第38話 桃子、校舎へ
~桃子、校舎へ~
――まったく、ひどい目にあった。
桃子はさきほどの大きな穴から落ちたショックから立ち直れずにいた。落ちていく途中で意識を失ってしまった。それくらい深い穴だったのだ。
当分、夢に見そうだわ。
「――桃子、この階段」
このか姫がそんな桃子にかまうことなく、目の前の階段を指差した。
「これが、何?」
ももこは不機嫌に聞いた。
「この階段を一番上の階まで行けば、美術室。そこにこの出来事のすべての原因がいる。あなたの友達もいる」
「じゃあ、さっさと行きましょうよ」
桃子は軽いステップで階段を上がり始めた。
「・・・あら?」
桃子は階段を上がる途中で、大きな人影が激しく息を切らしながら、手すりに寄りかかっているのを見つけた。
「んん?」
桃子は闇の中で目をこらす。よく見ると、それは巨大な銅像だった。
「おお・・・君たちは・・・誰かね?」
銅像は息も絶え絶えに、何とかそれだけ尋ねてきた。
「とんでもない姿しちゃって。おじさんこそ誰よ」
桃子が冷たく言い返した。
「この人は校長先生の銅像。いったい何をしているの?」
「校長先生?この情けなさそうなのが?」
桃子は怪訝な顔をしながら、校長の全身を無遠慮に見る。
「きっと、みんなに置いていかれた」
このか姫が淡々と説明した。
「そ、そうなんだよ・・・。せっかく、格好いいところを、見せられたと思ったのに・・・。いやはや・・・面目ない」
校長は切なそうに、大きく息を吐きながらつぶやいた。
これが、うわさに聞くあの校長先生の銅像か。いや、それよりも。校長から流れるこの汗は、いったい何でできているのだろうか、と桃子は不思議に思った。
こういうものとは久しぶりに話したけど…。
――何だか、全然怖くない。
9月もみなさんにいいことがありますように。私にもありますように。




