表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/57

同居生活

2016.3.22

シエナの名前訂正

「ただいま」

「「「おかえりなさい」」」

 家のあちこちから返事が返ってくる。何か、家に帰ってきたって感じで良いなぁ。今まで宿や〈ブラウン〉では、『戻りました』だったからな。

 玄関で迎えてくれたのは、元気なセルマと、その背後に半分隠れているソニア。それと、木箱に座った〈素材屋〉のおばあさんだった。

「お邪魔してるよ」

「はい」

 子供達だけだから、面倒でも見てくれていたのだろうか?それとも、何か用事があるのだろうか?疑問は、俺が問いかける前に、おばあさんの口から直接話される。

「この子ら2人、時々うちの手伝いに貸してくれるかい?」

「セルマとソニアですか?」

「そうじゃ」

 話を聞いて見ると、〈素材屋〉の扱う物は雑多で数が多い。片付けや整理に、何かと手がかかるらしい。それで、ここに居る子達に色々な物を見せて、その反応を試したらしい。その結果、セルマは直感が鋭く、ソニアは覚えが良く目利きもそれなり。手伝いに使えそうと判断したとの事。

「何か急用があっても、ここならすぐ呼び出せ便利じゃし。そっちも、多少の稼ぎは欲しいだろう」

「それはもう、願ってもない話です」

 この2人は、あまり知らないとこに出すには不安だった。まだ小さいし、当面家事専門にしようと思っていたのだが、〈素材屋〉なら安心してお願いできる。

「2人はそれでいい?」

「うん」

 セルマが返事をして、ソニアは頷いている。2人の意思を確認したところで、俺は近くに置いてあった木箱を持ってきた。おばあさんの前に座って、軽く打ち合わせをするためだ。

 すると、セルマは木箱に膝立ちし、俺に後ろからのしかかってくる。早く懐いてくれるのはうれしいが、それにしても全く物怖じしない子だ。残されたソニアは、おろおろ迷っている。

「ここっ」

 セルマが、ソニアに指示を出したのは、俺の膝の上だった。物怖じしないというより、遠慮という物を知らないみたいだ。指示されたソニアは、困った顔をしている。

 どうしようか迷ったが、ソニアは大人しくてセルマと逆の性格。多少強引でも、こちらから近づいてあげた方が良いだろう。今回は、セルマの案に乗ることにする。

「おいで」

 膝を叩いて呼ぶ。遠慮がちに、寄りかかるように浅く座るソニアを、引き寄せ深く座らせる。どんな表情をしているかはわからないが、徐々に慣れさせればいいだろう。

「仕事内容についてですが…」

 おばあさんと、手伝いの内容や条件について話を始めた。


 おばあさんが帰って周りを見ると、いつのまにかステラ、シエナ、ソールが集まっていた。俺は木箱に座ったまま、話し始める。

「どこから聞いていたかは知らないけど、とりあえずセルマとソニアは、向かいの〈素材屋〉さんで働くことが決まった」

 3人は頷く。

「ソールは、シエナとギルドへ行くことは聞いているか?」

「うん」

「そうか。2人でなら心配ないと思うから、これから頑張ってくれ」

「わかった」

 後は、何か伝えることあったかなと考えていると、ステラの機嫌が少し悪そうなのに気づき、視線を向ける。

「いつまで、そのまま座ってるんですか?」

 気づくと、ソニアを軽く抱え込んでいた。

「もしかして嫌だった?」

 ソニアに聞くと、体を横に傾けこちらを向き、ゆっくり首を振る。いきなり膝上の荒療治が効いたのか、もう普通にできるようだ。

 そのままの体勢で、頭を軽く撫でながら、会話を再開する。

「何か聞いておくような事はあった?」

「掃除と片付けは、だいたい終わりました。後は…」

 シエナが代表して話してくれる。あった方が良い物や、無くてもいいがあると便利な物など。一通り聞いた後にお金を渡して、自分達の判断で購入させることにした。決して、面倒で丸投げにしたわけではない。

「そういえば、ご飯の準備は?」

 試しに取ってきた食材もあるので聞いて見る。

「これから作ります」

 シエナを中心に、ここに居るメンバーで作るらしい。

「これって使えると思う?」

 セルマとソニアにどいてもらうと、さやえんどうやジャガイモを取り出す。【鑑定】は便利で、腐ってるものや毒物はある程度わかるので、味以外は問題ないはず。

「なんか大きさが変ですね」

「街の外に自生していた物だからね。使えそう?」

「平気だと思います」

 シエナはそう答えると、年下3人に台所へ持っていくよう指示した。

「ところで、それはどうしたんですか?」

 シエナの指先が、俺の左腕を指している。よく見ると、服に穴が開いていた。どうやら蟻酸がかかっていたらしい。そういえば、蟻酸が飛んできたとき、後方で溶ける音がした割に、匂いをすぐに感じていたな。あれは、俺の服が溶けていたのか。

