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『億り人だった私、老後資金が底をつく前に異世界を救います』 〜今日も散財して召喚しまくってます〜  作者: talina
第八章

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第90話 終局の凍結

 ルーメリア。


 空が、軋んでいた。


 歪んだ光。


 裂けた空間。


 その中心で——


 戦いは、まだ続いていた。



 リリアスと、ヴァルド。


 そして——ぽにゃ。


 三つの力が、神谷とΛ—Ωへと対峙している。


 だが——


 神谷が、舌打ちする。


「……終わらんか……この茶番は」


 苛立ちを隠さず、手を掲げる。


Λ—Ω(ラムダ・オメガ)


 命令。


「敵を殲滅しろ」


『………』


 ——応答が、ない。


 神谷の眉が、わずかに動く。


「……どうした?」


 もう一度。


「Λ—Ω、攻撃しろ」


 沈黙。


 光は、ただ——揺れているだけ。


 まるで、意志を失ったように。


 神谷の顔色が変わる。


「……おい」


 視線が走る。


 つむぎがいたはずの場所。


 ——いない。


「……消えた?」


 あり得ない。


 あの統合状態から——消えるなど。


 理解が、追いつかない。



 リリアスが、静かに口を開いた。


「……もう終わりじゃ」


 神谷が振り向く。


「何を——」


 リリアスの瞳は、穏やかだった。


「その機械は、もはや“ただの箱”じゃ」


「役目を終えた、ガラクタだ」


 神谷の顔が、歪む。


「ふざけるな!!」


「Λ—Ω!!応答しろ!!」


 叫び。


 だが——


 何も、返らない。


『——』


 無音。


 完全な沈黙。


 神谷の喉が、乾く。


「……あり得ない……」


 ヴァルドが、低く問う。


「魔王……これは……」


 リリアスは、わずかに笑った。


「終わったのじゃ」


「すべてな」


 そして。


 静かに続ける。


「つむぎの“選択”が——この世界を救った」


 その言葉に、ヴァルドの目が揺れる。


「……つむぎ殿……」


 リリアスが横目で見る。


「お主の先祖は——大したものだな」


 ヴァルドが、固まる。


「……は?」


「つむぎ殿が……?」


 だが、その言葉は深く刺さる。


 血の繋がり。


 意思の継承。


 戦わなかった少女が未来を繋いだ。



 リリアスが、ゆっくりと神谷へ視線を戻す。


「さて」


 その声音が、冷える。


「イグナート」


 神谷の肩が、微かに震える。


「どうする?」


 神谷は、しばし沈黙し——


 やがて、笑った。


 乾いた笑い。


「……はは……」


「なるほどな……」


 ゆっくりと、後退する。


「いいだろう」


 目は、まだ死んでいない。


「この機体は一人乗りだった」


「つまり……()()()()がこの世界のどこかにあるはずだ」


「それを探す」


 狂気の執念。


「まだ終わっていない」


 踵を返す。


 その瞬間——


「させぬよ」


 リリアスの声。


 ——パチン。


 指が鳴る。


 次の瞬間。


「ぐはっ……!!」


 神谷の体が、凍りついた。


 氷。


 否。


 “封印”。


 透明な結晶が、一瞬で全身を包み込む。


 その姿は、かつてのリリアスと、同じ。


 完全封印。


 時間すら、閉じ込める檻。


「イグナート様!!」


 セレナが駆け寄る。


 氷の中の神谷は、動かない。


 意識はある。


 だが、何もできない。


 完全な拘束。


 セレナは、震える手で触れる。


 頬を、押し当てる。


「……そんな……」


 リリアスと同じく、その姿は裸だった。


 生まれたままの姿。


 リリアスが、淡々と説明する。


「その中では死なぬ」


「だが保存されるのは、純粋な本人のDNA情報のみ」


「衣服などの外部情報は邪魔になるのでな」


「故に——産まれたままの姿となる」


 冷酷な事実。


 永遠の檻。


 セレナが、叫ぶ。


「お願い!!封印を解いて!!」


 涙が零れる。


 だが、リリアスは、首を横に振った。


「殺しはせぬ」


 静かな声。


「この者の背後関係も知る必要があるのでな」


 セリナに一歩、近づく。


「この者の処遇は——お主に委ねる」


 セレナが、息を呑む。


「……私に……?」


 リリアスは頷く。


「条件がある」


 沈黙。


「魔物を元の在り方へ戻す方法」


「それを——ひかりたちに伝えよ」


 セレナの瞳が揺れる。


 葛藤。


 だが、氷の中の神谷を見る。


 そして——


 目を閉じた。


「……分かったわ」


 小さく、だが、確かな声。


「教える」


 その時、空間が、揺れた。


 転移の光。


 白い輝きが弾ける。


 現れたのは——


 ひかり。


 ひより。


 そして——


 つむぎ。


 リリアスが、静かに目を細める。


「……レグルトは飛ばされたのだな……だが、良く帰ってきた」


 その声には、わずかな安堵があった。


 世界は、まだ——終わっていない。


 だが。


 確かに、一つの戦いは終わった。


 そして——


 次の“再生”が、始まろうとしていた。

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