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同居人

 朝になり、最後の警備が終わる。

 最初の馬車警護のように状況に流されたのではなく、ギルドに勧められたとはいえ、自分で決断して、初めて受けた依頼。振り返ると、色々なことがあったというか、あり過ぎたというか。感慨深いものがある。

 達成感があって、やりがいもあったと思う。苦労したし、ハプニングもあったけど、楽しかったから、これからもやってみてもいいと思えた。それと比べると、捜索は割の良いアルバイトみたいな感じかな。気が向いた時に、ちょっとやってみるのがいいだろう。

 とりあえず、今後の依頼予定は組んでないので、狩りで少し鍛えたい。警備依頼で1週間、全く街から出ていないので、狩りをしていない。冒険者不足で魔物が増えているそうだし、ゴブリンの状況も気になる。

 ついでに、獣を捕まえたら、スラム暮らしの彼らなら、皮剥ぎなどの解体もできるかもいしれない。食材も手に入るし、素材と合わせて一石二鳥だろう。俺自身は、まだ解体ができそうにないが。

 街の外での狩りもいいが、それと同時に、街中の情報も集めなくてはいけない。

 9人分は無理とはいえ、いくつかの仕事を見つけなければならない。子供だけに、どこまでできるかわからないけど、年長組ならそろそろできる仕事があると思う。この世界では、一応成人扱いは15歳なので、就業年齢は低めだ。

 可能性のありそうな場所は、今のところは〈ドーン武具店〉の手伝い。ギルドの雑用はあるだろうか?ステラを抜いた8人の、特徴や適性を知らないといけないな。

 そして、仕事も大事だが、当面は家の片づけや、生活用品の調達なんかもあるか。まだ家具なんかは必要ないだろうが。昨日、椅子の代わりに、適当な大きさの木箱を、多めに買っておいた。椅子代わりに当面使えるし、高いところへの踏み台としても安定している。小さい子もいるから、重宝するだろう。部屋もきれいになって、椅子などの家具を買う余裕もできたら、本来の用途で木箱として使うもよし。重ねて、棚にするのもありだな。

 そう考えると、やる事はたくさんありそうだ。今日からは、今まで以上に忙しくなりそうだと、自分に活を入れた。


「ご苦労様でした」

「ウェイターとして時々働かない?」

「また来てください」

「4日後に待ってるからね」

 4人から、様々な言葉を投げかけられ、〈ブラウン〉を後にする。ステラは今後お世話になるし、俺も時々顔を出すことになるだろう。会えなくなるわけじゃないので、あっさりとした挨拶で別れる。

 ステラと並んで、ギルドに向かう。今回の報告と報酬の受け取り、それと先日の捜索報酬も貰わないと。ステラを見たら、ディアナさんが追及してきそうなので、悪いけどギルドの前で待っていてもらう事にしよう。そう思っていたのだが…

