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幕間 漆黒の魔公爵

 すべてが黒一色の部屋だった。

 磨き上げられた大理石の床が黒なら、壁や調度品、寝台の薄い紗の天蓋まで漆黒。


 この部屋の主も例外ではない。


 着ているのは艶やかな絹の黒いシャツ一枚。

 革張りのソファで寛いでいるが、足を組んで座っているため、際どいところまで白い肌が晒されている。


「今宵の異界渡りの儀はいかがでしたか?」

 まだ幼さの残る少年が傍に控えていた。

 主のグラスが空になると、すかさず酒を注ぐ。

「ふふ。懐かしいことを思い出したぞ」

 グラスを高くかざす。


 ラクシュネというこの酒は晒す光の性質により無色無味から色も味も変化する。


 くるりとグラスを回すと、とろりとした液体に変わった。

 月光を浴びたラクシュネは琥珀色の甘い舌触りの酒になる。


 それは、月光王と崇められた王の双眸を思わせる、美しい琥珀色。


「名前、か……」




われの名前を呼んでくれ、アリア』




 最後まで名前で呼ぶことのなかった、私の主。


 愛しい陛下。




 ルツィーアは一気にラクシュネを飲み干した。


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