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第6章08話

第6章08話


「笹美城から連絡が有って、こちらの要求は全て呑むと言って来たぞ」


 朝、城から呼び出しが来たので行くと、中々良い知らせにだった。


「キチンと詫びて、人間至上主義を止め一神教の排斥をするのですか?」


「今、謁見の間で善秀が水神様に土下座して、水郷境と水郷城の独立。笹美の国の人間至上主義の取り止めと、妖怪の保護。

 一神教の排斥を無条件で受け入れた所だ」


 既に来ているんだ。


「良かったです。これ以上渇水を続けて疫病が出ると面倒でした。洪水が起きない程度に雨を連続で降らせて、水が行き渡ったくらいで通常の8割くらいの降水量にして下さい」


「8割か?」


「全てが行われてから、キチンと元に戻しましょうよ」


「それもそうだな」


 水神様と天狗さんがヒソヒソしている。


「善秀が哲司殿に会いたいと待っているのだが」


「会いませんよ。俺は水郷城の幹部だから我慢しているだけで、善秀が善姫さんにした事は水に流せません」


「……そうだな」


「追い返して下さい」


「わかった」


 正直言って、死んでも会いたくなかった。


「俺がそう伝えておくよ」


 天狗さんがそう言って隣の部屋に消えて行った。


「早い解決で良かったですね」


「本当だ。これ以上遅れると哲司殿の言う通り、疫病が出かねんからな」


「どの位の雨にするのです?」


「今既に大雨を降らせている。1日大雨で後は10日くらい適度な雨を降らせ続ける」


「奴等も水神様の力を思い知らされて大人しくとなるでしょう」


 天狗さんが帰って来た。


「善秀がショボンとして帰って行ったぞ」


「お手数を掛けました」


「これで当分は面倒な問題は起きんな」


 話が丸く収まったようなので、城から失礼すると善姫さんと知世さんが待っていた。


「善秀が旦那様に迷惑を掛けているようなので……」


「笹美城の全面降伏で終わったよ。当分平和だと思うよ」


 善姫さんと知世さんの表情が明るくなった。


「ところで二人供これ付けてごらんよ」


 ブリュネちゃんから買ったブレスレットを渡した。知世さんと善姫さんはブレスレットを腕にはめている。


「とても綺麗な腕輪ですね」


 知世さんが嬉しそうだ。


「私は早速、身体が楽になって来たみたいです」


 善姫さんが目を丸くしている。


「私もジワジワ効いて来ました!」


 知世さんにも効くようだ。

 ブリュネちゃんのお祖母ちゃんが作ったブレスレットで妖力の安定になる可能性が有る事を教えておいた。


「旦那様も付けているのですか?」


「付けているよ。俺はとても役に立っている」


 見せてあげると、俺の妖力妖術封じ除けを羨ましそうに見ている。


「売っているのかな? 道具屋に行ってみようか」


 道具屋に行くと3本だけ置いてあった。


「余り需要の無い腕輪ですので」


 余り売れないようだ。


「いくら?」


「一本、2500金貨なんですよ。需要が無い上に高いので売れないですね」


「3本全部貰うよ」


 支払いは知世さんと善姫さんに銀貨袋を渡して任せる。


『少しは減るかな? まだまだ有るのだが』


 水美が嬉しそうにしている


『本当に減らないよね』


『哲司が使っているのは、まだ最初の袋だからな』


 お金を払い終えたようだ。俺が一本取って二人に配った。


「ブリュネちゃんの所に行って、まとめて貰おう」


 依能さんとブリュネちゃんは丁度、屋敷で休息中だった。


「ブリュネちゃん、また一本にしてくれる?」


「はい。喜んで」


 ブリュネちゃんが道具を持って来て、簡単にまとめている。本当に器用な娘だ。


「やはり隣国が凶暴だと知世さんと善姫さんまで戦う用意が必要なのですか」


「用意では無く戦ってました」


 善姫さんが言うと知世さんも胸を張っている。二人で槍と薙刀を見せている。


「羨ましい! 今度教えて下さい。私も槍を買って来ますから」


「槍なら有るからあげるよ」


 皮袋を漁っていると剣部分が少し長めの槍を見付けた。妖力も通せる槍だ。


「これなら刺せるし斬れると思うよ」


「槍を持って妖力を通してごらん」


 知世さんが妖力の通し方を教えている。


「これで刺せば良いのですね」


 ブリュネちゃん俺の方を見ている。


