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『億り人だった私、老後資金が底をつく前に異世界を救います』 〜今日も散財して召喚しまくってます〜  作者: talina
第九章

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第95話 最後の代償

 光の中心。


 世界の“理”が、収束していく。


 だが——完全ではない。


 揺らぎが、残っている。


 このままでは、再び崩れる。


 ひかりは、理解していた。


(……足りない)


 何かが、決定的に足りない。


 つむぎとリリアスの力。


 それだけでは、“世界を安定させる最後の一押し”には届かない。


 その時、再びひかりの頭に光が落ちた。


 視界の奥に、無数の数値が浮かび上がる。


 資産。


 口座。


 暗号鍵。


 仮想通貨。

 

 株式。


 すべて——自分のもの。


 かつて、積み上げた“力”。


「……ああ……そういうことか……」


 ひかりは、小さく笑った。


 かつて、自分は“億り人”だった。


 金で、未来を掴むと信じていた。


 だが、今は違う。


「……使うんだね」


 誰にともなく、呟く。


 それは、“最後の召喚”。


 この世界と、元の世界を繋ぐ——最大の媒介。


 代償は、ただ一つ。


 “すべて”。


 ひよりが気づく。


「……ひかりさん?」


 ひかりは、振り返る。


 そして、笑った。


「みんなに出会えて良かった」


「でも——これで、終わるから」


 ひよりの顔が歪む。


「……何するつもり……?」


 ひかりは、静かに答えた。


「全部、使う」


「私の……全部」


 その言葉に、ひよりの目から涙が溢れた。


「そんなの……ダメだよ……!」


 だが、ひかりは首を振る。


「ううん」


「これでいいの」


 そして——


「やっと分かったから」


 一歩、前へ出る。


「お金より、大切なもの」


 黒崎が、静かに呟いた。


「……見つけたんだな」


 ひかりは、頷く。


「はい」


「仲間は——家族です」


 その言葉は、迷いがなかった。


 黒崎の口元が、わずかに緩む。


「そうか」


「いい顔になったな、円城寺」



 ひかりは、両手を広げる。


 意識を集中する。


 全資産の解放。


 現実世界との接続。


 召喚式、最大出力。


「——開放」


———


 ピロリン。


【talina銀行アプリ】


 前回残高

 2,747,900円


 今回使用額

 2,747,900円


 現在残高

 0円


〈使用内訳〉

・全資産の解放

 2,747,900円


———


 瞬間——


 光が、爆発した。


 金色の粒子が、空間を満たす。


 それは、ただの光ではない。


 “価値”そのもの。


 人が積み上げてきた、文明の結晶。


 それが——世界に流れ込む。


『——外部エネルギー確認』


『——再構築補助リソースとして接続』


 世界が、応答する。


 足りなかったピースが、埋まっていく。


 つむぎとリリアスの光が——安定する。


 空間が、再び裂け、一人の老人が現れた。


 長い白髪。


 深い皺。


 だが、その瞳は鋭い。


「……遅くなったな」


 低く、響く声。


 ひかりが、目を見開く。


「……グラン……?」


 若き分霊体のグランが、近づく。


「……オリジナルか」


 至高位大魔導師グラン。


 行方不明だった“本体”。


 ついに、現れた。



 若きグランが、笑う。


「遅いよ」


 老グランは、鼻で笑う。


「貴様が勝手に動きすぎたのだ」


 視線が交錯する。


 同一存在。


 だが、思想は違う。


「選ばせるんじゃなかったのか?」


 若きグランが問う。


 老グランは、静かに答えた。


「選んだだろう」


 その視線は——ひかりへ。


「結果が、すべてだ」



 その隣に——


 リリアスの光が現れる。


「ようやく来たか、グラン」


 老グランが、肩をすくめる。


「相変わらず、無茶をするな」


「貴様もな」


 魔王と、大魔導師。


 かつての仲間。深い信頼。


 今——


 再び並び立つ。


「やるぞ」


「ああ」


 二人の魔力が、重なる。


 世界の骨格が、強化されていく。



 さらに——


 蒼い光の中。


 つむぎが、手を伸ばす。


 その先に——


 剣聖ヴァルド。


 二人の間の見えない“繋がり”。


 血。遺伝子。


 時間。


 受け継がれた意志。


「……お願い……」


 つむぎの声。


 ヴァルドは、強く頷く。


「任せてください」


 その力が、流れ込む。


 “人の意志”が、世界に刻まれる。



 すべてが、繋がる。


 光が、収束する。


『——再構築、完了』


『——世界、安定』


 静寂。


 そして——


 風が、吹いた。


 優しい風。


 壊れていた世界が——


 息を吹き返す。



 ひよりが、震える声で言う。


「……終わった……の……?」


 つむぎが、ゆっくりと現れる。


 リリアスも、その隣に。


 二人とも——


 “消えていなかった”。


 ひかりの目から、涙が溢れる。


「……よかった……」


 その時、遠くで——声が上がる。


「……あれ……?」


 振り向く。


 そこには——


 人だった魔物たち。


 だが——


 その目に、光が戻っている。


「……ここは……?」


「……俺……何して……」


 人の意識が戻っている。


 ひよりが、涙を流す。


「……戻った……」


 だが、姿は、魔物のまま。


 完全には、戻っていない。


 ひかりが、呟く。


「……まだ、終わりじゃないよね」


 つむぎが、頷く。


「……うん」


 優しく、微笑む。


「これから……戻そう」


「ちゃんと——全部」


 ひかりは、空を見上げる。


 もう、資産はない。


 何も、残っていない。


 だが——


 隣には、仲間がいる。


 家族がいる。


 それだけで——十分だった。


 黒崎が、静かに言う。


「……行くのか」


 ひかりは、笑う。


「はい」


「探しに行きます」


 つむぎが、頷く。


 ひよりも、笑う。


 ヴァルドも、剣を担ぐ。


 ぽにゃが、元気に吠える。


「ワン!」



 世界は、救われた。


 だが——


 まだ、終わりではない。


 これは、終わりではなく——


 始まり。


 人に戻るための旅が、今——始まる。

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