遊ぼうぜ①
しばらく放心していた楽人がはっと気づくと、楽人の隣ではハクがあぐらをかいた男性の足の中にすっぽり収まってこちらをにこにこと見ていた。
男性はあぐらをかいた膝の上に肘をつき、その上に顎を置きぼんやりと穏やかさを取り戻した川の水面を眺めていた。
さっきまであったことが嘘のように平和な光景だった。
しばらく男性の横顔を楽人が見つめていると、男性は視線だけを楽人の方に移し、
「お、もういいか。」
と呟いた。
楽人は気が抜けたまま尋ねた。
「あのー…二人って、もしかして知り合い…?」
男性がちらりとあぐらの上にいるハクを見ると、ハクが答えた。
「そうだよ、彼は中山みゃ!あ、中山、こっちは楽人みゃ!」
「な…中山……?」
「ああ、中山だ。…よろしく、少年。」
楽人はしばらく二人の言葉の続きを待ったが、ハクは相変わらずにこにこ、楽人の方に少しだけ向けられた中山の表情も、変わる気配はない。
「いや、誰!?」
楽人は思わずツッコんだ。ハクはハッとすると、すっと中山のあぐらの上で立ち上がり大きく伸びをし、目を輝かせて答えた。
「中山はね、ガクジンの一員なんです!」
それに答えるように中山も加えた。
「…あー…そうだな、元考古学者…現在職業不詳…家無しの中山だ。」
「ガクジン…?なにそれ…」楽人が続けて尋ねると、ハクが嬉しそうに話し始めた。
「楽人、いいことを訊いてくれたみゃ!ガクジンとは…道長を倒すため…組織みゃよ!」
誇らしげに説明したハクだったが、説明不足は明らかで、楽人はさっぱりわからなかった。
混乱する楽人をよそにハクは中山の膝から下り、中山に向き直った。
「中山、見てたみゃ?楽人の戦い!」
「…ああ、センスは悪くない…。とはいえまだまだ中坊だな…いろいろ鍛える必要がありそうだ…。」
「そうみゃ!ということで中山、お願いみゃ~!」
中山は億劫そうにゆっくりと立ち上がると、面倒くさそうに「ついてこい」とだけ言った。
楽人は何もわからないまま、歩き始める中山の後を追った。




