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Anima Raw Craft —最弱アニマと譲れない僕らの青春クリエイティブ—  作者: 白草羞
第二章  『灰色が、色づく日まで』

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第二章2  『反対勢力』

 「公園の再建なんて、わしは絶対に認めない。しかも高校生が作ったモノなんて安心して使えるわけがない。」と地域イノベーションセンターの矢島さんの説明を遮り、強い口調で言い放つ地域住民の関さん。

 僕たちは公園再建のために、地域住民向けの説明会をしているところであるが、矢島さんから冒頭に背景や目的、導入システムの説明をしたタイミングで、関さんから大きな反発があったのだ。

 「公園が廃止になったのは騒音問題があったからですよね。その件については、こちらのサイレントウェーブと呼ばれるシステムで解決することは、先ほど身をもって実感いただけたはずです。」とこれまでの経緯を再確認する矢島さん。

 「確かにそのシステムはよくできている。だからといって公園の再建を認めることは断じてできない。」と、その後矢島さんがどれだけ問いかけても、その一点張りで硬直状態となり、説明会は改めて実施する流れとなった。


 「せっかくいろいろと考えてくれたのに、うまく説得できずに申し訳ない。」とユズ達に陳謝する矢島さん。「いえ、こちらこそ矢面に立って下さりありがとうございます。」と返す友心。先日、事前に関さんの話は聞いており、その上で矢島さんに説明してもらおうという流れになったのだが、結局は上手くいかなかった。

 「なんだか怒っているというよりは、公園を再建することを心から憂いている様子だった。」と呟くユズ。「なるほど、君が人の感情を読めるのは本当だったんだね。」と悟る矢島さんが続けて話す。「プライベートなことだから伏せていたんだが、実は関さんのお孫さんは廃止になる前の公園で亡くなっているんだ。原因は遊具の老朽化だった。我々自治体が定期的にメンテナンスをして安全を担保していたはずだったんだが、それが不足していたようだ。」

 「そんなことが…だから関さんはあれだけ公園の再建に反対されてたんですね。」と相槌を打つユズ。「そうなんだ、他の住民は騒音問題を重要視しているからサイレントウェーブがあれば反対はしないが、関さんはそれだけだと納得されない。一度失った信頼を取り戻すのは難しい。」と嘆く矢島さん。

 ことの経緯を知り、ユズは思った。確かに関さんの立場だと、公園の再建は受け入れがたい。けれど、だからといって子供たちの遊ぶ場所を奪うのは極論ではないだろうか。子供たちがどのように遊んでも安心・安全な公園という印象を持ってもらえれば、考え直してもらえるのではないだろうか…。そう考えると体が勝手に動いていた。

 「ダッ……タタタタタッ、ちょっと関さんと話をしてきます!」


 ——「すみません、どうしてもお話をしたいことがあって…。」「君か、まあ中に入りなさい。」といきなりきたユズを受け入れて、自宅に招き入れてくださる関さん。リビングにはお孫さんと思われる写真がいくつも並んでおり、大きな窓からは公園の跡地がよく見える造りになっていた。

 「その様子だと、ことの経緯は矢島君から聞いているんだろう。本当はあんな公園は見えないように常にカーテンを閉めていたい気持ちでいっぱいなんだが、孫はとにかくあの公園が好きでね、いつもあの公園で楽しそうに友達と遊んでいたんだ。だから、孫がいつでもあの公園が見えるように、ずっとカーテンは開けているんだよ。」

 その言葉を聞き、関さんの様子を伺うユズ。当時のお孫さんの生き生きとした姿を思い浮かべている幸せとお孫さんをなくした悲しみ、そしてそんな悲しみが他の人にも訪れないような憂いを感じた。そして、この人は起きたことを誰のせいにもしていない、ただ今後起きないように心配をしているだけの優しい人だと思った。

 「お孫さんは本当にあの公園がお好きだったんですね。…僕たちがあの公園を再建しようと思ったきっかけは、ある3人家族との街中での出会いでした。」と若い世代の夫婦が子供たちが遊べる場所がないことに困っていることやそれを解決するためにこれまで取り組んできたことを、ユズは精一杯説明した。

 「君たちの取組は本当に素晴らしいし、若い世代が困っていることもよく分かっているよ。だからといって危険な目にはあってほしくないんだ。もしあの遊具がもう少しでも危険を察知した設計になっていれば、もし自治体の定期メンテナンスがもう少しでも踏み込んだチェックをしてくれていれば、もしこういった使い方は危険だと告知があれば…。」

 その瞬間、左肩の灰色の小さなやつがかすかに震えた気がした。そして、ユズは答えた。「関さんの想いは確かに受け取りました。その想いに応えられるように、しっかりと対応しますので、もう少し僕たちに時間をください。」そう言ってユズは関さんの家を出た。

