表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Anima Raw Craft —最弱アニマと譲れない僕らの青春クリエイティブ—  作者: 白草羞
第一章 『僕だけが灰色だった、あの春』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/11

第一章5  『ユズの成長』

 「俺たちはA定食にする!、じゃあ私はCにしようかな~♪」と学食でお昼を選ぶ友心、志水、中村、北海。僕たちは最初のグループになって以来、毎日一緒にお昼を食べている。ちなみにこの高校では珍しく学食があり、在学生が授業の一環で企画~運営まで行っている。そんなこんなでメニューは毎回尖ったものが多く、A定食は「カロリー爆弾!大人のお子様ランチ」、C定食は「今朝収穫したばかりの新鮮野菜と鰆の天ぷらそば」で、僕はB定食の「悩んだらこれ!どこにでもある平凡オムライス」にした。

 「みんな制作の方はどうだ?確か志水と中村は宮城チームで、北海は太橋チームだったよな。」と聞く友心に対して、中村と北海が答える。「そうそう、何を作るかまだ悩んでいるところなんだよなあ…」、「私たちもそんなところ。住民の悩みがちゃんと掴めてないかな。太橋君ったら真面目すぎて警察の尋問みたいな聞き方なんだよね(笑)」と聞き、ユズは内心で「そうか、僕たちの場合は工藤がいたから最初の企画はスムーズに進んだけど、当たり前のことじゃなかったんだな」と思った。

 ユズはまだ自分が本当にクリエーターとしてやっていけるのか不安な想いでいっぱいだったが、こういった気心の知れた仲間との何気ない時間に救われてた。


 ——「ユズ、あなたモノづくりの才能ないかもね。」と一蹴する工藤がユズの心をえぐった。「やる気は認めるけど、これまでずっと言ってきていることが何一つできてないわ。」

 工藤の言う通りであった。今回は主にプログラミングをしなければならないが、僕にそんな経験はないし、数学やロジカルに考えることも苦手だ。そんな僕でもなんとかやらなければというやる気だけで、工藤から言われたことをメモして作業に取り組んだり、授業外では本やネットの情報を読み漁ってキャッチアップをしてきた。しかし、まだ振られたタスクを一つとしてこなせていない。

 「教科書に書いてある基本的なアルゴリズムを理解して実装するだけのプログラミングができても、自分のやりたいことを実現できなかったらなんの意味もないわ。まずはやるべきことを一つずつ分解して、それを実現するための方法を考えて、それでも分からなかったら私に相談をして。」


 ——時間が経っても工藤に言われたことが頭の中でリフレインする。僕は校舎が見渡せる山にあるベンチに座っていた。ここはユズのお気に入りの場所で基本的に誰も来ないので一人になりたいときはうってつけの場所だ。と思っていたら、

 「ザッ……ザクザク……ザクザクザク、やっぱりここにいたか!」と早速一人の時間を奪いに来た僕の親友。「なんでここが?」と聞く僕に対して、「俺がユズのことで知らないことはないんだぜ!」と出会ってまだ1か月も経たないのに自信満々な友心が続けて話す。

 「工藤から話は聞いてるよ。なかなか手厳しそうだけど、彼女の言ってることは正しい。」それに対して「…僕もそう思うよ。でも正直プログラミングが分からなくて、なんだかずっと難しい言語を読み解いている気分になるよ。デジタルなモノづくりにまだ慣れないんだ。」と呟くユズ。

 「デジタルとかフィジカルとかそんなに違うことかな?ユズは前回のペン制作で、滝澤先生の手や筆圧に合うようにペンの形やサイズ、素材を何度も調整してたよな。確かにそれはフィジカルな作業だったかもしれないけど、ユズのいう今のデジタルな作業だって根本は同じじゃないかな。子供達みんなの使いやすさを考えて、ゲームの参加人数に応じて難易度を調整するんだろ。確かにそれを実現するためのhow toは違うかもしれないけど、それは知ってる人から学べばいい。」

 確かに友心の言う通りだ。僕は具体的な作業の難易度に忙殺されて、やるべきことを見失っていた。「ありがとう友心、なんだか胸につっかえていたものがスッと落ちたよ。」


 それからユズはライトウェーブを作るにあたって自分がやるべきこと、それをやるために取り組む作業を分解し、それに応じた不明点を羅列した。そうすると分からないことだけにはなったが、逆に言うとこれが分かればやりたいことができるんだという気持ちになり、以前よりポジティブに分からないことを解決するために動くことができた。

