4-2 公爵様のお知恵拝借
「さて。あれだね、辛気臭い話はやめよう。公爵様の案について話そうよ」
ちょっとしんみりしていたらヘルムさんが首を振る。
「それはアズが来るまで待ってもらっていいですか? あ、それと公爵様、夢の話について何か言ってました?」
「それね、ご令嬢の話に驚いてた。てっきりオズバルド様と婚約して死ぬなんて夢を見たなんて言ったら怒るかなって思ってたのに。
真剣な顔をして聞いて。こんな話を聞いてしまったのなら、良い案を出さないとダメかなって」
成る程。やっぱりロイスデン公爵様もオーデ侯爵家の夢の件は知っていた、と。
まぁヘルムさんが首を傾げているところを見るに、説明はしなかったということだろう。
「じゃあ上手く追放される案がある、ということですね」
「うん。公爵様の案は俺も納得」
アズはそろそろ来るだろうから、そうしたら二人で説明してもらおう。一度に説明する方がヘルムさんもいいだろうし。
そこへアズがやって来て、ヘルムさんを見て息を呑む顔をした後、みるみるうちに相貌を怒りへと変化させた。
「あなたがこんな朝早くから居ることも許せませんが、十二歳とはいえ、立派な淑女であらせられるお嬢様のあられもない姿を平然と見ているとは何事ですか!
今すぐ出て行きなさい!」
アズの剣幕にヘルムさんは、あっ……という顔をしてから誤魔化し笑いで一度出て行き。
アズは
「お嬢様もお嬢様です! 淑女たるもの、濫りに殿方にあられもない姿を見せるものではありません!」
と私にまで怒る。
言っていることは至極尤もなことなので、粛々とお小言をもらっておいた。
選ぶ服も殆ど無いけれど、アズが丁寧にドレスもワンピースも手入れをしてくれるから着回せるし(アズの給金で新しいワンピースを購入しようとしたので断っているから、せめてこれくらいは……とのことらしい)、髪の毛の手入れも宝物を扱うように優しい手つきでしてくれるし、濡れたハンカチをこっそりポケットに忍ばせて顔を拭うように渡してくれるアズが大好きだから、なんだかんだで怒られているのに顔を綻ばせてしまう。
「お嬢様、ニヤニヤしないで聞いてます?」
あ、バレた。
慌てて神妙な顔をして聞いていると頷けば胡乱な目付きをされたけれど、それ以上は何も言わず、手早く身支度を整えてくれた後、改めてヘルムさんを部屋に通して、公爵様の提案を聞くことにした。
「先ず、言いおくと。公爵様が仰るには、こういうことは簡易なのが良い、らしい。下手に緻密に考えるといざっていう時に予期せぬことが起こって対応に苦慮するからって」
ふむ?
ああ、あれか。例えば何かを企画する。
綿密に計画を立てて、さぁ実行しようとなった時にトラブルが起きた。その対処方法について苦慮するということ。
それが例えば例年ある企画でトラブルも予測がつくなら対処方法も予測出来るけれど、新たな企画だったらトラブルも未知数だから予測が出来ない、と。
……いや、どちらかと言えば、例年と同じ企画だからと思い込んでトラブルも予測したものだけ、と考えていたら、例年とは違うトラブルが発生して予測した対処しか考えていなかったから、予測とは違うトラブルの対処に苦慮する、というのに近い……?
どちらにせよ、トラブルが起きた時に柔軟に対応が出来るように敢えて緻密な計画を立てず、大筋の計画だけで後は流れに身を任せる……ということかな。
「分かりました」
アズも私と同じ考えに至ったのか、頷いてる。ヘルムさんが私を見たので私も頷くと、公爵様の案を教えてくれた。
「一つ。専属侍女殿がご令嬢から離れること」
「は?」
最初からそんなことを言われアズが目を丸くする。
そんなアズに構わずヘルムさんは続ける。
「一つ。ご令嬢が病気になること」
今のところ、アズとクリスとフォールのおかげで何とか生き延びて病気もしてない私ですけど? どうやって?
そこでヘルムさんが口を閉ざした。
ええと。
もしや、それだけですか?
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