 ユズは一目散に地域イノベーションセンターに戻り、プロジェクトメンバーである友心、高見、工藤に言った。「サイレントウェーブとライトウェーブを作り直そう。」と。


 そこからは急ピッチでの制作が必要となった。なにしろ、すでに公園をオープンする日は決まっており、そこに向けて自治体のありとあらゆる部署が動き出しをしているからだ。関さんから聞いた危険を察知した設計という話を聞いて、僕たちはどういった仕様が追加で必要かを徹底的に考えた。

 その結果、サイレントウェーブには子供たちの楽しい叫び声は消しつつ、緊急事態で誰かに助けを求めるような叫び声は消さないように、消音を仕分ける機能を追加し、ライトウェーブには子供たちが遊んでいる動きや状態を監視して、危険だと判断したときは遊びを中断/他の遊びを提案する機能を追加することとなった。制作以外にも運用部との定期メンテナンスのチェック事項の見直しや広報部とライトウェーブの安全な遊び方の告知方法のすり合わせも行った。

 これらの全ての作業をユズがマネージメント、時には自身で制作をした。特に、サイレントウェーブの追加機能をユズ一人で制作したことが大きな成長を感じさせた。具体的には、様々な声のインプットデータをAIに取込・学習させて、どの声を消すかを正しく処理させる高度な作業が必要だった。正直何度も作業に行き詰まり、諦めかけた。でも関さんの言葉が、想いが頭から離れなかった。その度に、これまでのグループワークでの経験と自治体プロジェクトの裏で並行で進めていた滝澤先生のライセンス取得講座で学んだ知識を思い返した。そして、試行錯誤しながらもなんとかやり抜くことができた。そういえば、夢中になって作業していたとき、左肩の灰色の小さなやつの目が金色に輝いていたように思ったが、あれはなんだったのだろうか…

 ライトウェーブの方は友心と高見のおかげで無事に完成し、運用部や広報部との調整も工藤が見事に対応してくれた。品質管理部だけは再度チェックすることに最初は反発気味であったが、これまでの関係値をユズがしっかりと積み上げてくれていたおかげで、なんとか期限内に対応でき、無事に必要な作業を全て完了することができた。

 その様子を陰ながらずっと見ていた四天王たちは思った。滝澤先生の言っていた通り、このクラスは自分たちほど個の力は強くないが、グループとしてまとまったときに素晴らしいパフォーマンスを発揮できると。そして、それを成り立たせているのが大成ユズだと。


 ——そして、二回目の住民説明会の当日。今度はユズたちが関さんをはじめとする地域住民に公園再建について説明した。どういった経緯で公園を再建しようと考えたのか、そのために周りの方への迷惑をかけないようにする方法、そして子供たちが安心・安全に楽しく遊べる方法、それを長期的に運用していく方法を事細かに話した。

 すると地域住民の皆さんが、そこまで考えてくれたのであれば、私たちも安心してお任せできると言ってくれた一方で、関さんだけがまだ考えている様子だった。

 「わしは最初高校生なんかに何ができるのかと否定的な立場だった。ただユズ君と直接話して、彼のモノづくりに対する想いを感じて、彼なら信頼できるかもしれないと考え直した。そして、今日しっかりとわしが懸念していたことについての説明があったおかげで、きっとユズ君たちに任せたら大丈夫なんだとろうと思うことができた。ただ…やっぱりわしは心配でたまらない。それが杞憂だとしても、未来ある子供たちに危険な目にあって欲しくない。ただ、だからといって鳥籠に入れておくような考え方も良くないのは分かっている。だから…今後はわし達にも協力をさせてほしい。ただ自治体に任せるだけでなく、地域全体が一丸となって、未来ある子供たちが健やかに育つようにサポートをしていきたい。」

 それを聞いて、その場にいる全員が温かく大きな拍手で彼の意見に賛同した。その拍手を聞きながら、ふと左肩を見た。灰色の小さなやつが、いつもより少しだけ大きく見えた。そして今度は、気のせいじゃないと思った。

 第二章二話をご覧いただきありがとうございました。今回は、ユズ達と地域住民のぶつかり合いの話でした。どんなに素晴らしい取り組みをしたとしても、反対勢力が出てくるときがあります。そういったときに、ユズ君であればどのように対処するのかを考えながら一文一文を紡いでいきました。

 また、今回あまり詳しく描写できなかったのですが、学校側のパートであるライセンス取得講座について、次回以降で詳しく説明したいなと思っています。自治体プロジェクトで大活躍したユズ君ですが、裏ではライセンス取得講座もしっかりと受けており、そこでもいろいろと壁にぶち当たっていたようです。(マルチタスクがしっかりとできるなんて本当に素晴らしいです…)

 それでは、感想やレビューなどのリアクションいただけますと大変嬉しいです!次回も引き続きよろしくお願いいたします。

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