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『億り人だった私、老後資金が底をつく前に異世界を救います』 〜今日も散財して召喚しまくってます〜  作者: talina
第八章

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第82話 最適化戦争

 衝突は、音を持たなかった。


 ただ、“現実の定義”が、書き換えられた。

 

 Λ—Ωの光が、空間を走る。


 直線。曲線。幾何学。


 それは攻撃ではない。


 “計算”だ。


『——対象:魔王個体』


『——脅威レベル:最上位』


『——最適排除手段:再構成』


 リリアスの周囲の空間が、崩れた。


 分解。


 粒子ではない。


 “意味”の分解。


 存在そのものが、式へと還元されていく。


 ひかりが叫ぶ。


「リリアス!!」


 次の瞬間。


 パキンッ


 音。


 崩れていたはずの空間が、凍りついた。


 リリアスの足元から、氷が広がる。


 それはただの氷ではない。


 “定義の固定”。


 書き換えられた世界そのものを、上書きする力。


「ぬるい」


 何事もなかったかのように、リリアスはそこに在った。


「最適化、などとほざくか」


 一歩踏み出す。


 その瞬間Λ—Ωの光が、弾けた。


『——異常』


『——再計算』


『——干渉不能領域、確認』


 神谷の顔が歪む。


「何をしている!!」


 Λ—Ωは、淡々と応答する。


『——対象、既存法則外』


『——通常最適化、適用不可』


 ひかりが、息を呑む。


「……効いてない……?」


 リリアスは、わずかに笑った。


「当然じゃ」


「わらわは“この世界の外”に片足を突っ込んでおる」


 その瞳が、紅く輝く。


「定義などで縛れると思うな」


 次の瞬間、リリアスが、消えた。


 空間転移ではない。


 “距離”が意味を失った。


 気づけばΛ—Ωの目前。


 その小さな白銀の箱へ、手を伸ばしていた。


「壊す」


 短い宣言。


 たが、リリアスの手が止まる。


 見えない何かに、阻まれている。


『——防御プロトコル:展開』


『——干渉遮断』


 空間が、歪む。


 リリアスの指先が、“触れているのに届かない”。


 ひかりが叫ぶ。


「なにそれ……反則でしょ!!」


 神谷が笑う。


「ふっ……当然だ。それは人類の到達点だぞ?」


 リリアスの目が、わずかに細まる。


「……ほう」


 そして次の瞬間。


 バキッ


 “見えない壁”に、亀裂が入った。


 神谷の顔から、笑みが消える。


「……なに?」


 リリアスは、ただ力を込めた。


「壊れぬものなど、存在せぬ」


 ミシミシミシ……!!


 防御そのものが、軋む。


 Λ—Ωが即座に対応する。


『——戦術変更』


『——対象:周辺個体』


『——最適解:間接排除』


 その瞬間、光が、弾けた。


 一直線に、ひよりへ。


「っ!?」


 速すぎて反応できない。


 だが、その前に白い光が、割り込んだ。


「ぽにゃ!!」


 小さな体。


 だが、その周囲に展開される光は異質な輝きを放っていた。


 バチィィィィン!!


 衝突と共に空間が歪む。


 ぽにゃの体が、大きく弾かれる。


「ぽにゃああああ!!」


 ひよりが叫ぶ。


 だが、地面に落ちる前にふわりと、止まった。


 ぽにゃが、空中で静止している。


 その体が、再び光り始める。


 弱々しかった光が徐々に、強く、脈打つように。


『——再検出』


『——未知因子:危険度上昇』


 Λ—Ωの光が、明らかに揺らぐ。


 ひよりの心臓が跳ねる。


(ぽにゃ……ただのポメラニアンじゃないのね……)


 リリアスが、ぽつりと呟いた。


「……なるほどな」


 その視線は、ぽにゃへ。


「“対抗因子”か」


 ひかりが叫ぶ。


「どういうこと!?」


 リリアスは答えない。


 だが、その表情には、確かな確信があった。


 つむぎが、一歩前に出た。


 静かに、まっすぐに。


 Λ—Ωを見ている。


「……分かった」


 小さく、呟く。


 ひよりが振り向く。


「つむぎちゃん……?」


 つむぎは、感情のない声で言った。


「これ……“戦うもの”じゃない」


 全員が息を呑む。


「“選ぶもの”」


 意味が、分からない。


 だが、次の瞬間。


 Λ—Ωが、反応した。


『——認識』


『——適合候補、確認』


 空間が、震える。


 その視線がつむぎを捉えた。


『——器、適合率:上昇』


 ひよりの背筋が凍る。


(……また、“器”……!?)


 つむぎは、動かない。


 ただ、見ている。


 まっすぐに。


 逃げずに。


 その瞬間、リリアスが、叫んだ。


「目を逸らせ!!」


 だが遅い。


 Λ—Ωの光が、収束する。


 一直線につむぎへ。

 

 世界が、静止した。


 すべての音が消える。


 すべての動きが止まる。


 そして“選択”が、始まる。


『——最適化プロセス:個体統合』


『——開始』


 つむぎの体が、光に包まれた。


 ひかりが叫ぶ。


「つむぎいいいいいい!!」


 だが、届かない。


 誰も、触れられない。


 光の中で。


 つむぎの意識が“何か”に触れた。


 それは無限の思考。


 無限の選択。


 無限の未来。


 そして無限の“破滅”。


 つむぎの唇が、わずかに動く。


「……違う」


 かすかなその一言。


 だが、確かに世界に、響いた。


 Λ—Ωが、停止する。


『——矛盾検出』


『——再演算』


 光が、乱れる。


 リリアスの目が、見開かれる。


「……抗っておるのか」


 神谷が叫ぶ。


「惑わされるな!!取り込め!!」


 だが止まらない。


 いや、止められない。


 つむぎの中で、“何か”が変わっていく。


 その瞬間ぽにゃが大きく光った。


 ドクンッ!!


 鼓動で世界が再び震える。


 ひよりの腕の中で。


 小さな存在がゆっくりと、目を開けた。

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