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Anima Raw Craft —最弱アニマと譲れない僕らの青春クリエイティブ—  作者: 白草羞
第二章  『灰色が、色づく日まで』

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第二章1  『現場のレベル』

 「うわ~、高いビルだな。」と大都会の中心部にそびえたつビル街の中でも、一際異彩を放つ多角形のモダンなデザインのビルを目の前に最もな感想を言う友心と並び、いよいよ今日から僕たちの思い浮かべる街づくりをするんだと胸の中で意気込むユズ。

 僕たちは先日の制作発表で二番手ながらもなんとか市長のお眼鏡にかない、自治体として地域住民の課題解決を行う、自治体プロジェクトへの参加を認められたのである。

 「な、なんだか緊張しちゃうね。」と後ろから声をかけてきたのは宮城チームのリーダーである宮城君だ。正直彼のことはよく分かっていないが、僕と同じように内向的で努力家な雰囲気を感じる。入学初日の洗礼式で滝澤先生がクラス分けの名前を呼びあげたが、彼は友心の次である2番目に呼ばれていた。今にして思えばあの順番には意図があったように感じる。

 「僕は宮城君と面白いモノが作れれば満足かな。」と現れたのは宮城チームのメンバーの郡司君だ。彼のこともよく分かっていないが宮城君と仲が良く、1回目のグループワークの時から宮城君とタッグを組んでおり、どこか僕と友心のような関係性を感じさせる。

 「おっ!全員お揃いだな、じゃあみんなで今日から頑張ろうぜ!」とムードメーカーの中村が、これまでユズと一緒にグループワークをしてきた志水、高見、工藤を引き連れ、自治体プロジェクトに参加する8人が揃ったところで、みんな各々の期待を胸に、働く大人達が颯爽と行き交う、一見煌びやかなビルに向かって歩いて行った。


 ——「君たちが選ばれしクリエーター高校生だね。私は地域イノベーションセンター、主任技師の矢島です。」と爽やかで人当たりの良さそうなお兄さんがやってきた。どうやら自治体プロジェクトの管理者で、僕たちはこれからこの人の指揮下でモノづくりをしていくらしい。

 「市長からだいたいのことは聞いているよ。まず私たちの地域イノベーションセンターのことから説明するね。ここは市長直轄の組織で、地域が持つありとあらゆる課題解決をしていくところなんだ。今回、宮城チームからは少子高齢化とインフラ老朽化の観点から取り組みやすい案を、久保川チームからは公園の再建案をもらっているが、これらは私たちのプロジェクトで行う一部分として、実はこれまで何度か議論されてきたテーマになんだ。だから私たちと同じように考えてくれたのは嬉しいと同時に非常に心強く、今日から一緒に働けることを楽しみにしていたんだ。ただね、ここでは君たちは学生ではなく、一人の戦力として見られる。今日からは学生気分で楽しくモノづくりするのではなく、その先に日々困っている地域住民たちがいることを忘れずに働いてほしい。」という激励の言葉を聞き、一同威勢よく返事をするユズ達であった。


 ——「やっぱり全然ダメだね。東郷君、西條君、南道君、北斗君、後は頼むよ。」と言い放ってスタスタと去っていった矢島さん。まずは宮城チームと久保川チームの制作物を地域導入するにあたり、自治体の品質チェックのプロセスに通したのだが、その結果が良くなかったらしい。その改善のために、滝澤先生の代役である四天王が指名された。

 「君たちの作ったものはただ動くだけのガラクタ。それが要件に合致しているか、バグはないか、ありとあらゆるパターンをテストして品質をクリアしなければ何の役にも立たない。最悪一つのミスが人の命に関わることだってある。作ったものを世に出すということはそういったリスクを抱えていることを常に意識してほしい。」と四天王に言われ、僕たちは品質チェックの結果を基に、改修とテストを繰り返し行うこととなった。

 もちろん学生気分でナリに進めるわけにはいかないため、品質チェックの結果が全体で何件あるか、各指摘ごとに難易度を分け、いつまでに対応できるかをプランニングし、日々四天王に進捗報告、時には相談をしながら品質、納期、コストを適切にコントロールしながら進めていった。

 特に自治体側の品質管理部とのコミュニケーションが大変で、指摘に対する対応内容の妥当性を納得してもらうことがこれほど骨が折れることだとは思ってもみなかった。品質管理は、第三者としての立ち位置からのチェックになるため、指摘内容もこちらの都合を一切考えず一般的な観点からの指摘が多い印象だ。また、毎日何件もの品質チェックをしていることも相まって、かなりドライな方達で正直コミュニケーションが取りづらかった。しかし、ユズが窓口となりコミュニケーションをすることで、素直さや勤勉さが伝わったのか、次第に品質管理部の方達から他のチェックに関する愚痴を聞ける仲になり、それ以降はスムーズにコミュニケーションがとれるようになっていった。