「おはようございます」

「…」

 ギルド入り口を掃除していたディアナさんに、見つかってしまった。誤魔化すために、さわやかに挨拶をしてみたのだが、無言の視線が痛い。

「あまり睨むと、この子が怯えてしまいますよ」

 俺の言葉に、あわてて口を開く。

「おはよう。朝から、可愛い女の子を連れて何をしているのかしら」

「普通に、ギルドへ報告に来ただけですが」

「その子を連れて?何から聞けばいいのやら…」

 呆れ顔で言われてしまう。

「普通に報告を聞いてもらえると助かります。その後、先日の捜索報酬も貰えるとうれしいですね」

「この子の説明は?」

「この前言った、南西エリアで探索をお願いしたグループの1人ですよ」

「そういえば、そんなこと言っていたわね。で、それだけ?」

「とりあえず、ここで立ち話続けますか?」

「それもそうね。中に入りましょう」

 俺の言葉にディアナさんも頷き、ステラをつれてギルドに入った。

 まずは、ジョージさんから預かった手紙を渡し、依頼の達成を確認してもらう。そして、先日の探索分とまとめて報酬をもらった。それを、横にいるステラに見せ、話しかける。

「家を買った時のお金や、色々買った費用は、ここから貰うから。余ったお金は、危ないから、そのまま預かっておく。お金を預かっていることは、当面皆には内緒で」

「わかりました。でも、そのお金だけだと、家の購入に足りなくないですか?」

「俺も住むわけだし、当然その分は負担するから」

 そんな会話をしていると、ディアナさんが何か聞きたそうにしている。

「どうしました?」

「家を買ったって聞こえたのだけれど?」

「言いましたよ。一緒に住む事になってます。俺を含めて10人ですね」

 いつもなら、人数を言わずに2人ですって匂わせて、からかうところだが、今日は真面目な話もあるのでやめておく。

「ふぅ。色々と言いたいことあるけど、いちいち気にしてると、いつものように振り回されそうだからやめておくわ」

 諦めた表情で、そう言われてしまった。その反応を、ちょっと残念に思いつつも、納得してくれたと解釈する事にして、本題に入らせてもらう。

「ところで、前回ギルドに雑用ありませんかって話をしましたが、正式に確認してもらう事は可能ですか?さっきのような、掃除とか何でもいいんで」

「それなら、もう聞いておいたわよ」

「本当ですか?」

 世間話程度で、きちんと言ってなかったので、確認してくれてるとは思ってなかった。

「ええ。簡単な雑用だから、たいした額は出せないけど」

「いえ。ありがとうございます」

「一応ギルドとしても、4つも面倒案件を片付けてもらっているからね。話は通し易かったわよ」

 仕事内容や、条件を詳しく聞く。別段、誰でもできそうな内容ではあったが、読み書きができる子がいると助かるとの事だった。

「その子は?」

「ステラは、もう、働き口が決まっています。別の子になりますね」

 俺の返事に、ステラも頷いている。

「ステラっていうのね。その子は、しっかりしてそうね」

「そうですね。何かあった時のために、覚えていてあげてください」

 俺の言葉に、ディアナさんが頷く。

「そういえば名乗っていなかったわね。私は、ディアナ。よろしくね」

「よろしくお願いします」

 最初は、ディアナさんに見つかると面倒だな、なんて思っていたけど、2人の顔合せができて良かった。

「ケンヤが何かやったら、遠慮なく言いに来ていいからね」

 …前言撤回すべきかな。

 ステラは、きょとんとして俺を見つめてくる。

「大丈夫。俺がステラに、変なことしたことあった?」

 ふるふると首を振る。

「ディアナさんには悪いですが、このように信用してもらえているので、そんな事にはなりませんよ」

「その信頼が、違う方向に向かないことを祈っているわ」

 そう言って、ディアナさんは苦笑していた。


 自宅に着くと、皆で掃除や後片付けをしていた。こちらで、指示した以上に、色々と片付けてくれている。自分達で考えてやっていたようだ。そういった点では、それなりにしっかりしている。これなら、禁止事項さえしっかり伝えておけば、あとは放っておいても大丈夫そうだ。

 彼らの今の恰好は、スラムで着ていた服ではない。昨日買った、作業用の安服に着替えている。風呂も使わせたので、全体的に皆すっきりして、印象が変わっていた。服装をもう少し良い物にすれば、どの子でもギルドに出せるだろう。

 進捗状況を確認した後、年下組には作業を続行させ、年上組を集めて話し合いをする。まずは、全員の特徴把握からだ。

 リーダーのサイラス。年齢13歳で、何でもそつなくこなすまとめ役。逆に言えば、特別何か得意な事があるわけでもない。まぁ、目立ったところはないが、それでも平均的に能力を備えているようだ。

 シムは年齢12歳。頭は良いが、グループ内の男性5人の中では1番小柄。その為、体力が男性陣で1番低い。肉体労働には向かなそうだが、その分頭脳労働でもしてもらおう。

 シエナは年齢13歳。元々スラムの出身ではないらしい。そのため、読み書きが1番できるそうだ。ソールの姉であり、この2人は揃って器用らしい。

 そして、ステラ12歳。俺と一緒に行動していたので、真面目で優しい娘というのは十分知っている。サイラス同様、何でもそつなくこなせるだろう。

 この4人が年上組。まぁ年上と言っても、グループを半分に分けたら上になるというだけで、残りの子も10歳と11歳。はっきりいって、ほとんど変わりはない。

 スパイクは牛人族の11歳。のんびり屋の力持ち。グループ内で1番体格も良く、力仕事に向いている。

 セスは虎人族で、スパイクと同じ11歳。こちらも力持ちだが、ちょっとおおざっぱだったりする。力だけでなく、全般的に体力に優れている。

 ソールは10歳でグループ内で1番年下。器用であり、それと姉との連携は抜群。2人で組ませて作業をさせれば、グループ内で誰が組んでもかなわないそうだ。

 そして、後の残り2人は女の子。セルマ11歳。元気でムードメーカ的存在。勘が鋭く考えるより、体を動かすのが好きなタイプ。

 ソニアは10歳だが、ソールよりはお姉さん。大人しく引っ込み思案。記憶力が良く、目利きにも優れていて、素材集めでは活躍していたらしい。

 こうやって聞いて見ると、似通った能力があったり、性格の差や相性など、仕事をする時の組み合わせには、気を使った方が良だそうだな。基本的に、仲は皆良いそうなので問題無いが、効率が大分変ってきそうだ。

 大体把握できたところで、まずギルドへの手伝いを誰にするか決める。とはいっても、もうほとんど決まったようなものだが。

「ギルドには、シエナとソールで決まりだな」

 条件の中に、2人1組、読み書きできると助かるというのがあった。

「そうですね」

 ステラも賛同してくれた。

「私で大丈夫でしょうか」

 シエナの方は、どんなことになるか心配のようだ。

「ギルドには、信頼できる人が2人いる。俺からお願いしておくから大丈夫。何かあったら言ってもらえば対応するし、続けられなそうなら、その時は誰かと変わってもいい。最初は緊張するだろうけど、ここで頑張ってもらえるとうれしいかな」

 俺がそう言ってシエナを見ると、決心してくれたようで頷いてくれた。

 その後は、各自が使う部屋割りを行う。1階は何平方メートルあるだろうか。畳でいうと、16畳分くらいと12畳くらいの部屋がある。16畳を男子部屋に割り当てる。12畳の部屋の近くには台所があるので、共同部屋にして食事はここでする事に決めた。1階には他にお風呂とトイレがある。

 2階は12、3畳くらいの少し歪な形をした部屋と20畳の2部屋だけ。俺の部屋を20畳にして、もう1つを女子部屋にした。まあ、俺がこの家の費用の半分近くを出すことにしているので、このくらいの部屋をもらってもいいだろう。

 一通り決めることが終わると、夕食用のお金をステラに預け、武器屋へ《銀苦無》を取りに行くことにした。ついでに、仕事が無いか聞いておこう。その後は、武器の具合を確かめつつ、狩りをするのが良いかと思い、夕方には帰ると伝えて家を出た。

スラム出身の子達(カッコは年齢)

男:サイラス(13)、シム(12)、スパイク(11)、セス(11)、ソール(10)

女:シエナ(13)、ステラ(12)、セルマ(11)、ソニア(10)

スラムのSで名前を統一しています。

上から順にサシスセソ(シスセソ)の順です。

Sから始まるのは、今のところ他にはショーナだけなので、間違えにくいかと思います。

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