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第6章07話

第6章07話


 ブリュネちゃんにお祖母さんが作った湖の設計図を見せて貰うと、開拓村の予定と少し似ている。


「湧き水の数はこちらが多いけど、山の水は開拓村の方だな」


「湖に見に行きましょう」


 ブリュネちゃんが連れて行ってくれた湖は、とても立派な物だった。


「人工には見えないな」


「そうなんです。だから手入れもしなくなって、管理費もくれなくなりました」


 最低のやり方だ。管理しない人工湖なんて。


 俺と依能さんが空から湖を見ていると、ブリュネちゃんが来ない。戻ってみる。


「ブリュネちゃんは飛べないの?」


「ここいらで飛べる人なんて居ませんよ」


 ポケットを探ったら飛行数珠が有ったのでブリュネちゃんにあげた。


「付けて飛んでる空想をしてごらん」


 ブリュネちゃんが飛び上がった。結構上手だ。


『聞こえる?』


『はい。念話は出来ます』


『お祖母さんの湖を空から見るのは初めてだろう。ゆっくり見なよ』


 ブリュネちゃんはあちこち飛び回っているうちに、飛行が上手になって来た。


『ブリュネちゃんのお祖母さんの設計図が役立ちそうですね』


 依能さんの言う通り、とても似ている。


 ブリュネちゃんが降りて来た。


「嬉しかったです。自分が飛べるなんて」


「ブリュネちゃん。我々の湖予定地を見てくれない?」


「水郷境や水郷城に私なんかが入れます?」


「その許可出すのは哲司さんなのよ」


 ブリュネちゃんが驚いているうちに開拓村に飛んでいた。


「ここなんだよ」


 ブリュネちゃんを連れて依能さんが空に行った。


「御屋形様、あの娘は?」


 タマ三郎さんだった。


「人工湖の技術者」


「流石に手回しが良いですね」


「開拓民の言う事を聞いていると仕事が進まないし」


「スミマセン。さっき怒っておきました」


 知世さんと善姫さんに助けを求めると、すぐに来てくれた。


「この木を下に移動するの手伝ってくれない?」


「「はーい」」


 手伝いが来たので仕事が進み出した。依能さんが説明したり意見を聞いているうちに、木がどんどん減っている。


「哲司さん、話しが大分見えて来ました」


 依能さんが上機嫌だ。


「私は湧き水と山からの流入場所を少し掘ってから湖の深さを考えないと駄目だと思います。水が溜まると土が移動しますから」


 なる程なと思う。


「旦那様。運び終わりました。切り株と石は土化ですか?」


「そうです」


「奥様方ですか?」


「知世さんと善姫さん。こちらはブリュネちゃん。サンリン町から来て貰っているんだよ」


 女同士の挨拶が始まった。奥様方はノリが良いので話しが弾む。


『依能さん、ブリュネちゃんは使える?』


『絶対に欲しいです!』


「休み時間にしょうよ」


「「お寿司!」」


「良いけどブリュネちゃん食べれる?」


「大丈夫です。お祖母ちゃんが作って食べさせてくれました。好きですがサンリン町では食べられないので」


 さっそく寿司屋に行くと、水郷城を見て驚いている。


「華やかな所ですね」


「早く入って食べましょうよ」


 善姫さんに押されて寿司屋に入った。


「らっしゃい」


 一眼のオヤジにまた驚いている。


「トロとビール」


 奥様方の説明をブリュネちゃんが真面目に聞いている。

 冷やしたビールが気に入ったようだ。


「はいトロね」


 食べたことが無いようで、恐る恐る食べ始めた。


「美味しい!」


 後は奥様方と次々に食べてゆく。餌で釣る作戦の第一歩は成功している。

 何故か宣姫さんが現れて食べ始めた。


「水神様のお嬢様ですか?」


「お嬢様は止めましょう。宣姫で良いです」


 一眼姫とピョコリ瓢箪も現れて賑やかになっている。


「話中に悪いけどブリュネちゃん、水郷境の職員やらない? とりあえず月に15金貨で契約金は200金貨くらい。住居は水郷城に提供するから」


「本当に良いのですか? 願ってもない事です」


「話が決まったから乾杯!」


「乾杯は良いけど、水神様を呼ばないと後が面倒だよ」


「呼んで来ます!」


 俺に言われて宣姫さんが飛んで行った。


 水神様がすぐに現れた。事情を説明してブリュネちゃんを紹介する。


「良く来てくれたな。歓迎するぞ」


 早く寿司に集中したいのか大盤振る舞いを始めた。飛翔と飛行など開拓に必要そうな妖術を全部くれて妖力まで上げてしまった。


「どうせ哲司殿に要求されるからな」


 トロとウニを連発しながら話している。ブリュネちゃんは小さくなっていた。


「本物の水神様と話しているなんて」


「依能さんは本物の豊饒の精霊なんだよ」


 宣姫さんが教えるとブリュネちゃんが固まっていた。


 その日ブリュネちゃんは我が家に泊まり2階の風呂で皆で騒いでいた。

 依能さんと同じく暫く我が家に住むようだ。



『そのブレスレットをしていても駄目か』


『だって……』


 水美に知世さんから助けて貰って水の里で休息を取る。


『知世も善姫も哲司しか吸収する相手が居ないからな。明日から工事で忙しくなる。寝ろ』



 次の日は朝ご飯を食べて全員で現場に行った。


「依能さんとブリュネちゃんは湖の工事計画ね。俺と知世さんと善姫さんは指示された高さに湖底造り」


「哲司さん、やはりもう少し林を切り出して貰えます? ブリュネちゃんと話していたら今の内に広げておいた方が良いみたい」


「良いよ。どこまでか指示して」


「ブリュネちゃんの妖術磨きも兼ねて一緒にやりますよ。早く終わるし」


 流石に5人でやると早かった。2時間くらいでブリュネちゃんの要求する所まで切り出して、空から再確認している。

 その間に俺と水美が移転で木を下の草むらに運んでしまった。


「掘った土は運ぶ所が有る? 無いなら無くしちゃうよ。開拓民に見せると何でも欲しがるから」


「そうだな。本当に見せると何でも欲しがるからな。消して構わないです」


 依能さんの許可を貰って土を消滅させながら掘って行った。最初は浅めに段々で深さを造っていく。

 色々リクエストを聞いて大きなコロシアムみたいな物が出来上がった。


「ここまで手伝って貰えたら、残りは私とブリュネちゃんで調整しながら出来ます」


「凄いですね。強い妖術師が居ると年単位掛かる仕事がすぐ終わってしまう」


「何でも言って。手伝うから。ブリュネちゃんには依能さんと相談して色々やって貰いたいからね」


 ブリュネちゃんが頷き依能さんがニコニコしている。助手が出来て嬉しいのだろう。


「すき焼きに行こうか?」


 ブリュネちゃんを除く全員が万歳して決まった。


 すき焼き屋さんに入る前も街並みを眺めている。


「凄い街ですね。田舎者は驚くばかりです」


「今に慣れますよ」


 皆で肉鍋屋さんに入ると。一見人族の綺麗な女将さんが迎えてくれた。


「これはこれは御屋形様。毎度御贔屓していただいて」


「新人のブリュネちゃんだよ。宜しく」


 お互いに挨拶していた。


「すき焼きとビール。どんどん持って来て」


「はい」


 女将さんが奥に行った。


「ここは人族なんですね」


「ろくろ首と言う噂も有るよ」


 依能さんも黙っていれば良いのに。


 ブリュネちゃんもすき焼きにハマり、この日はすき焼きとビールで終わってしまった。




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