 二週間かけてようやく品質管理部のOKをもらいモノが確定したため、その次は自治体としてどう運用していくかを運用部と定義、どのように地域住民に届けるかを広報部と打ち合わせ、各種承認手続き等、様々な関係各所とのやりとりに追われた。


 慣れないことばかりで、目まぐるしいある日の夕刻、ユズと友心は缶コーヒー片手に夕日を眺めていた。「缶コーヒー片手に語り合うなんてなんだか一気に老けた感じがするな…。にしても作ったモノを世に出すってこんなに大変なことなんだな~。」と呟く友心に対して、「使う人がたくさんいるモノって、それだけ事前に確認することが多いってことなんだね」と返すユズ。

 心労が溜まっている様子の二人に急に「初日に言ったじゃないか。」と第三者が割り込んできた。四天王の東郷さんだ。ふいを突かれて急に立ち上がるユズと友心。

 「確かにユーザ数が多ければ多いほど、やらなければならないことは多くなる。他にもクライアントの業界によってもクリエーターに求められることは変わってくる。例えば、製薬などの医療業界であれば人命に関わるため高品質なモノが求められるし、金融業界であればお客さんのお金を取り扱うため品質だけでなく、法令/セキュリティ対応がより一層厳しくなるし、小売業界であればCXやマーケティングが重要視される。今回の自治体であれば、医療・金融業界に求められる安心・安全と小売業界に求められるユーザビリティの両方が必要なイメージかな。」とクライアントの業界によってモノづくりの観点が変わることを説明する東郷さん。

 「君たちもプロのクリエーターとして社会に出るときに、誰のどういった悩みを解決したいのかによって道が大きく変わると思う。今はその時に備えて、この業界にいる人たちはこういった悩みを抱える傾向にあるんだなというのを一つでも多く知ってほしい。」という東郷さんのお言葉を聞いて、今はまだピンと来なくとも、一先ずは目の前の自治体の悩みを解決するために奮闘をしなければと思い返すユズと友心であった。


 ——翌日、ユズ達は公園の再建について、今度どのように進めていくかを地域イノベーションセンターの矢島さんと協議していた。「僕たちの元々の想定としては、まずは昔あった公園の跡地に、サイレントウェーブとライトウェーブを導入して、子供たちの遊べる場を提供した後に、子供たち以外の学生や社会人、高齢者も含めた地域住民の全員が、思い思いに使える複合的なサードプレイスとして展開していこうと考えていました。」と発案時の想定を話す友心。

 「初めは小さく稼働させて徐々に大きく展開していくアプローチはいいと思う。前者をフェーズ1、後者をフェーズ2として考えたときに、フェーズ1でリリースするもの自体はすでに品質管理部のチェックも通り、運用部と運用方法を握れている状況なので、あとは地域住民に告知をして実際に使ってもらうだけだ。しかし、もともと騒音問題で公園が廃止になった経緯を踏まえると、地域住民にどのように告知するのかが重要になってくる。そこについても君たちは考えていると聞いたけど。」と確認をする矢島さん。

 「はい、私たちは誰に何をどのように告知するかというプロモーション戦略を立てています。特に騒音問題でクレームを主張した公園周辺の住民の方に安心していただくためには、ポスティングや街の掲示板・SNSの活用だけでなく、実際に対面での説明会が必要だと考えています。これについては広報部の方の承認も得ています。」と答える戦略系インフルエンサーの工藤。

 「そうだね、それでその説明会についてなんだけど、実は君たちに忠告しなければならないことがある。きっとその説明会でどれだけで君たちが熱心に説明してもうまくいかない。なぜなら、大きな反発をしてくる住民がいるからだ。」と不安げに語る矢島さんだった…

第二章一話をご覧いただきありがとうございました。第二章では学校ではなく自治体という実際の業務の場でモノづくりをしていくユズ達を描いていきます。まずはその一話として、学校とは違う緊張感や業務プロセスの多さに翻弄するシーンを書きました。

あとは業界の特性みたいなところを少し触れさせていただきましたが、これは私のリアルな体験に基づいています。これまで数多くの業界の課題解決を行ってきたので、この先それを活かして、守秘義務に反しない程度でもっと深いシーンを書きたいなと思っています。

ラストの大きな反発をする住民の影を含めて、この先もたくさんの壁にぶちあたると思いますが、ユズ君持ち前の素直さと根気でなんとか乗り切ってほしいものです。

それでは、感想やレビューなどのリアクションいただけますと大変嬉しいです!次回も引き続きよろしくお願いいたします。

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