1-1 彼氏と友人
セトカ。
それが前世日本人だったネスティー・ラテンタール嬢の名前。
セトカは関東地方の北部にある県で生まれ育ち、両親と姉と弟に挟まれた三人兄弟の真ん中だった。姉と弟は生まれ育った市の〇〇娘を務めた母に似て丸顔で目鼻立ちのくっきりした可愛さがあった。
セトカは市役所勤めの父親に似て二人に比べると平凡だった。小さな頃は二人と比べてしまい卑屈な気持ちになったが、年頃になると弟が「可愛い」 と言われることが嫌だ、と不貞腐れるようになり、姉の方は好きな人には振り向いてもらえないのに、好きでもない男性からアプローチされて困惑しており。
そんな二人を見ていたら「可愛い」 ことも苦労があるのだ、と学んだセトカは、顔よりも中身重視ということでセトカなりに勉強やスポーツを頑張っていた。
姉が美術部で弟がサッカー部。セトカ自身は卓球部の部長を務めていて、姉と弟が本人の意図しない所で異性トラブルや友情トラブルに巻き込まれ、度々セトカも巻き込まれてしまいがちになったせいか、強い責任感を持つようになった。この性格が部長という役職にも遺憾無く発揮されるようになっていたので、まぁ向いていたのかもしれない。
そんなセトカは中高共に卓球部員であり続け、高校卒業後の進路は都内にある大学へ進学する事になっていた。家族仲は物凄く良いわけではないが悪くもない普通ではあったけれど一足先に都内に出て行った姉を追いかけて上京し、姉と共に暮らす……予定だった。
両親が姉に打診し姉も了承を得ていたというのに、いざ上京してみたら姉から彼氏と同棲するから同居出来ない、とセトカは言われてしまう。つまり上京した途端に家なしになりかけた。
とはいえ、姉も自分が都合良すぎることを言った自覚はあったため、セトカの住まいを一緒に探し、保証人にもなったので、セトカはあわや家なしの身だったところを回避出来た。
その後のセトカの人生は大学は単位を二つ程落としたが、必修科目ではなかったので卒業単位数は足りたから無事にストレートで卒業。
その後、最初に就職した会社は大企業ではあったがよく言えば上昇思考の強い先輩と、持ち前の責任感の強さから対立してしまい、無視という分かり易いイジメを受けて半年程で退職。数ヶ月程新しい仕事は見つからないし、半年では貯金も大したことがないため、コンビニバイトで収入を得て家賃滞納回避に光熱水費滞納回避で食費を含む嗜好品を削りに削り、新しい衣料や化粧品等も購買欲を抑えに抑え、前職とは全く違う職種で中小企業に採用が決まった。
仕事を覚えるのは大変だったが、理不尽なことは言われることはなく……というより仕事量に対して人手不足なのか、折角入った新人をイビリだのパワハラだので辞めさせるつもりはない、とばかりに対人関係は悪くなかった。
ベタベタする関係を先輩後輩上司部下同僚……誰も築いていなかったが、密な関係を築くより仕事量が多いことが上だった、と思われた。そんな会社に勤めて何とかかんとか一人前だと思われるようになった頃は、既に三十路手前だった。
結婚は考えていなかったし、相手もいなかったが、休日に高校時代からの親友が結婚をするから夫となる人を紹介したい、と言って上京してくれてランチをご馳走しながら馴れ初めなどに花を咲かせた。その後親友とその恋人と別れたセトカは、居酒屋チェーン店で夕食を兼ねて軽く呑もうとフラフラしていた所で、大学時代の友人とバッタリ出会った。
久しぶりの再会で二人で居酒屋チェーン店へ行き、呑みながら近況報告をしていた所へ、この居酒屋チェーン店でアルバイトをしていた男性がセトカの大学時代の友人の知人だった。セトカの大学時代の友人の名をメイコ。メイコの大学時代のサークルの後輩であった知人の男性の名をコウセイ。
コウセイは軽いノリの男でセトカにグイグイと押して連絡先をゲット。セトカは普段ならこういった男は苦手だったが酒を呑んだことで警戒心が緩んでしまったのか、連絡先を教えてしまっていた。
セトカは翌日にはコウセイに連絡先を教えたことをすっかり忘れてしまい、その日の夜にコウセイから連絡が来て、ようやく思い出した程だった。
で。
軽いノリのコウセイに押されまくって、いつの間にか付き合うことになっていた。コウセイは四つ年下で、セトカの弟より年下なので話が合うのか不安ではあった。
しかしセトカの気持ちとは裏腹に誰にでも愛想が良く好かれやすいコウセイとの付き合いは意外と上手くいった。なんだかんだで二年は経っていた。その間に、コウセイとメイコと三人で或いは二人から紹介された人達と何人かで食事をしたり飲みに行ったり……ということがあった。
セトカは楽しく付き合っていたとは思えたが、どうにもコウセイの落ち着きの無さについていけない時もあって、結婚は考えていなかったが、かと言って落ち着いて交際がしたくなったセトカには、人付き合いが多く金銭面の荒さもあるコウセイとは別れた方がいいのかもしれない、と考えていた。
多分、二年で三十路を過ぎてセトカ自身も背伸びをして大人振る必要がなくなり等身大の自分を受け入れられるようになったことで心境の変化があったのだろう。
コウセイが悪いわけではなく、セトカとコウセイの考え方というか価値観の問題であって人ならば良くある問題の一つだった。
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