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Anima Raw Craft —最弱アニマと譲れない僕らの青春クリエイティブ—  作者: 白草羞
第一章 『僕だけが灰色だった、あの春』

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第一章3  『アニマの力』

 「ピンポーン♪……ピンポーン♪」「ユズー!起きてるかー!」と朝から元気な友心。昨日の制作発表後の下校を機に、親友となった僕たちはこれから一緒に登下校することになった。

 「いま行くー!」と慣れない声を張り上げて、僕たちは学校に向かった。「そういえば今日からのグループはどうなるんだろうな」と問いかける友心。洗礼式の日に滝澤先生から説明があり、目的は分からないのだが毎回グループはシャッフルするらしい。僕としてはせっかく親友になった友心とはずっと同じグループでいたいが…

 まだまだ僕たちは今後の流れが分かっていないため、お互いにどうなるんだろうなといろいろな会話をしていたら、あっという間に教室に着いていた。

 「あれ、二人仲良くなったんだ。実力差がありすぎるから意外だな」と朝から無神経なことを言ってきたのは高見忍。彼は志水がグランプリを受賞した全国中学生クリエーターコンテスト、略してJCAで準グランプリを受賞した経歴の持ち主でクリエイティブに長けており、客観的で論理的、だれに対してもフラットな意見を言うため、本人に悪気はないのだろうかユズのようなタイプを無意識に傷つけてしまうところがある。アニマはカメレオン。常に広い視野で物事を俯瞰して見ているところ、舌が達者なところがそっくりだ。

 「いい加減に少しは空気を読んだ発言をしたらどう?」と仲裁に入ってくれたのは工藤遥。彼女は一言でいうと戦略系インフルエンサーだ。モノの魅力を伝えて人に届けることに非常に長けており、自身で戦略はもちろんのこと、動画などの広告制作など一貫したプロデュース力を持つ。アニマはキツネ。策略家で計算高くクールな一面がそっくりだ。

 「コツ……コツ……カツカツカツ」「…やばい、この音は!」がやがやしていた教室が一気に静けさを取り戻して、全員が自分の席に座る。そう、これは滝澤先生のハイヒールの音だ。みんなこの一週間ほどで、すっかりと胸に刻まれているようだ。

 「あら、今日は全員時間通りに着席しているわね。これじゃユニが貯まらないじゃない。」と残念そうな滝澤先生。志水はあれからも遅刻を何回かしており、今では遅刻常習犯となって恵まれない子供たちに多大なる貢献をしている。

 「さて、昨日一つ目の制作活動が終わりましたが、時間はいくらあっても足りません。早速ですが次は校外制作をしてもらいます。学校を出て地域住民の悩みを知り、それを解決するためのモノづくりをしてください。期間は一か月。もちろんその後には制作発表をしてもらいます。また、今回のグループは自由に自分たちで組んでください。但し、なるべく前とは違うメンバーで4~5人とすること。以上。」


 ――「コンちゃん!困っている人を探して!」とお願いする工藤。コンちゃんとは彼女のアニマのキツネの名前で、どうやら鋭い観察眼と嗅覚でのリサーチ能力に長けているらしい。他にも戦略や分析が得意なのと、誰かに化けることでその人の気持ちを理解できるようになるらしい。

 「コンッ!」素早く走り出すコンちゃんを必死で追いかける久保川チーム。ちなみにアニマは宿っている人にしか見えず、基本的にはこの世界に干渉することはないため、追いかけるときはより一層周りに注意しなければならない。

 「コン、コン、コン、コン、コンッ!」どうやらコンちゃんが困っている人を見つけたようだ。僕たちが追いつくと、そこにはなにかを探している様子の30代くらいの夫婦と小学生の3人家族が立っていた。

 「あの…なにかお探しですか?」と3人家族に声をかける工藤。「ええ、最近この辺りに越してきたのだけれど、あまり子供を遊ばせられる公園がなくて。近所の人に聞いてみたら、昔はあったみたいなんだけど近隣住民からの騒音のクレームで取り壊しになったそうなの。寂しい時代よね…」とお母さんがお話をしてくださり、3人家族は去っていった。


 「今の悩み、なんとか解決してあげたいな。いきなり俺たちで公園を作るのは難しいから、過去に問題となった騒音対策ができるモノを作って、自治体にアピールするっていうのはどうかな。」と方針を出しつつ、意見を募る友心。

 「あの夫婦、ひいてはこの地域全体の悩みだよね。未来ある子供達のために、現代にあった公園を作ってあげたいね。友心の意見に賛成。」と言うユズ。

 「君はいつも誰かのためにって大袈裟だね。まあハイレベルなモノづくりなら僕に任せて。」といつものように、どこかユズに手厳しい高見。ふと、高見のアニマであるカメレオンの色が少し変わった気がしたが気のせいか…

