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救援

視点変更があります。

**********

が、境目に入ります。


2016.2.13

レイアウト修正

 飛び降りながら考える。ウルフはフロッグと違い強い。今の俺では簡単に倒せない。攻撃、防御、素早さを底上げしても、不意打ちで2匹が限界だろうか。不意打ち後は、囲まれる前に【浮遊】でウルフを飛び越え合流が良いか。後は、向こうの人達がどのくらい倒せるかだが。

 走りながら武器を変形、《ハンマースピア》の形態にする。ウルフのスピードが速いので、ただ後ろについていくだけだと、どんどん置いて行かれそうだ。戦闘になりそうな位置を予測し、進路を少し修正。身を低くしながら移動する。

 向こうの人達もウルフに気付いたようだ。魔法で応戦をする音が聞こえる。

 不意打ちをウルフにするとして、気づかれずに接近できるだろうか。草の背丈が高めの場所を移動するとはいえ、ウルフの気配察知はかなり高そうだ。最初の状況からしても、ウルフが気づいた距離は、少なくても300メートルはあったと思う。

 顔を少し上げ様子を確認し、そこで気づく。風、真正面から強めの風が吹いていた。多分臭いで感知していたのだろう。こちらは風下、臭いは届かないし、強めの風で音も届きにくい。上手く近づけば、多分気づかれない。

【索敵】で敵味方の位置を把握しながら、今まで以上に身を低くし慎重に移動を続けた。


**********


「ウルフ接近!数7、8…10!」

 護衛のタイタスさんの緊迫した声が響いた。

「10だと!」

 トレヴァーさんが、驚いたような声をあげる。

 荷台にいた私は、すぐに自分の弓とそばにあった槍をつかみ、御者台に出る。

「アリシア!お前はここで弓の準備」

 御者台の父が手綱を兄に渡し、槍を受け取りながら声をかけてくる。母は荷台の後ろ側に行く。

 馬にのった護衛の3人は冒険者、御者台の父も元は冒険者で槍を使う。母と兄は剣で、私が弓を使うが、私達3人は気休め程度。妹はまだ戦闘ができないので、荷台に隠れている。8人中4人が、実質の戦闘員。

「【水弾ウォーターショット】」

 ティルダさんの魔法が、ウルフを牽制する。距離があるから当たりはしないが、ウルフのスピードが落ちる。私の弓の射程にはまだ入らない。

 ウルフは馬の前方に回り込もうと6匹が進路を変え、こちらには残りの4匹がむかって来た。

「【トリプル・水矢ウォーターアロー】」

 ティルダさんが、前方に回り込もうとするウルフに3本の水の矢を飛ばす。さっきのより鋭く速い魔法が、1匹のウルフを貫く。そして、近くを走る2匹の動きも鈍った。

「当たって!」

 そのうちの1匹に、矢を射かける。急所は外したけれど、後ろ脚に命中し地面に転がった。馬車で横を抜けながら、父が槍でとどめを刺す。

「どけ!」

 トレヴァーさんが前方集団に馬で突撃し、1匹を倒し、1匹の進行を抑えたが、2匹が道路上に飛び出してきた。

 馬が怯え進路を変えようとし、兄が必死に手綱を制御する。しかし、わずかに曲がってしまい、道路わきの草原へ。途端に馬車が減速し、あっという間にウルフ7匹に囲まれ止まってしまった。

 後衛のティルダさんは、すばやく馬車の後方に乗り込み、兄も後方へ移動して、後方は元々いた母も入れて3人。御者台には父と私で、私も短剣を握る。左側面にはトレヴァーさんとタイタスさんが並ぶ。

 対してウルフは左前1・左側面4・後方2と、攻撃しやすい側面に集中してきた。前方も後方も素人交じりのため、側面に人員を回すことができない。

「こいつはやべーな」

 タイタスさんの声が聞こえる。

「なんでこんなに群れているの」

 ティルダさんも、魔力水を飲みながらつぶやく。

 通常、野生の狼と違い、魔物のウルフは単独で行動することが多い。群れを作っても多くて3、4匹。中級冒険者にとっては、1匹1匹はそこまで大した脅威にならない。ただし、群れとなると話は別で、その連携は厄介だ。数が増えるほど脅威は増す。そして、今回のこの数。このままじゃ…

 ウルフ達が一斉に動き出す。そのときだった。

 誰も警戒していなかった、右側面から2匹のウルフが突如現れ、私に飛びかかってきた。


**********


『【攻撃アタック】【防御ガード】【俊足ファースト】』

 小声で呪文を唱え、一気に飛び出す。狙いは、馬車前方に陣取る1匹。

 当たる、当たらないは気にせずに、とにかく全速力で前へ進み、刃で突きを放つ。多少目標はずれたものの、後ろ脚に刺さりそのまま切り飛ばす。転がるウルフの横を走り抜けながら、体へ刃を切りつける。

