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Anima Raw Craft —最弱アニマと譲れない僕らの青春クリエイティブ—  作者: 白草羞
第一章 『僕だけが灰色だった、あの春』

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第一章6  『プロモーションの極意』

 「どんなにいいモノを作っても、それだけではスタートラインに立っただけよ。」と言い放つ工藤。一息も入れずに続ける。「作った後にどう届けるかが重要なの。単なるモノの説明だけでもダメ。私たちはこのモノを通して、使う人にどういった世界を見てほしいのかを伝えなければいけないわ。」工藤は戦略系インフルエンサーでプロデュースに関しては人一倍強い想いがある。

 「特に今回の場合は、子供の叫び声がうるさいと感じる敵対勢力がいるわ。その人たちにどう納得してもらい、その上で彼らにもメリットを感じてもらう必要がある。そのためにいつ、どこで、何を使って、どのようにプロモートするか、そういった戦略を考えないといけないわ。」と、工藤の熱意に感化された友心が「なるほどな。今回であれば、サイレントウェーブがあることで子供たちが回りを気にせずに自由にのびのびと、ライトウェーブがあることで安心安全にみんなで楽しく遊べるっていう世界観がまず第一だよな。それに加えて、子供たちの親御さんも遊び場所に悩まずに、近隣住民も騒音に悩まされずになるって世界観ができるよな。」

 「そうそう、あとは近隣住民にも価値あることが重要よ。騒音がないだけなら彼らにとっては現状となにも変わらないわ。そんなことに税金を使うなと言われる可能性だってある。さてここでクイズ!今回のウェーブシリーズを通して、近隣住民にも提供できる価値とは?」といきなりクイズ形式にする工藤。

 言われてみれば、今まで使う人のためにと考えてきたけれど、それを必要としていない人をどう取り込むか考えたことはなかった。子供の声をうるさいと感じる人はどんな人なんだろう。自宅で日中仕事をしていたり、夜勤で日中は休息をとっている働き盛りな社会人世代、乳幼児を育てていて子供のお昼寝時間を確保したい子育て世代、聴覚が敏感になっている高齢者世代…とたくさんの属性が当てはまる気がする。共通して言えることは、自身の仕事や家庭などの背景で静かな環境を望んでいるだけで、決して子供が嫌いなわけではない気がする。と考えた上でユズが「クレームを言っている近隣住民も楽しめる公園にするとか…?」と少し遠慮がちに答える。

 「そう、その通りよ!公園ってなんとなく子供が楽しむだけの場所みたいなイメージがあるけど、もっといろいろな使われ方をしてもいいはずよ。在宅ワーカーには自宅だけではないサードプレイスとしての働き場所、乳幼児の親御さんには子供を寝かしつつ同じような他世帯と悩みを共有する場所、子供たちと高齢者が一緒に楽しめる場所、そういった様々な人のことを考えた複合的な公園にすることで、自分たちにフィットした使い方ができることが大きな価値よ。」と強く話す工藤。

 全員が工藤のプロモーションに対する想いを受け止めたところで、工藤がホワイトボードを使ってプロモーション戦略の全容を説明した。誰に何をどのように発信するか、ターゲット・メッセージ設定、チャネル選定やタイミング、効果測定の方法まで事細かに説明する工藤に一同関心していた。


 ——工藤のおかげでプロモーション戦略が固まり、あとは必要な媒体を制作して実行するだけになった。

 「ところで今回ってどこまでやるの?」チームのみんなに確認するユズに対して友心が答えた。「まずは滝澤先生からのオーダー通り、地域住民の悩みを解決するために俺たちはウェーブシリーズを作ったよな。ただこの制作は第一通過点にしか過ぎず、最終的にみんなが使える公園にする世界観を実現するためには第二、第三とやることがある。その全体感を説明した上で、今回はここまでやりましたっていうストーリーでいいんじゃないかな。」と整理しながら答えた友心。「そうね、プロモーション自体もプランニングまではするけど、今の状況だと実行までは移せないわね。」と残念そうに話す工藤。