「戦闘で、少し溶けたようだな」

「食事の後に貸してください。直しますので」

 シエナはそう言うと、台所へと向かった。

「ステラは料理しないの?」

「危ないことしているんですか?」

 この場に残っているので聞くと、心配そうな顔で聞いてくる。

「冒険者って、魔物と戦うのが基本だからね。このくらいは普通だよ」

「だけど」

「まぁ、俺が未熟なのもあるけど、大丈夫。危険なことにならないよう、対策はしているから」

 そう言って、頭を撫でる。

「本当に?」

「痛いのは嫌いだしね」

 考えてみたら、大怪我らしきものは一度も負った事ないかなら。もしそうなったら、戦闘続行できるのだろうか。やっぱり、パーティーは組んだ方が良いのかな。

「あの…」

 考え込んでいたため、必要以上に頭を撫でまわしていたようだ。

「あ、ごめん」

 あわてて手を放す。

「料理してきます」

 少しうれしそうに、台所へと行ってしまった。

『最初の不機嫌そうなのは何だったんだろう?』

 機嫌が直ったなら問題ないかと、そのまま男子部屋へと向かった。


 4人全員揃っていたので、さっきのように必要な事などを聞こうと思ったのだが、

「シエナから話は聞きましたか?」

 サイラムから、そんな言葉が返ってきた。

「さっき、玄関で聞いたけど」

「なら、大丈夫です」

 何が大丈夫なんだろうと思って聞いてみると、室内でのことに関しては、シエナが仕切っているそうだ。それは、ここに来る前からだったそうで、4人とも任せているそうだ。

「シエナって、家事が得意なのか?」

「それもありますが…」

 どうも歯切れが悪い。少しずつ聞いてみると、どうやら怒ると怖いらしい。ただ、よくよく聞いてみると、男女で同じ部屋にいたので、そこら辺を円滑に暮らしていくためのようだ。身だしなみとか、掃除の事とかの感覚の違いや、着替えの時の事とか、女性陣の年上として、色々気を配っていただけなのだろう。

「とりあえず、この部屋に関しては自由に使っていい。ただ、あまり汚くしたり、散らかしたりはするなよ。その場合は、シエナに介入してもらう事になるからな」

 俺の言葉に、前半はうれしそうな顔をしたが、シエナの名前が出ると、あわてて頷いていた。

 ご飯まで、まだ時間がありそうなので、もう1つ話をしておくことにする。

「スパイクとセス。2人には、明日から働いてもらう事になる」

 2人に向けて言うと、いきなりの事に驚いている。

「力仕事になるだろうから、2人が適任と思ってな。俺がお世話になっている武器屋さんだから、ちゃんとしていて心配はいらない。お願いして良いか?」

「「はい」」

「良い返事だ。明日2人とも連れて行くから。その後は、多分交代で行ってもらう事になる。向こうの言う事を聞いて、頑張ってくれ」

 そう言ってから、〈ドーン武具店〉の事や、ドーンさん、ドナさんの事を話す。2人とも、新しい事が出来そうなので興味津々だ。

「普通にいけば、年齢的にサイラスとシムに仕事をまわすところなんだけどな」

「力仕事なら、2人の方が良いと思います」

 シムが冷静に答えてくる。

「また、探してくるから、慌てず待っててくれ。もちろん、自分でやりたい事とかあったら、挑戦してみてくれてもいいし」

 俺の言葉に、戸惑った表情を見せる。スラムにいて、街中の事はあまり知らないから、仕事なんて言われても、何ができるか思い浮かばないのだろう。

「どんな仕事が良いなんてわからないだろうから、焦る必要はない。当面は、家でやれる事もあるからな」

 2人に、皮剥ぎやその他の雑用をまかせればいいだろう。

 その後は、サイラス達の得意な事を聞いたり、ここに居ないステラ達のことを聞いてみたりと、雑談を中心にして時間をつぶして、ご飯までの時間を過ごした。


『やっぱり、こうなるよな』

 連日〈ブラウン〉の手の込んだ料理を食べ続けて、すっかり舌が肥えてしまい、それが当たり前のようになっていた。

 茹でたジャガイモ、数種の野菜と肉を炒めたもの。味付けは薄めで、おそらく塩のみだろう。飲み物は水、かなり素朴な食事風景だ。これでも、ステラ達にとっては贅沢な食事であろう。美味しそうに食べている。

『金はあるけど、無駄に贅沢を覚えさせるのも良くない。彼らの稼ぎに合った食事にしないといけないしな』

 当面は、この食事に付き合うのも良いだろう。ただ、多少の調味料は購入した方が良さそうだ。

 この世界の食材、野菜は匂いが強めで、繊維があるのか少し固い。肉も少し臭みがある。多分、品種改良などが進んでいないのだろう。自然に近いままの食材のようだ。素朴な料理のおかげで、気づくことができた。

『日本産の野菜が【格納庫】にあったよな』

 余裕が出てきたら、栽培してみるのも面白そうだ。上手くすれば売れるかもしれない。

『あとは、お茶が欲しい』

 家で飲むならほうじ茶が落ち着くが、紅茶、ハーブティー何でもいい。できればノンカフェインが良いが、そんな概念この世界には無いだろうな。ただの水、これだけは避けたい。

 そんな風に考えながら食べていると、シエナとステラがこちらに視線を向けている。

「お口に合いませんか?」

 シエナが心配そうに聞いてくる。

「いや、これが普通なんだよね。〈ブラウン〉の食事を1週間食べてたから忘れていたよ」

 苦笑しながら、ステラに言う。

「それは、わかります」

「これはこれで美味しいよ」

 シエナに笑いかける。あまり色々話すと、言い訳っぽくなりそうだ。ここは、俺の感覚を理解してくれたステラに任せた方が、うまく落ち着くだろう。そのまま、食事を続けることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