街巡り
2016.3.22
シエナの名前訂正
今回も無事に、夜間警備が終わる。内容は昨日と全く同じで、平和そのものだった
時間がもったいなかったので、端切れの革を使い、ちょっとした小物を作っていた。露店の鞄屋さんから、使い物にならないのを譲ってもらったのが役に立った。
作業が終わって、後片付けをする。皆が下りてくるまでは、まだ少しあるので、頭の中を整理して、今日の予定を確認しておく事にした。
『朝一にスラム、その後ギルドで先日の報酬を受け取って、ドーンさんのところにも行かなきゃいけないんだよな。正午くらいには帰ってこられるか』
予定としてはこんなものだろう。街中をぐるぐる回る感じになりそうだ。歩くのは構わないが、心配な事が少しある。
『ステラをディアナさんやドナさんに合わせたら、何か言われそうだな。とはいえ、外で待ってろとは言えないし。どうするのが良いのだろうか』
朝っぱらから、思わぬ悩みに額を抑える。
「おはようございま、す?」
「おはよう…って大丈夫?」
考え事をしている間に、仲良く2人が下りてきた。ついでに変なところを見られて、心配させてしまったようだ。
「おはようございます。ちょっと考え事していただけで、問題ないです」
俺の言葉に、ショーナさんは納得してくれたのだが、ステラは浮かぬ顔をしている。しょうがないので、近づいて頭を撫でながら念押しする。
「考え事は、俺個人の事。ステラ達の事じゃないから、そんな顔しない」
そんな俺らの様子を見て、ショーナさんは笑いながら、話してくる。
「もし良かったら今日、ステラに店の手伝いさせたいんだけど良いですか?」
「俺より先に、ジョージさんに確認した方が良いと思いますけど?」
「マスターは説得します」
「何もしゃべらず、じーっと見つめるのは、説得って言いませんよ?」
昨日の事を思い出して言う。
「…何の事?」
「きちんとした理由を言って、ジョージさんを説得できるなら、俺は構いません」
「わかりました。考えます」
「…もしかして、何も考えてなかった?」
最後の俺の問いに、笑って誤魔化しながら、ショーナさんは居なくなる。
「ステラはそれで良い?」
「はい」
頷いてくる頭をもう一度撫でながら、ステラの髪に目を向ける。昨日と同じ、二つ結びにしているのだが、髪を留める紐がボロボロだ。
「ちょと、じっとしていて」
俺は、暇つぶしに作っていた革の髪留めで、片方の髪をまとめる。
「この紐、外してもいい?」
「はい、構いませんけど…」
一応、確認してから紐をほどく。ステラ自身は、よく見えない位置なので、何をしているかわからず、戸惑っているようだ。
紐を外して、髪留めの状態を確認するが、滑って外れるような心配はなさそうだ。これなら大丈夫だろう。
「あの、何をしているんですか?」
俺は、もう1つの髪留めを見せる。
「紐が、かなり傷んでいたからね。服を変えて、少し目立っていたから、作ってみた」
そう言って、もう片方の髪も留めた。
「ありがとうございます。その、向こうで見てきてもいいですか?」
嬉しそうにお礼を言う。そして、早く鏡で見たいのだろうか、そわそわしていた。
「構わないよ」
俺の言葉に、ショーナさんの向かった先へと行くステラ。少しして、2人の楽しそうな話し声が聞こえてきた。
ステラを置いていくことが決まって、こちらの小さな悩みも解決。朝食が食べ終わり、出かける準備をする。
「不規則な生活で疲れませんか?」
レベッカさんが聞いてくる。
ここ数日を思い出してみる。寝る時間は1日おきに、午前と午後を繰り返していた。
「言われてみれば、確かに不規則ですね」
「気づいてなかったんですね。あまり無理しないでくださいよ」
「心配かけてすいません」
「いえ。それと、これを持って行って下さい」
籠を1つ渡される。
「これは?」
「サンドウィッチが入ってます。みんなに上げてください」
「すいません」
