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アイテム収集

 木立を抜けると、視界が広がり小さな川があった。そして川の両脇をまばらに木々が茂り、さらにその外側は高い崖で囲まれている。【索敵】の地図では、木々の間を進んでいけば行き止まりになっているが、その崖の上には道路があることがわかった。魔法を使えばその道路にでられそうだ。

 水音を聞きながら、ゆっくりと進む。川には魚がいたが、使えそうな道具がない。どうしようか迷ったが、あきらめることに。そして、そのままさらに先に進むと、まばらな木の陰に黒い大きな塊を発見。【索敵】には何も映っていないし、生き物ではないようだったが警戒しながら進む。

 近づいて確認すると、それは大破した馬車のようなものだった。原型をとどめていないが、車輪のようなものが転がっているところを見ると間違いないだろう。状況から察するに、崖から落ちたと思われる。崩れ具合から、それなりに時も経っているようだ。

 使えるものがないか、調べてみることにするが、その前に戦闘で減ったMPを回復させることにする。

 以前〈フォレスト〉で読んだ魔法関係の本では、魔力は何もしないでも少しずつ回復すると書いてあった。大気中にある魔力を、体内に取り込むらしい。個人差はあるが、10分で総MPの5~7%ほどらしい。俺の場合は【魔力回復】スキルの影響だろうか、10分で10%ほど回復しているようだった。それでも【索敵】を継続してかけ直し、【格納庫】を常時発動しているので、消費も多いし回復量も下がっている。

「【魔力変換マナ・チェンジ】」

 足元に魔方の光が浮かぶ。光は範囲を広げ、半径10メートルの円を作り、淡く光り続ける。

 補助魔法初級、消費MPは魔法を唱える人でなく、掛けられる人が負担する、ちょと変則的な魔法。今回は自分にかけるので、普通に自分のMPが減るだけだが。効果は魔法の回復量が増加するのだが、回復に10分かかる上、半径10メートル以内の場所にいなければならない。今回のような、行動範囲が狭い場合や休憩時など、使用タイミングを選ぶ魔法だ。

 魔法の起動を確認し、魔力を回復しながら調査を開始する。人骨とか出てきたらどうしようと思ったが、そういった物は出てこなかった。

 雨ざらしにされていたためだろう。金属製の物はほとんど錆びて、使えそうなものはなかった。木箱などもあったが、落下の衝撃で壊れたのだろう。中の物は、やはり使い物にならない。それでも、壊れた道具箱のような物の中に、水用、火用、灯り用の生活に使用する魔石があった。旅をしながら使っていたのだろうか。

 魔石以外は見つからないかとあきらめかけた時、木箱の屑の下から大きめの塊が出てきた。よく見ると馬車の一部、御者台のようだ。荷台側は色々積んであった為、重たかったのだろう、破損が激しい。それと比べると、御者台側は原型を留めている。

 調べてみると、座席の下が物入れになっているようだ。それもそこそこ大きい。蓋をこじ開けてみると、中に水などは入らなかったようで、それなりに保存状態は良かった。どうやら積み荷でなく、生活用品などの売り物以外が入っているようだった。

 護身用と思われる鞘付のナイフ、木製の食器と小さな金属鍋、裁縫道具、縄などは使えそうだ。着替えやタオル、毛布などの布製品は劣化していたが、火を起こす時に使えそうだ。保存食もさすがに無理そうだが、獣の罠くらいには使えるだろうか。

 さらに底板の下にもスペースがあり、こちらは高価な物が隠してあった。

 道具箱と同じ魔石が3種類、これは予備だろうか。それから小箱が2つあり、1つには皮袋に入った金貨と少ないながらも貴金属が入っていた。そしてもう1つの箱には、【鑑定】スキルでもわからない未知のアイテムが入っていた。

 卵の形をした金属の塊といった感じだろう。大きさは文庫本ぐらいで、そのサイズにしては重さもそれなりにある。色は黒く鈍い光沢があり、頂点には魔石とは違う宝石、黒真珠のような物がはまっている。

 軽く叩いたりしたが特に反応もなく、色々な角度から見ても、頂点の宝石以外は特徴もない。人差し指で宝石を押したり撫でたりしたが、やはり反応は無かった。魔力を注ぎ込むイメージもしてみたが変化なし。

「なんだろう?」

 扱いに困り、人差し指と中指でトンットトンット、リズミカルに軽く叩いていると、わずかに反応をみせた。

「あれ?」

 リズム?叩く回数?何が原因だろうと、宝石部分を見ると軽く汚れている。指先を確認すると、先ほどまでの作業でけがをしていたのだろう。中指の先から血が滲んでいた。

「もしかして血か?」

 指先をつまんで血を少し出し、宝石に触れる。すると宝石部分が反応し、中に沈んでいき見えなくなる。赤い鈍い輝きが卵型の金属を包み、わずかな振動が続く。30秒ほど反応があったが、その後振動は止まり輝きも消える。そのまま1分ほど待つが、反応は消えたままで、宝石も潜ったままだ。