 1匹目を倒すと、御者台の2人へ向かって走りながら、側面のウルフに対し魔法をかける。

「【ダブル・鈍足スロウ】」

 魔法の効果範囲にいたウルフ2匹に【鈍足】をかけ、そのまま2匹を無視して疾走する。馬を斜めに飛び越えながら、御者台の少女の脇へ飛び込む。

「【弱体ウィーク】」

 彼らは気づいていなかったのだろう。馬車右側面に、2匹のウルフが潜んでいたのを。

 崖の上から12匹を見かけて、【索敵】で2匹が大回りしているのを知っていた俺は、少女に飛びかかろうとしていた2匹に突っ込んだ。

 彼女の肩に食いつく寸前のウルフに、防御力低下の魔法をかけてから一気に刺し貫く。そいつの生死を確認する間もなく、もう1匹には空中でそのまま体当り。草原に転がる勢いで、武器を手放してしまう。それでも素早く起き上がりながら、

「【俊足ファースト】」

 と、さらに素早さを上げ後方にジャンプ。飛びかかってきたウルフを避ける。一撃を外したウルフが、再度かみつこうと顎を開き喰らいついてくる。【格納庫】から錆びた鉄の塊、《アイアンアックス(壊)》をとりだし口に突っ込む。重みで頭の下がったウルフの首筋へ蹴りを放つ。アックスの重みと蹴りの勢いで、首の骨を折り絶命する。【弱体】をかけた方のウルフも消えていたので、武器を拾いながら状況を確認。奇襲と【鈍足】が効いたのだろうか。残りのウルフ達も倒されていた。


 戦闘が終わったと同時に、安心から体の力が抜け座り込む。さすがに息が荒い。補助魔法を乱発したとはいえ、よく倒せたものだと思う。

「大丈夫ですか?」

 座り込んでいる俺を見て、少女が慌てて駆けつけてくる。その顔を見て、

「有紗さん?」

 思わず、小声でつぶやいてしまう。彼女の耳につぶやきは、明確に聞こえなかったのだろう。

「?」

 心配そうな顔と不思議そうな顔が混在している。

 彼女の顔は、有紗さんに似ていた。

「私、アリシアと申します」

「ケンヤ・モリです」

 名前も似ているな、と思う。

 髪の色はワインレッドで違うが、腰までのさらっとしたストレート、理知的な黒い瞳に優しげな顔、ほとんどの特徴が有紗さんに非常に似ていた。年齢は3、4歳ほど幼そうだが。

 アリシアと名乗る少女は、こちらを軽く確認すると、

「ちょっと失礼します。【治癒ヒール】」

 傷は手と頬に擦り傷と、戦闘の激しさに比べて随分と軽傷だった。治療の必要もないと思ったが、遠慮する間もなく回復魔法をかけてくれた。

 しばらく治療を受けながら、なんとなく彼女の顔を見ていたが、治療が終わったのだろう。光が収まり彼女がこちらを向く。

「回復ありがとう」

「いえ、こちらこそ危ない所を助けていただき、ありがとうございます」

「光魔法が使えるんですね」

「はい。攻撃はできませんが、こういったことは得意です」

【治癒】は光魔法初級でHP回復。光魔法は回復や耐性向上、生活関連がほとんどで、攻撃系はほぼない。

「ある意味俺と似ていますね。俺は補助魔法と空間魔法ですが、同じように攻撃系は使えませんから」

 そんな会話をしていると、1人の男性がこちらに近づいてくる。座っていた俺は、立ち上がると男性へ向き合った。

「先ほどは、危ない所を助けていただき、そして娘を守っていただき、ありがとうございました。」

 深々と頭を下げる男性。

「いえ、こちらも偶然通りかかったものですから。気にしないでください」

 こちらとしても、初めて会えた異世界人。機会を無駄にしたくなかったし。

 男性が頭を上げ、口を開く

「私、ブルーム商会のアルヴァ・ブルームと申します」

「ケンヤ・モリ、旅人です」

 異世界人です、と名乗るわけもいかず後半は適当にした。

「冒険者でなく、旅人…ですか?」

「えぇ、田舎から出てきたばかりで、まだ冒険者と言えるほどの力はありませんので」

「ご謙遜を。私も昔は冒険者をしておりましたが、先ほどは見事でした。ところで、差支えなければ聞きたいのですが」

「何でしょうか?」

「これからどちらに向かわれるのでしょうか?」

 それは正直俺も知りたい。どこへ行けばいいのだろう。

「とりあえず…街ですかね?」

「どこのですか?」

「実は明確な目的地がないもので。田舎から出てきたばかりで、人がそれなりに多くいて、暮らしていけるような場所を探しております」

 できれば連れて行ってほしいなぁ、と心の中で思う。どうやって、話を持っていこうかと考えていると、

「そうですか。もしよろしければ、私達はこれからエクレストン街へ向かうところなのですが、護衛として一緒に来ていただけないでしょうか?」

 願ってもない提案をされた。

「ご一緒させて頂けるのはありがたいのですが、未熟者で護衛ができるかとなると心配なのですが」

 無責任に、護衛ができますとはさすがに言えない。多少はお金もあるし、払ってでも連れて行ってもらいたいところだ。そこへ

「お父様、護衛の件はとりあえず後にしませんか。街へ行きたいとおっしゃっておりますし。私の命の恩人です、連れて行ってあげれば良いと思います。」

「それもそうだな」

 アリシアさんのおかげで、何とか街まで行けそうだ。

「それでは、エクレストン街までご一緒されるということでよろしいですか?」

「はい、お願いします」

 こうしてなんとか無事に、異世界生活を始めるための、足がかりを作ることができた。

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