「マスターにも許可はもらってます。ただし、今日だけですよ」
「わかりました。ありがとうございます」
レベッカさんも、昔そういう境遇だったって言っていたしな。
ありがたく受け取ると、スラムへ向かった。
待ち合わせの場所に着くと、サイラス、ソールそれとソールの姉のシエナの3人がいた。そして、驚いたことに彼らは2匹の犬を連れてきていた。やはり、地元の人間に任せて正解だったようだ。
ただ、2匹を預かろうとしたとき、一悶着あった。ステラを連れてこなかったのは、失敗だったようだ。無事であることを証明するために、明日必ず連れてくることを約束して、なんとか説得した。
その後は、レベッカさんにもらったサンドウィッチに助けられたというべきか。
近くで隠れていた子に、出て来るよう促し、一緒に食べさせた。
「美味しい」
みんな、ガツガツと食べている。
「今日だけ特別だからな。ステラが良い子にしているからもらえた。あいつに感謝して、戻ってくるまで頑張ってくれ」
そう言って、俺自身もステラとの約束を守るために、大銅貨を渡しておく。気まずかった雰囲気が、大分良くなったところで、明日の約束をして別れた。
ギルドに到着早々、ディアナさんに声をかける。
「おはようございます」
「2度あることは3度あるっていうしね。捜索成功したと聞いても、もう驚かないわよ」
俺が引いている1匹を見て言ってくる。
「それは、残念です。なら4度目があったらどうします?」
「十分あり得るから、変な賭けはしないわ」
面白味のない、堅実な答えが返ってきた。段々俺の扱いに慣れてきたような気がする。
「それじゃ、早速確認をお願いしますか」
しょうがないので、そう言いながら、俺は背中にしょっている籠を見せた。その動作を見て、ひきつった笑みを浮かべながら、ディアナさんは個室へ案内してくれた。
確認が終わり、多分この2匹も間違いないだろうと判断してくる。
「この2匹はどこで捕まえたの?」
「南西エリアです」
「入ったの?」
言葉に、少し棘がある。入らないよう、忠告されていたしな。
「正確には、南西エリアの人に探させました。ちょっとした縁ができたので」
「危険な事はしてないのよね?」
「危険ではないですね。ちょっと面倒な事にはなりましたけど」
俺の返答に、眉を寄せる。
「詳しく聞いてもいいかしら?」
いいかしらという割には、話せって雰囲気を醸し出している。しょうがないので、色々と端折って適当に誤魔化しながら説明する。
「それで、これからどうするの?」
「まだ何も。参考までに、ギルドに子供でもできるような事ってありますか。正式な依頼じゃなくて、お小遣いがもらえる程度のお手伝いで」
「ギルドの雑用って事なら、無くは無いかも。私には、判断できないけど」
「そうですか」
今の捜索の仕事は、そう長くは続かないし、色々なところで聞いてみるのも良いかもな。
「そういえば、一昨日の報奨金でてますか?」
「えぇ。準備できてるわよ」
話を変えるため、先日の件について聞いた。
「合わせて、11万Gね。羨ましいわ」
先日の、猫騒動を思い出す。今回の件も考えると、捜索は実入りが良いが、俺にとっては鬼門かもしれないなと苦笑した。
「来たわね」
〈ドーン武具店〉に入ると、ドナさんがいきなり声をかけてくる。
「こんにちは。どんな感じですか?」
「準備はできてるわ。そこでちょっと待ってて」
先日の部屋を指さし、奥にドーンさんを呼びに行った。
席に座ると、2人がすぐに戻ってくる。
「待ってたぞ」
「よろしくお願いします」
ドーンさんが、早速という感じで、机の上に二つ置く。
「《銀腕輪》、《銀苦無》の原型だな。これを確認してもらって、バランスの調整や、本格的な刃付けや彫を入れていく。とりあえず、実際に身に着けてくれ」
言われるままに、腕に装着したり、手に持ったり、槍の穂先にしてみた。さらに、店内に人がいなかったので、軽く突きや振り下ろしをしたりして、感想を伝える。
