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夜営と魔法講義

2016.2.13

レイアウト修正

 ウルフ達との戦いの場から馬車で1時間ほど移動し、道路からそれて湖のほとりへ。今晩は、ここで夜営することになった。

 馬車での移動中、アルヴァさんの家族からお礼を言われ、その後お互いに自己紹介をした。そして、夜営地についてから冒険者3人組と挨拶を交わし、そのまま野営の手伝いをしている。

 どうやら夜間の魔物除けのために、簡易の結界を設置しているようだ。2人1組になって、魔石のはまった金属の杭を、等間隔に地面に打ちこんでいく。

「そっちの大きい方の杭をかしてくれ」

 トレヴァーさんから言われ、手に持っている杭を渡す。彼は3人の中でリーダー挌であり、メイン武器は槍でLv35、アルヴァさんの元同僚らしい。

 杭を地面に打ち付けながら、話してくる。

「それにしても、今日は助かった。正直、護衛をしながらあのウルフの数は、さすがに無理だからな」

「崖の上にいたら、目の前を駆け抜けるウルフの群れが見えたので。ちょうど降りるか迷っていたところだったので、一歩間違えば囲まれていたのは自分の方でした」

「そいつは危なかったな。そういえば、アルヴァから護衛の話をされてなかったか?」

「はい。ただ何分経験不足なので、力になれるかどうかわからず、旅の同行って形になると思います」

 正直に言っておく。

「そっか…そうだな、日雇いでなく出来高って手もあると思うがな」

「出来高…1体倒したらいくら、みたいな感じですか?」

「そうだ。ランクによっても変わると思うが。まあ、そこら辺の判断はアルヴァが考えるだろう。雇い主はあいつだからな」

「そうですね」

 とりあえずは、金より街に着くことが重要だから、向こうに任せるとしよう。

「一応、魔物に襲われた時のために確認するが、レベルと得意な物は何だ?」

 ステータスを確認すると、フロッグとウルフの戦闘でレベルが上昇していた。

ケンヤ・モリ  Lv7 HP:68 MP:85

 物攻:16 魔攻:21 防御:17 魔防:21

 必殺:16 素早:17 技能:17 幸運:17

「レベルは7です。戦闘はまだ3回しか経験してませんが、補助魔法と空間魔法が使えます。MP量は少し高めだと思います」

 補助魔法は見られているし、空間魔法も【格納庫】を使えばすぐに気づかれるだろうから、正直に伝えておく。

「レベル7!?それしかないのか?戦闘経験も3回なんてほとんどないじゃないか」

「はい。だから護衛の話は遠慮しました」

「にしたって、さっきの戦い方はレベル7って感じじゃないな。7じゃウルフ3匹なんて普通は無理だ」

「補助魔法で、ステータス上げまくりましたし。誰にも気づかれず、完全に奇襲でしたから」

 ウルフと戦って7になったはずだから、戦う前はさらに低かった、なんていうと益々驚くだろうから、そこは伏せておくことにする。それじゃなくても、呆れた顔しているし。

「食事の用意できましたー」

 アリシアさんが呼んでいる。こちらも簡易結界の設置が終わったので食事を食べに行くことにした。


 食事の内容は、固いパンとシチューだった。味の方は、旅路用の物と考えれば、まあまあといったところだ。携帯食料と比べれば雲泥の差がある。

 旅では、生の野菜や肉などは持ち運べない。重くてかさばるし、保存ができないから。自分のような【格納庫】や、もしくは《魔法鞄》のようなアイテムがあれば、事情も変わってきそうだが。シチューは、乾燥させた具と固形ルーをお湯で煮込むような感じで作っていた。

 ただ、水に関しては豊富にあるようだ。水自体を運ぶ必要はなく、水魔法の使い手がいるか、水の魔石を持っていればすむ。《魔法鞄》は高級アイテムで、皆が持てる物でもないが、水の魔石はそれと比べて安価らしい。かさばり重量のある水を常備しないで旅ができるのは、都合がいいだろう。


 食事中は、主にアリシアさんとティルダさんと、魔法について話をすることになった。護衛のティルダさんは、Lv23の水魔法の使い手でチャーミングな女性だ。夕食時は大抵、アリシアさんに魔法の基礎を教えているとの事。今日は、自分も一緒に聞かせてもらうことにした。

「魔法は10種の系統があるけれど、それぞれ特徴があるの。例えば、火・水・風・雷・地の5種類は直接攻撃したり、防御したりする魔法なのは知ってるわね」

「「はい」」

 2人で返事をする。

「この5種は、込めるMP量で威力を調整できるの。例えば初級の【水玉】にMPを多めに込めて、中級の【水弾】並みの威力にしたりとか」

「その場合、初めから【水弾】を唱えればいいのでは?」

 アリシアさんが質問する。

「確かにそうね、まぁ今のは簡単な例だから。それじゃ、問題。中級の【水矢】は、同じ中級の【水弾】に威力は劣るけど、飛ぶスピードが速いのね。では【水矢】にMPを多く込めるとどうなる?」

「【水弾】並みの威力を発揮できる?」

「正解。スピードの速い【水弾】って感じね。ついでに【水弾】にMPを多く込めると、上級【水砲】の威力に近づけることも可能。私の場合は、まだ上級魔法が唱えられないから有効な手段なの」

