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Anima Raw Craft —最弱アニマと譲れない僕らの青春クリエイティブ—  作者: 白草羞
第一章 『僕だけが灰色だった、あの春』

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2/11

第一章2  『親友になるきっかけ』

 「ドタドタ……ドタドタドタ……ガラッ」

 今は入学式…もとい洗礼式が終わった次の日、授業初日の朝。誰かが朝の予鈴を少し過ぎて、廊下を走り抜けて教室のドアを開けた。

 「すみません、さっき買ったアイスを食べきるのに時間がかかってしまって…」と、よくわからない言い訳をするクラスメイトの志水玲。

 「授業初日から遅刻ですか。1分遅れたので100ユニ支払ってください。今日は1ユニ1円でいいわ。」と淡々と話す滝澤先生。ユニとは某国連児童基金団体の頭文字だ。昨日クラス分けの後に、今後の教育方針やプロセスの説明、そして最後にいくつかの注意事項を受けた。ユニはそのうちの一つだ。学生として果たすべきことをできなかった場合、お金を徴収して恵まれない子供に寄付をするらしい。本当に寄付するのかと頭を過ったが、いずれにしても令和のこの時代に、そぐわないシステムだ。ちなみに、1分遅れることに金額が増える、かつレートは滝澤先生の気分で変動するらしい。


 僕——大成ユズは、昨日のあの発言の後、あっさりと滝澤先生のクラスに入ることを許された。正直なぜ許されたのか自分でもよく分かっていないが、いずれにしても喜ばしいことに変わりはなく、今朝は晴れやかな気持ちで昨日と同じ桜並木の道を少し小走りに登校し、一番乗りで教室についていた。その矢先、後にアイス遅刻事件と呼ばれる出来事があり、いろいろな意味ですっかり肝を冷やされてしまった。


 「今日は昨日説明した通り、まずはあなた達の実力をみるために、4人グループでモノづくりをしてもらいます。大成は久保川のチームに行くこと。」

 昨日の説明では、今後の教育プロセスが大きく二つあり、一つはグループワークでのモノづくり、もう一つは卒業後にプロとして活動するためのライセンス取得だ。ちなみに後者のライセンスはピラミッド形式に複数あり、上にいけばいくほど難易度がとてつもなく高くなるらしい。当分は前者をメインに進めるとのことで、最初のグループは昨日滝澤先生が発表されたのだが、僕は急遽追加になった予期せぬ人員であったため、今ようやく自分のグループが分かったところだ。

 「昨日の啖呵よかったぜ!よろしくな!」と気さくに話かけてくる、同じチームの久保川友心。昨日の洗礼式のときに真っ先に発言をした豹猫使いだ。明るくてコミュニケーション力に長けているのが一目で分かり、きっと彼がこのチーム、いやクラス全体をけん引していくのだろうと直感した。

 「ハァ……ハァ……初日からついてないな。アイスはオーバーヒートした脳に最適だっていうのに。」とぼやきながらチームの席に座ってきた清水玲。あとで聞くことになるが、全国規模で開催されている中学生デジタルクリエーター部門でグランプリ受賞歴のある、根っからのモノづくりっ子らしい。アニマはフクロウ。知性と観察力、冷静さを兼ね備えている一方で、普段はぼーっとしていながら、いざというと時に鋭く動くというのが彼にぴったりな印象だ。

 「本当にこのチームは面白いやつばっかりで飽きないぜ!」と授業が始まろうとしているにも関わらず大きな声で話すのは中村陽。彼は明らかにクラスのムードメーカー的なキャラクターで、自称イケメンを名乗っているため一日であだ名がイケメンになったが、正直お笑い芸人顔だ。アニマはウロコインコのブルーパイナップル。盛り上げ上手なところがそっくりだ。

 「これから授業始まるんだから静かにしなよ~」と穏やかに注意をする北海早紀。彼女はクラスに三人しかいない女性の中の一人で、その中でも特に穏やかで笑顔の素敵な女性だ。絵の才能に長けており、プロダクトデザインが得意らしい。アニマはミヤマカラスアゲハの春型。可憐だがどこか大人っぽい彼女らしい。

 以上が僕の属する久保川グループのメンバーだ。非常に個性溢れるメンツで、4人は既に昨日の放課後に遊びに出かけて仲良くなっているらしいが、後からきた僕をすんなりと受け入れてくれた。