「了解した。調整があまり必要無さそうだから、《銀苦無》は2日後に仕上がるな。そっちはどうだ?」
「私の方は《銀腕輪》が4日後《白鋼耳飾》が6日後です」
「そうすると、1日おきに来ればいいですね」
「忙しかったら、まとめてでも構わないぞ」
「わかりました。その日の状況で考えます」
今日の用事は、これで終わり。〈ブラウン〉に戻って仮眠をとるには少し早いか。どこか寄るところが無いか思案する。
そんな時、2人の会話に、気になる話題が出てきた。
「ドナ、〈素材屋〉に行って、仕入れを頼む」
「わかりました」
「〈素材屋〉って何ですか?」
名前のとおりなのだろうが、ドーンさんが利用しているなら、気になるお店だ。
「行ってみる?」
ドナさんが聞いてくる。
「少し興味があります」
「だったら、〈銀苦無〉に使えそうな物が無いか見てくるといい。ドナが分かるから教えてもらえ」
「ありがとうございます」
ただの時間つぶしと思っていたが、意外に有益な時間を過ごせそうだ。
〈素材屋〉は、南西部のスラムとの境目近くにある。廃品の中に貴重な素材があったりするらしく、スラムとも多少の交流があるらしい。ドナさんと会話をしながら向かう。
「そういえば、さっき革手袋していたわね」
「これですか」
【格納庫】から《指貫手袋》を取り出す。《銀苦無》を持つ時に、感触を確かめていた。手にしっくりと馴染んで、とても扱い易かったのを思い出す。
「見せてもらって良い?」
俺は渡しながら、質問する。
「誰が作ったか、心当たりがあるのでは?」
ドナさんは、笑って返事をしてこない。
「ありがとうございます」
「何の事?」
「いつ、アリシアさんに言ったんですか?タイミング的に、そんな余裕は無かったと思うんですが」
ドナさんの言い分を無視して続けると、そこまで隠すつもりもなかったようで、話してくれる。
「武器の作成依頼を受けた後にね。アルヴァさんの代わりに商品を受け取りに来た」
「アリシアさんが、こういうの得意って知っていたんですか?」
「腰のポーチを見た時に気づいてね。それとなく話を振ってみたんだけど…あの短期間で、ここまで作れるとは思わなかった」
感心したように言うと、こちらに返してきた。
「そうだったんですね。ありがとうございます」
「いや、お礼ならこちらの方こそね」
「何かありました?」
依頼以外に何もした覚えはないのだが。
「今回の依頼のおかげで、お店の売り上げが大分上がってね。設備投資ができて、今まで以上に作れるようになったわ」
「お互いに良かったって事ですね」
「そうね。このままいけば、増産のために雑用係が必要になるかも」
「鍛冶をさせるんですか?」
「店番がメインかな。もっとも内は商品が重いから、力がある程度ないとできないわね」
「確かに、斧とか重いですもんね」
タイタスさんが、ぶんぶんと振り回しているのを思い出す。
「今、斧って言って、タイタスさん思い浮かべたでしょ」
「わかりましたか?」
「力って言ったら、なんとなく浮かんでくるから。でも、あそこまでなくても大丈夫」
「あそこまで要求されたら、雑用係のなり手なんか居ないですよ」
「確かにそうね」
2人で頷きながら、〈素材屋〉に向かうのだった。
「小説家になろう」では、料理の腕がいい主人公をよく見かけますが、自分はできないので、書くとすぐボロが出そうですね。料理の分野は、詳しい人が多そうですし。
なので、主人公には別の事をやらせてみようと思って、今回、革を使わせてみました。これなら、多少の経験があるので何とかいける…と思ったのですが、読み返したら、作成中の描写を書いていませんでした。これなら、何をさせても変わらなかったような気がします…
とりあえず、今後も主人公の手作業については、無理なく出来る範囲で書いていこうかと思います。