 一つ解決するとまた一つ問題が出てきて頭を悩ませたが、それを繰り返すうちに苦手意識のあったプログラミングが楽しくなってきて作業に夢中になっていった。

 当時の僕は夢中のあまりに気づかなかったが、実はこの時、左肩にいた灰色の小さなやつは目を輝やかせて、口をパクパク動かしていたらしい。


 ——「まあ及第点ね。ちょっと私が手伝ったところもあったけど、ちゃんと自分の作業を棚卸・推進して、それでもどうしても分からないところはちゃんと相談できていたわ。」と話す工藤に、ユズはなんとか平静を装ったが、胸の中では小さなガッツポーズをしていた。

 続けて工藤が間を空けて言った。「…あなたにモノづくりの才能がないと言ったけど、少し訂正するわ。才能はないけど、それを補うだけの熱量がある人よ。」それを聞いた僕は、今度は満開の笑みを浮かべていた。


 その後、ライトウェーブの制作を終えた僕たちはサイレントウェーブチームのところに向かった。すると、友心のアニマと高見のアニマが一緒に作業をしていた。ただ一緒に作業しているというよりかは、お互いが共鳴し合って、互いの力を引き上げているように感じる。

 「レゾナンスとは考えたわね。」という工藤に対して、「レゾナンス?」と問いかけるユズ。どうやらレゾナンスとは、アニマ同士が能力を掛け合わせることで、より高度な作業ができるようになるらしい。ただ、その分パートナーのエネルギー消費量が多いのと、どのアニマでもレゾナンスができるわけではないらしい。

 「前に言ったように今回の課題は処理時間の向上だった。シキのおかげで音声分析して逆位相音を生成することには成功したが、処理量が多いためリアルタイムでの生成が困難だった。そこで俺のアニマであるベンガルのライの出番ってわけだ。ベンガルは豹柄を持つ猫で、筋肉質でしなやか、俊敏性があるところも豹にそっくりだ。今回はその俊敏性をシキの能力と掛け合わせて、処理時間を早くしようと試みてるってわけさ。」と話す友心。アニマの世界は本当に奥深いと感じると同時に、僕にもこんな頼もしいアニマがいたらなと頭を過ったユズ。

 「おっ!どうやら完成したみたいだ!」と早速4人で性能を確かめた。柄にもなく高見が変な高音で叫びだし、遠くにいる工藤が耳を澄ませた。「え、何か言った?全然聞こえないよ~」と叫び返す工藤。僕たちは長い2週間の戦いを無事に終えたことをたたえ合った。


 ——4人での帰り道、ふと工藤がユズに聞いた。「そういえばこの間の学食でオムライス食べたそうじゃない。なんで?」と聞かれてこっちが「なんで?」と返したくなったが、「平凡なオムライスって書いてあって、見た目も平凡だったんだけど、どこか洗練されたものを感じたんだよね」と返すユズ。

 「あれ私の友達が作ってて、見た目には現れてないけど、中身はとにかく凝った料理だったみたいよ。ただのケチャップライスじゃなくて、出汁で炊いたご飯を数種類の野菜と肉と一緒に丁寧に炒めて、ソースは自家製デミグラスソースやトマトソースをベースに何時間も煮込んだみたい。」とただの平凡なオムライスではなかったことを事細かに説明する工藤に対して、「そうだったんだ!通りで深みのある味だと思ったよ!」と軽く返すユズ。

 その時、ユズ以外の3人はなにかを感じたようだった。ユズには人の想いや熱量が見えているのではないのかと…

第五話、お読みいただきありがとうございました。今回はユズが躓き、立ち上がるシーンに注力して描きました。私自身何度も躓いた経験があるので、描きながら辛いよねと思っていました。

ただそんな辛い中でも友達と食べるランチだけは楽しみにしていて、そういった経験があったからこそ、オムライスの件が舞い降りてきました。そういう伏線回収の仕方するんだと少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。

第六話もまた近いうちに投稿しますね。ではでは、よろしければ感想/レビュー等よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