「説明書はないのか?」

 思わずつぶやき、もう一度底板の下を見ようとしたその時、

『使イ方ノ説明ヲ望マレマスカ?』

 と、頭に語りかける声が。

「しゃべった!?」

『声ハダセマセンノデ、念話ヲ使用シテイマス』

「ねっ、ね、念話?ええっと…名前は?生物?性別は?」

 驚きで何を聞けば分からず、とっさに思いつく言葉を並べる。

『9・6・32番、分類ハ武器、ヨッテ性別ハアリマセン。アト、声モ必要アリマセン』

「お、おう」

 よく、わからないが武器らしい。

『ワカリマセンカ?』

「あ、いやそれは独り言だ。気にしないでくれ」

『ハイ』

 心の声が聞こえてしまうらしい。

『…』

「あ、何か聞こえた?」

『心ノ声ガ聞コエテシマウラシイ、ト』

 会話のタイミングが難しい。とりあえず、こちらも念話?を使用してみる。

『心の声が聞こえるみたいだけど、こっちから君に話しかけているのと、俺が一人で考えていることの区別ってできる?』

『今マデノ会話ノ波長デ、大体ワカリマシタ』

『おお、優秀だ』

『アリガトウゴザイマス』

『そしたら、君に話しかけている以外のことは、聞かないようにすることは?』

『可能デス、実施シマスカ』

『お願い』

『ワカリマシタ』

 ふぅ、これで会話しやすくなる。会話もそうだが、四六時中心を読まれるのは、精神上よくない。これなら、変なことを考えても平気だし一安心だ。

『まずは、そうだな。君は武器だそうだけど、君の持ち主は誰?』

『アナタデス』

『俺?』

『ハイ、私ニ血ヲ与エテクレマシタ』

『えっと、それは偶然拾って、さらに偶然血が付いただけなんだけど?』

 偶然血が付いた後、意識して血を付けはしたが…

『血ヲ与エテクレタ方ガゴ主人デス。ゴ主人ガ亡クナルマデ、変更ハデキマセン』

『本当は、誰かご主人になる予定だった人がいるのでは?』

『私ノ意識ハ今目覚メマシタ。他ニ知ッテイル人ハイマセン』

『作ってくれた人は?』

『知リマセン』

 俺の物ってことでいいのだろうか?

『1ツ聞イテモイイデスカ?』

『何?』

『オ名前ヲ教エテクダサイ』

『ケンヤ モリ』

『ケンヤ様、コレカラヨロシクオ願イシマス』

『本当に俺でいいの?』

『ハイ』

 どんな武器かはわからないが、意識がある時点で優秀な感じがするのだが…気になることが何点かあるので聞いてみる事にする。

『確認があるんだけどいい?』

『何デショウカ?』

『まず、血って定期的に必要?』

『起動時ノミナノデ、今後ハ必要アリマセン』

 毎日吸われるとかじゃなくて良かった。

『次に、俺は君を使うけれど、君は俺に何をさせる?もしくは何を望む?』

『私ハゴ主人ニ武器トシテ使ワレルノミデス。何モサセマセンシ、望ミモシマセン。付ケ加エルナラ、食事モ必要アリマセン』

『何もいらないと?』

『大気中ニ魔力サエアレバ、武器トシテ機能シマス』

 デメリットは特に無いようだ。それなら断る必要もないだろう。多少不安もあるが、考えても何も状況が変わらなそうだし、今のところはこのまま受け入れるのが良いだろう。

『わかった、よろしく頼む』

『ハイ、ヨロシクオ願イシマス』


『それじゃ、まずは君の名前を決めようか?』

 相棒を、番号で呼ぶのも味気ない。

『9・6・32番デハナイノデスカ?』

『多分それは名前じゃなくて、番号だね。それに、キュー・ロク・サンジュウニバンは長いし呼びづらいから』

『ワカリマシタ』

『何か読んでほしい名前はある?』

『ワカリマセン。私ニハ、武器トシテノ自分シカ知ラズ、コノ世界ノコトヲ含メ何モ知リマセンカラ』

 ふむ、武器としての自分しか知らないときたか。この世界の事とか聞けたら助かると思ったのだが。まぁ、その辺は置いといて、先に名前を決めてしまおう。

『9・6・32…語呂でいけばクロって所か、色も黒だし。かなり安直だが。あとは黒い物…烏、海苔…あまり良さそうな名前は思い浮かばないな』

『クロ、デスカ?意味ハ?』

『俺の知っている国で、9はク、6はロクと読む。後は、君の色は黒と言う』

『32は使わないのですか?』

『32…ミニ、ミツ…クロミツ、黒蜜?いや、それもどうか…』

『クロミツ、デスカ?』

『いや。それにするのは…』

『意味ハ?』

『甘い液で、食べ物にかけたりする』

『甘イハヨクワカリマセンガ、シックリクルヨウナ気ガシマス』

『もしかして、気に入った?』

『ハイ』

 本人が気に入ったのなら…いいのか?

『クロミツ、黒ミツ、黒蜜…』

 発音が綺麗になっている。

『それじゃ、《黒蜜》これからよろしく』

『はい、よろしくお願いします』


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