 「それでは、あなた達に作ってもらうモノを言います。ペンを一本作ってください。期間は1週間とし、その翌朝にクラス内で制作発表をしてもらいます。学校の設備や素材は自由に使ってもらって構いません。なお、昨日も伝えしましたが、私からあなた達に直接モノづくりのhow toを教えることは一切しません。これまでの経験をフル活用して自由にモノづくりに励んでください。」


 「ペンか——。シンプルがゆえに差別化がしづらいな。」と滝澤先生からの指令があり、グループ内で早速議論のとっかかりを提示する久保川。「今時アナログなペンなんて使う人いないから、いろんなユーザにささるように多機能なデジタルペンなんでどうかな。」と最もらしいことを言う志水。「いいね!せっかくなら書いた直後にAIが内容を自動で整理・要約する機能があったら便利だな!」と新規機能の提案をする中村。「万人受けするデジタルペンのデザインなら私に任せて~」と頼もしい北海。チームみんなが自分の個性や経験を活かして議論がまとまっていく。僕一人を残して。

 僕は、誰かの問題解決をするためにモノづくりをしたいという気持ちと滝澤先生みたいになりたいという憧れの気持ちだけで、この学校にきてしまった。これまでに特にこれといった実績もなく、胸に残っているのは幼稚園の時に、幼馴染の女の子にシロツメクサで作った花冠をあげたときの彼女の笑顔だ。

 そんな僕の頭の中を察したかのように、久保川が僕の方を見ながら、「よし!一旦今まとまった方針で制作に取り掛かろう。俺は全体マネジメント、まずはスケジュール作成や必要な設備やモノの調達をするから、志水は実装方式と機能の選定を、中村は志水と連携しながら他に何か追加したほうがいい機能がないかの企画、北海はデザイン、大成はみんなのサポートをよろしく!」とチームメンバーに合った的確な指示を出す。

 みんながやるべきことが明確になって、これから頑張ろうとモチベーションアップしたと同時に、それぞれのアニマも活気づいてパートナーに「一緒に頑張ろう」と声をかけた。アニマはパートナーの心と呼応し、応援や時には相談にのってくれることはもちろん、手となり足となってパートナーの作業を手伝うこともしてくれる。逆にいうとパートナーの心映してしまうため、嘘をつくことはできないし、パートナーが落ち込んでいると弱って姿を変えてしまうこともある。僕のアニマに限っては、どんなに僕が元気な時でも、灰色の小さなやつで、喋りかけてくることもないが…


 そんなこんなで滝澤先生からの指示を受けた火曜日から3日経った金曜日の夕方に、非の打ち所がない程、多機能で万人受けするデザインのデジタルペンが完成した。チームメンバーみんなで最終検証をしたが特に新たなバグもなく、期日の1週間後の火曜までにまだ2日の猶予を残していたため、祝杯でもあげにいこうかと盛り上がっていた。けれど、僕はそんな気分にはなれなかった。この3日間、みんなについていこうと必死で、他社製品の調査やユーザ視点での意見出し、デザイン/構築のサポート、機能検証をしてきた。けれど、全てがサポートばかりで、自分が主となって推進したものは何一つない。そんな僕がみんなと一緒に祝杯なんてあげていいのだろうか。そもそも、僕は何のためにここにいるんだと、また花冠を被った幼馴染の笑顔が頭を過った。と同時に僕の灰色の小さなやつがこっちをじっと見ていた。決してなにかを言うわけではないが、なにかを伝えようとしている…と思った直後に、急に頭の中にあの時の想いがフラッシュバックした。「そうだ、あの時の花冠では、いつかお嫁さんになりたいという彼女の想いを尊重して、彼女の好きな植物を使って、彼女のためを想って、今の僕にできる最大限のモノづくりをしたんだ…」と。

 その時、僕は自然にみんなに問いかけていた。「これって誰のためのペンなんだろう…」と。


 「ドタドタ……ドタドタドタ……ガラッ」

 時刻は18時を過ぎようとしている。僕たちは急いで職員室に駆け込んだ。すると、なんとか帰り支度をしている滝澤先生を捕まえることができた。

 「滝澤先生!課題のペン制作のターゲットユーザを教えてください。」と全員が声を揃えた。


 ——それから僕たちは、残り期間が迫っている中、急いでターゲットユーザに合わせた企画~制作、検証までを総がかりで実施をした。土日も合わせて不眠不休で作業をした結果、約束の水曜の朝になった時、なんとか完成した。


