側への奇襲と判断したの?」
「理由は武装です。今まで輸送隊の護衛に銃を持っているものはいませんでした。ほとんどが槍か剣です。一部弓兵もいましたが」
「今、急遽動き出している帝国側が作っている部隊は銃を装備している?」
「その通りです。1人1丁かならず持っています。荷物も多そうです」
ルーナ曰く、皆兵士が背負いバッグを装備しているとのこと。
そして、隊長と思われる将校もあえて羽飾りなどの派手な装備をしていないらしい。
「そう考えると奇襲部隊と考えた方が良いと思います」
「流石に今ここから狙うわけにはいかないわよね?」
「ミリア様、木登りできますか?」
「ごめんなさい」
運動音痴の私には木登りなんてできません。
庭を駆け回っていてもたまにコケる私が木登りなんてできるわけがないのです。
いつも木登りするルーナを見て「いいなぁ」と思っていたのです悔しい。
それはともかく、ここから敵部隊を狙うことは不可能。
今から王国側に戻れば奇襲について進言できるかと言われれば言ったところですぐに対処できるような時間は得られないかもしれない。
少なくとも2人で移動する限りは無理ね。
私そんなに早く林の中を移動できない。
「ルーナ、あなただけなら敵部隊より先に王国軍に着けるかしら?」
「もちろんですミリア様」
「今の感じだと敵奇襲部隊は夜か、翌朝王国軍側面に攻撃を仕掛ける可能性が高いわよね?であればルーナはその旨を伝えに行って、私は敵の侵攻路上で迎え撃ちます」
これには王国兵の命がかかっている。
しかも直接的に。
であれば躊躇わない。
あいつらを足止めしないといけない。
「…わかりました。ですが途中まで一緒に行きましょう。ミリア様だけでは潜伏場所の選定に不安があります」
「ありがとうルーナ。そこについては頼りにしているわ」
すでに王国軍と帝国軍の間にあるこの林の地形をルーナはある程度把握している。
人数がいる部隊が安全に通行できる地点を予測して、私の潜伏場所を選んだ後、最速で王国側へ状況を説明することで奇襲を頓挫させる。
まずはこれで行こう。
「ですが、こうなるとこの林は互いの兵士で激闘になる可能性がありますね…」
「ただの通り道にはできなくなるってことね…」
そうなるとこの林を抜けての敵後方撹乱は難しくなるかもしれないわね…




