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第33話 美術室へ

 ~美術室へ~


「――おう、おせーぞ」


 直が開口一番、文句を言った。


「ごめんごめん」

 秋は軽い調子で謝る。図書室には予想通り、直や桜子、茜や巴の姿があった。みんな疲れ切った顔をしている。

「直たちも長い髪の毛に飲み込まれたの?」

「まあな。で、気がついたらここにいたんだよ」


 桜子はあわてて読んでいた本を閉じ、泣きそうな顔で秋の方へと歩み寄った。


「よかったです、無事で」

「うん、桜ちゃんも元気そうで良かった」

「さっきまではセンパイ、よだらたらして放心状態だったけどな」

 直が思い出すように笑った。


「それよりお前ら――うおっ!」

 直は図書室に入ってきた校長の姿を見て叫んだ。桜子も秋の後ろにかくれる。

「怖がらなくていいよ」

 秋が直たちをなだめた。

「いやあ、元気そうな生徒たちだ」


 校長は口元を緩ませてのんびりとつぶやいた。校長はおもむろに直と握手をしようとしたが、何かを思い出した様に手を引っ込める。すでに秋から、「握手とハグはしないように」ときつく言われていたのだ。


「校長先生から詳しいことは聞いたよ」

 そして秋は、直たちに校長に出会ったいきさつや、『美術室のももちゃん』の話をした。


「――なるほどな」

 直が真面目な顔でうなずく。こんな直の表情はふだんの授業ではまず見ることができないだろう。

「じゃあ、今から美術室に行けばいいってわけだな」

「そういうこと」

 秋もうなずく。

「確か、美術室は校舎の一番上の階にありましたよね」

 桜子が黒板を確認する。図書室内に◎が3つ。図書室の周りには今のところ、特に何かしらの脅威は迫っていないようだ。

あくまで、今のところはだが。


「よし、早速行こうぜ」

 直が意気揚々と立ち上がった。他のみんなもそれに合わせて立ち上がる。

 みんなの中で、いよいよ終わりが近づいている予感がしていた。


 ふと気づくと、胡桃が校長先生のことを感慨深げにじっと見つめていた。

 秋はそのことには気がつかず、胡桃に声をかける。

「胡桃、色々ありがとう。今から美術室に行ってくるよ」


 それに対して、胡桃はただ黙ってうなずいただけだった。


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