 「それでは、各グループに制作発表をしてもらいます。まずは太橋グループ…」滝澤先生の号令の下、次々に各グループが自分たちの作ったペンのコンセプト~制作過程、提供価値をアピールした。そして最後に久保川グループ。

 「我々は、ユーザに寄り添ったペンを作りました。まずはユーザにヒアリングをし、どういった背景・目的でペンを使っているのか、今使っている中でどこに課題を感じているのかをとことん聞き、課題を解決するための対応案をすり合わせ、そのユーザの要望に沿った世界に一つだけのペンです。その方は、教師をしている傍らで著者として本を執筆・出版しており、出版社からあがってきたデザイン原稿に手を入れるときにデジタルペンを使っているそうです。現在のペンでは、書き心地が合わずに書いた文字が誤認されてしまうことと、ペンから呼び出す機能が乏しいことに課題を感じておられました。そこで我々は、その方の手にあったペンのサイズ・フォルム、その方の筆圧や速度にあったペンの素材を追求すること、また、デザイン原稿に手を入れるときに使用しているアプリ内の機能を調べ、どういった機能を呼び出せるとよいのかを追求し、このペンを作り上げました。と、偉そうに語りましたが、私たちは実は一度自分たちの思い思いのペンを作ってしまい、ユーザのことを全く考えられていませんでした。ですが、ユズの一言のおかげで、ユーザに寄り添うモノづくりの大切さを思い出して、改めて制作に取り掛かることができました。私たちはこの経験を決して忘れることなく、この先のモノづくりに励んでいくことを誓うとともに、まずはこのペンが使う方の執筆業に貢献し、執筆された本が一人でも多くの読者の方に届き、社会が発展することを心から祈っています。」と堂々にプレゼンを終えた久保川。

 久保川の言葉を聞きながら、ユズの頭で土日の記憶が過った。滝澤先生に直接ヒアリングをして、先生の手の大きさを測って、何度も何度も書き心地を確かめて——正直もう二度とやりたくないと思うくらいしんどかった。でも、それ以上に楽しかった。


 最後に滝澤先生より総評があった。「今回のお題のペンは私のため、ひいては私の本の読者のためのペンでした。クリエーターは基本的に作ることが好きです。好きだからこそ、制作作業に没頭してしまいますが、それを使う人のことをしっかりと考えられているのはほんの一握りです。今回、私はペンを作れと言いましたが、あえて誰がどのような目的で使うのか、詳細は語りませんでした。そこに疑問を持ち、私に問いかけをしてきたのは久保川チームだけです。久保川が言ったように、私はこの久保川チームのペンを使って、一人でも多くの読者に私の知識を届けて、社会を発展させていきたいと思うことができました。皆さん、モノづくりの先に使う人がいることを忘れないでください。そして、その人がそのモノを使うことで、世界にどれだけのインパクトを与えられることができるかを考えてください。そうでないと世界を変えられるモノづくりはできません。」


 ——制作発表後の下校途中。僕は久保川と二人で歩いていた。「今回のグループワークで大切な問いかけをしてくれて本当にありがとう!」とお礼を言う久保川に対して、「僕は問いかけただけで、実際にモノを実現できたのは、久保川のリーダーシップとみんなのクリエイティブがあったからだよ。」と返すユズ。

 すると久保川が、「俺決めた!これからはお前と一緒に、世界を変えるためのモノづくりをする!あと久保川って言うのはなしな!これからは友心で。よろしくな、ユズ!」

 友に心とかいてユウシン…友達想いな友心にぴったりな名前だなと思ったユズだった。

第二話を読んでいただきありがとうございます。今回は友心と親友になるきっかけを描写しました。友心は、リーダーシップに溢れていますが、一方で名前の通り、友人に寄り添って進むことができる素敵な子です。これからも二人の行く末を見守っていただけると嬉しいです。

また、アニマに関しての情報も一部追加してます。新たに喋ることと実際に作業をサポートしてくれることが分かりましたが、今回は友心にフィーチャーをしたため、制作過程におけるアニマとの具体的な連携を事細かに描写することができませんでした。まだまだアニマには秘められた力があるので、それは乞うご期待いただければと思います。

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