「ブレスレットが終わったら攻撃方法を教えるよ」


 ブリュネちゃんが凄い勢いで作業に戻った。


「哲司さん、私も教えて下さいよ」


 依能さんが羨ましそうにしている。


「精霊が槍を使うの?」


「宣姫さんだって神様なのに薙刀を使うじゃないですか」


 なる程、言われるとそうだなと思う。探して見るとブリュネちゃんと同じような槍があった。


「じゃ、これ依能さん用」


 凄く嬉しそうに眺めている。


『先日の戦いの武器か』


『集めて貰ってそのままにしていた』


『哲司が放置している武器は水の里にも2袋くらい有るぞ』


『今度片付けるから』


 疑りの眼差しで見られている。


「庭で練習用の的を作っているから」


 裏庭に適当な的を作っていると、全員で降りて来た。

 依能さんとブリュネちゃんが張り切っている。


「基本的な事は遠くから攻撃して、すぐ逃げるだからね」


 俺も槍を出して移動で刺して移動で戻って見せる。


「詳しくは宣姫さんが依能さん、ブリュネちゃんは知世さんに習って」


 我が奥様達が丁寧に教え始めた。

 俺は的の側で的の再生係だ。1時間くらいでコツを掴んで上手くなって来た。


「開拓の村に行って妖獣狼で練習しますか」


 依能さんとブリュネちゃんはやる気満々だ。


 開拓の村に全員で移動した。妖獣狼は林に入るとゴロゴロ居るので、余り探す必要も無い。


「じゃ、基本を忘れ無いでね。危ない時は、すぐに上空に逃げるか移動で離れてね」


「「はーい」」


 二人は透明になって妖獣狼相手に練習を始めた。矢張り動く相手だと最初は的を外していたが、どんどん上手くなって来た。


 3時間くらいで群れを2つ全滅させてしまった。ブリュネちゃんの妖力や槍術がどんどん上がっている。


「大分上手くなったから、お昼にしようよ」


 全員で小料理屋に行った。


「御屋形様、何時も御贔屓にして下さって有り難う御座います」


 ノッペラボウの女将さんが挨拶をして、それを見てブリュネちゃんが慌てている。


「今日は天ぷらと肉ジャガがお勧めです」


「とりあえず、それとビールをどんどん持って来て」


「皆さんがお祖母ちゃんのブレスレットを付ける理由が分かりました。妖力を結構使いますね」


「慣れるとそんなに要らないけどね」


「私、石を採って来て自分のを作らないと……」


「あの石は今でも採れるの?」


「人工湖の中でなら……」


「じゃ食べ終わったら採りに行こう」


 ブリュネちゃんが何か言いかけた時、肉ジャガとビールが出て来た。


「「「「「いただきまーす」」」」」


 全員でガツガツと食べ始めた。


「これ、美味しいです!」


 ブリュネちゃんは肉ジャガが気に入ったようだ。


「ヤヤさんのも美味しいですよ」


 善姫さんが教えている。


「そうなんですか! 楽しみです」


 天ぷらと焼きおにぎりが出て来て、全員で黙々と食べ始めた。

 揚げ出し豆腐とナスの煮浸しも食べて全員で満足したところで移動することになった。


「知世さんは屋敷に居たら?」


「……私も行ってみます」


 ヤマコの里に知世さんが来るとは思わなかった。


 全員で人工湖に飛んだ。


「きれいな所ですね!」


 知世さんが驚いている。


「何処に有るの」


「……湖底なんです」


「どこら辺」


「ここから真っすぐに10メートルくらいです」


 水美と飛んで行って潜ってみる。水美に貰って以来、初めてこの能力を使った。

 水美とブレスレットに付いている石を探すが中々見つからない。


 30分くらい探していると水美が言った。


『深い緑色だったな? これではないか?』


『似ているね。持って行って聞いてみるよ』


 掘り出してみると子供の頭くらいの大きさが有った。


『デカい!』


『重いから哲司では持てんな。任せろ』


 飛翔で皆の所に戻って、地面に石を置いた。


「こんなに大きいのですか!」


「駄目だった?」


「凄く高品質です! 皆さんと同じのが作れますよ」


 この日は屋敷に戻って妖獣狼を売りにも行かずに、ブリュネちゃんは自分のと依能さんのブレスレットを作り始めた。


『依能さんに必要有るの』


『知らん』


 だんだん人間ぽくなって来ている豊饒の精霊さんだった。




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