 「近隣住民にどう安心してもらうかがカギだね。数々の広告塔になってきた私にお任せあれ!」と頼もしい工藤。


 チーム全員の意見が一致したところで、まずどういった道具やおもちゃを作るかが話し合われた。「過去の新聞記事やSNSのポスト、近隣住民の日常会話から具体的になにがクレームの原因になっていたかをコンちゃんが調べてたわ。子供の叫び声と遊具やおもちゃから発生する音が気になるみたい。」と相変わらずリサーチ力の高い工藤。

 続けて工藤が話す。「子供が叫ばないようにするのは難しいから、子供が叫んでも周りに伝わりづらい仕組みと道具やおもちゃから音が発生しづらい仕組みを考える必要があるわね。」

 「騒音対策は大きく3つの手法がある。遮音、吸音、消音だ。細かい説明は省くが、先の2つは物理的に音の発生源を囲む必要があるから公園には不向きだ。残る1つは、最近イヤホンなんかで使われているノイズキャンセリング機能みたいなやつだ。音の成分に対し逆位相の音を発生させて相殺することができる。これなら科学的に解決ができるから公園にも向いている。」と饒舌に語る高見。

 それを聞いてみんなが「おー、いいね!」と言っている中、「ただし、子供の叫び声は不規則な高音域のため、相殺するための逆位相音を瞬時に生成するのが非常に難しい。AIがリアルタイムで声の波形を解析して逆位相音を生成することができればいいんだが…」とエリートクリエーターの高見でも難しい顔をしながら話す。

 「そこはやるかしないな。俺と高見、それに二人のアニマの能力で必ず成し遂げてみせるよ。」とリーダーである友心が男気を見せた。

 「あとは道具やおもちゃから発生する音ね。それも消音対策でなんとかなるとは思うけど、物理的な遊具に頼らない現代的な遊具を作りたいわね。」ともう一つの課題を提起する工藤。

 「それについては僕に考えがある。この間都庁付近を歩いている時、プロジェクションマッピングを見たんだ。現代の映像技術ってすごいなって関心していたんだけど、それを応用できないかな。動物の映像を流してそれを追いかけたり、光るマスを映してリズムゲームをしたり、そうしたら少なくとも遊具から音は発生しないんじゃないかな。」と解決案を提示するユズ。

 「いいじゃん!ここには映像のスペシャリストもいるしぴったりだな!」と僕の頭をわしゃわしゃしながら褒めてくれる友心。「これで各々やるべきことが見えてきたな。あと工藤にもう一つお願いしたいんだけど、今回公園を作るにあたって最大限の対策はするけど、それをよく思わない反対勢力が出てくると思うんだ。そこに対して、この公園は従来のものと違うということをどうアピールして安心してもらうかの宣伝を考えてほしい。」という友心の依頼に、ふたつ返事でOKを出す工藤であった。


 ――「んー。やっぱりAIを使ってもリアルタイムで音を分析して、逆位相音を生成するって難しいな。」と呟く友心。

 「まあ君のアニマには不向きかもね。俺のシキの出番だな。」と返す高見。シキとは彼のアニマのカメレオンの名前だ。「シキは環境に合わせて体の色を変える。それは周りの変化に非常に敏感で、迅速に対処ができるということ。つまり、シキの能力を使えば音の変化を察知して、逆位相音を生成するのは可能ってことさ。」と続けて声高らかに話す高見。

 「でもそれって常にシキに消音機能を担ってもらうことになるんじゃないの?」と確認するユズ。

 「アニマを使いこなせていない君には分からないかもしれないが、アニマが持つ能力は、アニマ自身がモノづくりをすることで継承できるようになっている。ただし、それ相応の対価は必要になるが…」

 「対価?」と更に確認するユズ。

 「全く君は何も知らないんだな。アニマはパートナーのエネルギーを糧に動いている。つまり、高度なことをさせればさせるほど、パートナーである俺に負担がかかるんだ。」「とにかくこの消音機能については俺に任せてくれ。君たち3人は、他の作業に専念してくれたまえ。」


 ――そうして高見が一人で引き受けたあとに暫くして、3人は高見の様子を見に行くと信じられない光景が待っていた。そこには真っ赤なシキと床に倒れている高見がいたのだった…

第三話を読んでいただきありがとうございました。今回はようやくアニマについて語る回を書くことができました。アニマはそれぞれの個性に合った働きをしてくれる非常に有能な存在ですね。私にもアニマがいたら、どんなことができるんだろうかと妄想をしてしまいます。

さて、高見君がどうなってしまったか非常に心配なラストではありますが、次回も間もあけずに投稿としたいと思いますので、もうしばらくお待ちいただけますと幸いです。

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