 みんなでここまで苦労して作ったんだ。せっかくなら本当にウェーブシリーズを導入したいし、その先のみんなが使える公園を作り上げたい。ただそのためには公園を作る権限を持つ人、つまり自治体の協力が必要不可欠だ。するとユズがみんなに提案した。

 「今回の制作発表に自治体の人を招待するのはどうかな?」と。


 「コンコンコンッ、失礼します。」僕たちは早速滝澤先生にお願いをしに行った。すると二つ返事で、「いいわね。せっかくなら市長を呼びましょう。あとは制作に関わってくれる企業と地域住民の方にもきてもらったほうがいいわね。」と話す滝澤先生に、僕たちは正直呆然とした。なぜなら、僕たちはダメ元でお願いしにきたからだ。高校生の制作発表なんかに自治体を巻き込めるわけがないと。そんな僕たちの考えを見透かしたように、「なに?私を誰だと思ってるの?私にはあなた達を最終的にプロのクリエーターとして社会に送り出す義務があるのよ。そのために国や自治体、民間企業、非営利団体まで、ありとあらゆるところにコネクションがあるに決まってるじゃない。」

 続けて「せっかくならコンペをしましょう。今回市長に気に入ってもらったモノは、実際に市の予算を使って地域に導入してもらうの。本来ならお金という形でリターンがあるけれど、あなた達の場合はクリエーターコンテストへの参加やライセンスの取得、就職への一助になるってとこかしら。そのつもりで制作発表に向けて取り組みなさい。ちなみにそんな思い付きのアイディア実現できるのか?って顔してるけど、私と市長は何十年の付き合いだからそんな心配は無用よ。」と僕たちがやりたいことを実現するためのレールを次々と引いてくれる頼もしい滝澤先生であった。


 ——「なんとしてもコンペで勝ち上がらなきゃな!」と意気込む久保川チーム。制作発表まで残り3日、チーム全員が全力でプレゼン資料の作成に打ち込んでいた。この作業は言わば、これまでの行ってきた制作活動の総集編を作るようなものだ。今までの一つ一つの作業を思い返しながら、資料を作っていくうちにユズは思った。僕はこの制作の中で何をしてきたんだろうかと。初めてのプログラミングをなんとかものにして、ライトウェーブの一部分を作ったくらいではないか。例え僕がいなかったとしても、友心と高見、工藤でできていたのではないか。僕のいる価値ってなんなんだろう。そう考えるとまた静かに不安が忍び込んできた。

 すると左側からかすかに声が聞こえてきた。「君がいたから、いつもユーザのことを一番に考えられたんじゃないか。もっと自信を持ってくれないと、僕は目が覚められないよ。君なら大丈夫だよ…ユズ。」

 「今の声は君…なの?」と左肩の灰色の小さなやつを見るが、ただぼんやりと遠くを見ているだけだ。確証はないけどきっとそうだと感じて、改めて今の自分にできることを考える。

 ——クリエーターとしてのスキルがまだ発展途中だからこそ、誰よりもユーザ視点で柔軟に考えられる。それが今の僕にできることだ。だからこそ、ユーザの代弁者として今回の制作に対する想いをみんなに伝えてみせる。

 そう思った時、自然に声が出ていた。「今回の制作発表は僕に任せてくれないかな?」と。

第六話お読みいただきありがとうございました。今回は戦略系インフルエンサーである工藤がメインになる回でしたね。私もぜひ工藤にこの小説のプロモートをしてほしいと思いながら書いていました。(どうやったらもっとたくさんの人に読んでもらえるんだろう…)

さて、とうとうユズのアニマが喋りましたね。私は早くこの子が覚醒してくれないかという想いで、いつも筆をとっています。起きるにはもう少し時間がかかるような気がしますが、それを楽しみに読んでいただければと思います。ではでは、よろしければ感想/レビュー等よろしくお願いいたします。

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