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メイドはメイドでも

自分が使う方言を表現するのは難しいですね。

「おはようございます。アカネ様」


「お、おはよーございます……」


 目を開けたらマッチョがいた。

 しかもフリフリのレースがついたメイド服姿で。


 その厳つい体格には不似合いの高く澄んだ声をしている。

わたくし、アカネ様のお世話をさせて頂きます、ノヴァリスと申します」

「花巻茜です。よろしく……」


 び、びっくりした。

『おまえはもう死んでいる』が決めゼリフの主人公そっくりの顔がリアルでいるよ、マジで。

 ……その前に女?男?

 声の高さから察するに女なのだろうが、この体格は……。


 朝一番に目に飛び込んできた衝撃に、茜の心臓はバクバクとして止まらない。


「これから朝食になさいますか?それとも、湯浴みなさいますか?」

「……湯浴み?お風呂のことか。入りたいです……」

「かしこまりました。それでは湯殿に案内いたしますわ」

「はーい……」

 ゴリゴリのマッチョのわりに仕草が洗練されているメイドである。

「お召し物はのちほどお持ちいたしますわ。……アカネ様の世界では皆、そういった服を着るのが普通なんですの?」

「制服のこと?う~んと、みんなっていうか、わたしと同じ年頃の子たちはだいたいこんな着てるよ」

 昨日は色々な事がありすぎて、制服のまま寝てしまい、しわくちゃになっている。

 ついでに髪もボサボサである。


「アカネ様!」


 いきなり両手を掴まれた。

 いかんせん、茜とノヴァリスには身長差がありすぎた。

 捕まった獲物よろしく茜は宙にぶら下がる。


「少しの間でいいんです!このお召し物をお貸しくださいませんか!?」

 顔の彫りがあまりにも深いためか、影に隠れて両目が定かではないが、ノヴァリスは爛々と光る目で茜を見つめているだろう。

「私、可愛いものや綺麗なものが大好きですの!こんな素敵な洋服初めて見ましたわ!この上着の刺繍は職人の手によるものですか?それにこのスカート!」

「はわわっ」

「こんな斬新なデザインを求めていましたの!」

「きょえー!貸すから!制服貸すから、スカートめくらないでえっ」

 一部丈のスパッツを履いてはいるが、人様に見せるようなものじゃない。

「あら!これは下着ですの?不思議な布地」

「ひぃー!!」

「ノヴァリス。それ以上はいかんよ」

 丸太のような腕を掴むのは蝋のように白い手。

「ノドール公爵様に切り刻まれるっちゃ。ウチはあんたの肉を掃除したくないけんね」

「いやだ、私ったら。初めて見るお洋服につい興奮しちゃったわ」

 てへへっと可愛らしく(マッチョだが)笑って、ノヴァリスは手を放す。

「ノヴァリスが大変失礼したっちゃ。ウチもアカネ様のメイドで、エレミアです。よろしくお願いします」

 冷たく整った美貌のメイドはエプロンを摘んでお辞儀をする。

 エレミアはどこもかしこも白かった。髪も肌も、瞳までもが白く、どこに視線があるのか分からない。

「ノヴァリスさんとエレミアさんも魔族なの?」

「さようでございますわ。私は巨人族でございます」

「ウチは雪女とよ」


 可愛いもの好きのマッチョに、方言メイド……。

 

「それはともかく、早くお支度せんと。本当にノドール公爵様に叱られてしまうけんね」

「こちらへどうぞ」


 案内されたのは脱衣所らしい。

 通されたのはいいが、なぜかノヴァリスもエレミアも一緒に入ってくる。それぞれの手にはスポンジとタオルが。


「ま、まさか……」


「さあ、アカネ様。お背中お流しいたしますわ」


 ……やっぱり!


「い、いや、いいよ。自分でできるから!」

「遠慮することないけん。隅から隅まで洗っちゃるけん」

「冷たっ」

 エレミアは後ろから茜を羽交い絞めにする。


 にっこり。

 ノヴァリスは凶悪な笑みを浮かべた。本人としては、優しく微笑んだつもりだが。


「いやあーーー!!!」




 他人に体を洗われる、プラス専属メイドという異世界トリップのテンプレを経験した茜だった。


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