「そうなんですね」

 アリシアさんが納得したようにうなずく。気になることがあるので、こちらも質問してみる。

「それは、他の5種でも有効ですか?」

「いいえ、これが有効なのは他には光・闇の2種類ね。ただ、先の5種と比べると、効果は下がると言われているわ」

「あ、光もそうなんですね」

 光が使えるアリシアさんは嬉しそうだ。逆に、俺の方は有効でないのか。

「光魔法は、HP・MPの回復や、精神異常、身体異常の回復と耐性を付与、あとは生活に便利な魔法があるわね。闇魔法の方は、精神異常をかける魔法がほとんどね」

「精神異常と身体異常ですか?」

 あまり聞きなれない分類なので聞いてみる。

「精神異常は、睡眠・憂鬱・盲目・魅了・混乱・幻覚・悪夢があるわね。身体異常は、睡眠・毒・酸・麻痺・石化・気絶」

 睡眠が両方にあったような、と思っていたらアリシアさんが質問。

「睡眠はどちらにも入るのですか?」

「催眠術や歌とかで眠らせるのが精神的、薬で眠らせるのが身体的」

「その場合、身体回復系【回復】と精神浄化系【浄化】を使い分ける必要がありますか?」

「どちらでも有効よ。ただ、同じ眠るのでも【悪夢】は【浄化】ね」

「どうしてですか?」

「【悪夢】は、【睡眠】と【混乱】を合わせた状態だから、【回復】で起こすと、混乱状態で敵味方関係なく攻撃始めるから」

 起こすってことは、普通は近くにいるわけだから、真っ先に攻撃されるのか…

「次は、空間魔法と補助魔法についてね」

 ティルダさんが、こちらを向く。

「魔力のセンス、質が高いと効果が上昇するわ」

「魔力の質が高いとですか?」

「例えば、【索敵】半径50メートルの場合、質が低い人だと10MP必要だけど、質が高い人の場合は1MPですむらしいわ」

「10分の1ですか」

「そう。個々の魔法によって上昇率は変わるけど、比較的空間魔法は効果高めで、補助魔法は効果低めの傾向があるわ」

「確認なんですけど、前半に説明した方法は、MPを込めれば威力があげられる、つまり誰でもできる方法。後半の魔法は、MP消費量を減らせるが、魔力のセンスがないとできない。この解釈で大丈夫ですか?」

「大体そんなところね」

 そこで、ティルダさんがアリシアさんに向く。

「補助魔法よりもさらに効果が低めだけど、光と闇も少し効果があると言われているわ」

「MP量と魔力のセンス、量と質の両方を意識して唱えなければいけないってことですか?」

「そう。光と闇魔法をコントロールするのは、他の魔法よりも難しいって事」

「…頑張ります」

アリシアさんが、少しつまってから返事をしていた。

 ついでなので、最後に残ったもう一つについて聞いてみる。

「刻印魔法は、どちらも関係ないのですか?」

「ええ、どちらも関係ないわ」

 こちらに向きながら、話が続く。

「他の魔法は、戦闘やその補助を目的としたものが多いのに対して、刻印魔法は主にアイテムを作ったりするのがメインの非戦闘魔法ね。魔力消費量が他の魔法より多いから、ある程度レベルが上がって、MP総量が増えてからでないと使えないわ」

「非戦闘魔法、戦闘が得意でないのに、戦ってレベルを上げないとダメ?」

「そう、刻印魔法だけしか持っていないとレベル上げが大変ってこと。さらに、使い手が少ないので、アイテム生産量はさらに下がり、結果魔道具は高くなるわね」

 そうか、魔道具が高く売れるなら、それも視野に入れておこう。


 食事も終わり、出されたお茶を飲む。さすがに野外で夜営中だけに、上品なカップでなく、武骨なコップだった。

『あれ、この香りは〈フォレスト〉で飲んだハーブティーに似ている』

 そこで、ふと思い出す。喫茶〈フォレスト〉で読んだ本、似た香りのハーブティー、もらったアイテム、アリシアさんに似た有紗さん。あまりにこちらと関連する点が多い〈フォレスト〉、いったい何なのだろうか。

 そこへ、お茶を配り終わったアリシアさんが戻ってくる。

「このお茶、香りがいいですね」

「はい、カモミールといって、リラックス効果があるそうですよ」

『地球と一緒の名前?』

 思わず、つぶやきそうになるが、コップを口に運びごまかす。

「何だか、ホッとする香りです」

「そうですね。ここ十数年で流行したハーブティーの1つです。確かエアルス教の神官様がはじめられたとか」

「そうなんですか」

 宗教系の知識は、〈フォレスト〉で読んだことはなかったな。今度、時間のある時にでも聞いてみよう。今は、別の気になることを聞いてみる。

「少し聞いてもいいですか?」

「何ですか?」

「アリシアさんの兄弟って、一緒にいるお兄さんと妹さんだけ?」

「はい、そうですが?」

 不思議そうな顔でこちらを見る。

「親戚で、少し年上の人っている?」

「いえ、いませんけど。どうかしましたか?」

 いないか。しかし、何て言えばいいだろう。地球の話をするわけもいかないし。

「あー、えっと、今いち記憶が曖昧なんだけど、以前アリシアさんに似た人に会ったような気がして。ただ、もう少し年齢が上だったような気がしたから」

「そうですか。親戚も特にいませんし、似た人ですか…」

 怪訝な顔をされるので、適当にごまかすことにする。

「アリシアー」

 ちょうど良いタイミングで、アリシアさんのお母さんの呼ぶ声が聞こえる。

「あ、ちょっと行ってきます」

 アリシアさんが、呼ばれた方に向かう。

 残された俺は、焚き火を見ながら、残りのハーブティーを飲む。

 1人になると、慣れない戦いや環境変化で、疲れがたまっていたことに気付く。

『そういえば、日本で起きていた時間も合わせれば、20時間以上は起きているな』

 そんなことを考えたら、余計に疲労感が押し寄せてきた。

 ゆらゆらと揺れる火に、ハーブティーの香り。心地よい感覚に誘われるように、眠りに落ちていった。

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