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『億り人だった私、老後資金が底をつく前に異世界を救います』 〜今日も散財して召喚しまくってます〜  作者: talina
第四章

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第37話 やり直しの森

 森は、沈黙していた。


 風はない。

 だが葉は揺れている。


 銀髪のエルフは、ひかりたちを静かに見ていた。


 視線が、EVトラックへと流れる。


「……過去の人か」


 小さく呟くその一言を、ひよりは聞き逃さなかった。


「え?今、なんて――」


 エルフは答えない。


 代わりに、ゆっくりとつむぎへ視線を移す。


「血が騒いでおるな」


 ひかりが一歩前へ出る。


「どういう意味?」


 エルフは答えず、つむぎの額へ手を伸ばした。


 白い指先が、そっと触れる。


 森が、ぴたりと静まる。


 つむぎの瞳が、大きく開かれた。


「……むっ」


 エルフの瞳がわずかに細まる。


「なるほど……」


 しばしの沈黙。


 やがて、静かに告げる。


「残念だが、ここは通す訳にはいかん」


「は?」


 ひかりが詰め寄る。


「私たちは戦わないって決めた!さっきも音楽で魔物を退けたでしょ!」


「その者を通す訳にはいかん」


 エルフは、つむぎを見る。


「え……?」


 つむぎが、怯えたようにひかりを見る。


「この子は、誰よりも戦いを嫌ってる!」


 ひかりの声が森に響く。


 エルフは静かに言う。


「嫌うことと、関わりを持たぬことは違う」


 空気が、重くなる。


「その血には、争いの(たね)がある」


「……血?」


「遠い未来。争いを選んだ者がおる。その系譜だ」


 つむぎが震える。


「……わたし?」


「帰るが良い」


 エルフが言う。


「森は、争いの芽を通さぬ」


 ひかりは一歩も引かない。


「私たちは、この世界を守りたいの」


 声が震える。


「そのためにフロストリアへ行く」


「お願い。通して」


 エルフが目を閉じ、長い沈黙があった。


 森がざわめく。


「……ならば試そう」


 瞼が力強く開く。


 森が歪み、平衡感覚が失われる。


 そして、木々の間から黒い影が現れる。


 牙を剥く魔物たち。


 だが、先ほどとは違う。


 明らかな殺意。


「剣を抜けば、即座に森は拒絶する」


 エルフの声。


「魔法も同じだ。だが、戦わなくとも森は確実にそなた達を排除する」


 ひかりが、振り返る。


「つむぎ」


 小さく頷く。


 ひよりと視線を交わす。


「今度は私たちの番」


 空間が裂け、音響機材が現れる。


 ステージ衣装。


 煌びやかな布が森に映える。


「レグルト、見てて」


 音響機材を自動再生モードに切り替える。


 ひかりが微笑む。


「これが、私たち三人の覚悟」


 レバベア。


 三人が並ぶ。


 つむぎはまだ震えている。


 だが、目の奥に光が宿る。


 ひよりが息を吸う。


 自分で作った曲。


 だが、レグルトが弾いた曲とは違う。


 イントロが鳴る。


 森に広がるビート。


 軽快で、優しく、強い。


「レバレバレバレバレ〜♪」


「♪ レーバレバレバ ベアベアベア〜」


 三人が声を重ねると、魔物の動きが鈍った。


 歌詞は祈りだった。


 壊さないと誓う歌。


 奪わないと誓う歌。


 戦わず、守るという選択。


 つむぎは声が震えながらも、願いを込めて一生懸命に踊って歌う。


 森が共鳴する。


 葉が光る。


 魔物たちの殺意が薄れる。


 やがて、影は霧のように消えた。


 静寂と余韻だけが後に残った。


 エルフが、ゆっくりと目を開ける。


「……なるほど」


 ひかりが息を整える。


「これでもダメ?」


 エルフは、遠くを見た。


 そして、静かに告げる。


「過去の人か……」


 エルフの言葉は重かった。


「お主らが知る地球は、もう存在せぬ」


 森の空気が凍る。


「この地はな――“やり直し”の星だ」


 誰も、言葉を発せない。


 三人の胸が、強く脈打つ。


 森は道を開いた。


 だが、真実は、まだ始まったばかりだった。

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