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ダイスを振って

2016.2.13

レイアウト修正・変更

 目の前の床に、半径1メートル位の複雑な魔方陣がある。

「1回目は魔法とスキルの習得。魔法とスキルの違いの説明は、長くなるからここでは省くけど、とりあえず才能が高いものから、順番に習得します。」

「自分で好きな物を選択できないんですね?」

「才能のない物を選んでも、使いこなせないから」

 好きな物を選びたい気もするが、使えないのでは意味もないし。何の能力を得たとしても、使ったことない物だから楽しめるだろう。

「地球に魔法はないけど、地球人に才能なんてあるんですか?」

「地球は魔力が低いだけで無いわけじゃないの。魔法としては使ってなくても、魔力自体は無意識に体に取り込んでいるわ。逆に、ブランドン大陸は魔力にあふれた大地。少ない魔力で生活していた地球人の方が、魔力の吸収や操作能力が高いってところかしら。一旦魔法を覚えてしまえば、ブランドンの人達より効率的に使えるわ」

「低酸素の高地トレーニングで、有酸素エネルギーの代謝機能が増えるような感じですか?」

「イメージとしてはそんな感じかしらね。それじゃ説明もこれくらいにして、運命の1投目始めて」

 手にしたダイスを軽く握りしめる。なるべく多い目が、最低でも2ケタは欲しいと願いながら魔方陣へ投げる。

 30面もあるダイス、丸みを帯びているのでなかなか止まらない。コロコロ転がりながら、魔方陣の縁の方へゆっくりと転がり、あと数センチという所で止まる。目の数は、

「6ですね…」

 願いかなわず、かなり少ない数だった。

「控えめな数字が出たわね」

「少ない。失敗かぁ、幸先悪い…」

 思わず、口から本音が出てしまう。

「まぁ、才能の低い物が使えるようになっても、あまり効果がでなくて実用的じゃないから。数が多ければいいってものでもないし、経験次第で後から使えるようになることもあるわ。」

「本当にそう思います?」

「…ほら、スキルが少ない分、高レベルになる確率が増えたと思えばいいのよ」

 返答にわずかな間があったような気がするが、決まった物はしょうがない。

 ダイスはふわりと浮かび、輝きながら2つに分裂し、小さな方は前方でそのまま停止。大きな方はこちらに戻り、24面のダイスとなって手の中に納まる。

「2回目はレベルね。説明するまでもないわね」

「そうですね。高ければ高いほどいいですよね」

「24もあるから、2ケタ以上がでる確率5割以上あるし」

 さっきの場合、6以下の確率って2割しかなかったよなぁ、と嫌な予感がかすめるが、暗い気持ちを振り払い、2投目を開始。ダイスは放物線を描き、先ほど同様魔方陣の中へ飛んでいき床の上を転がる。コロコロコロ…

「4ですね…」

「そうね…」

 幾分乾いた声が響く。

「4以下が出る確率って…」

「確率の話は置いといて、3投目の準備をしましょう」

 言葉をさえぎられてしまった。

「3投目は年齢。面の数は20あるけど…さっさと振ってしまいましょう」

 何か言って、藪蛇にならないよう逃げたな。

 今回もダイスは2つに分裂し、小さな方は先ほど分裂した光の隣に並び、大きい方は手元に戻ってダイスとなる。きれいな正20面体になっていた。さっきのは凧型24面体だったし、偶然にも歪な形のダイスになっていない。もし、中途半端な面数だったらどんなダイスになるんだろう、などと思いながらダイスを投げる。

「15」

「15歳ね。本人的にはどう思う?」

「そうですね。最悪はまぬがれたってところですかね。成人の記憶をもったまま幼児から始めると、体の動きは鈍いだろうし、周りの目があって色々行動も制限されますからね。面倒かなと思っていました。レベルが低いから10歳くらいから始めて、レベルアップするのがベストだと思ってましたけど。まぁ、成人扱いなら自由に行動できますし、悪くないんじゃないですか」

「確かにそうかもね。15歳でLv4なら一般人の平均と同じくらいだし」

 一般人並みか。あとは、獲得するスキルと魔法次第ってところか。

「ラスト4投目は金銭と道具。出た目の数分の大銀貨、えっと大銀貨1枚は1000G、日本円で1万円ってところね。」

「残りは5だから、1万から5万円ですか」

「そう、その分のアイテムとお金。内訳は、こちらで必要をそうなものを見繕っておくわ」

「お願いします」

 その辺は、向こうの方が知識もあるし、任せた方が無難だろう。

 手元に戻ってきたダイスは、5角柱で短い鉛筆のような形をしていた。中途半端な面数でも、これなら均等になる。さっきの疑念は無事解消された。

「それじゃ、ラスト1投、いってみて」

 面数が少なくてあまり転がりそうにないから、指先を使って回転をかけて投げる。転がるダイスを眺めていると、テストの選択問題で答えがわからず鉛筆を転がす…そんな状況を思い浮かべてしまった。いや、実際にやったことはないけれど。

「4がでました」

「いい数字でたわね」

「はい」

「最終的に見れば、30中29も恩恵を得られたのだから、かなりいい結果になったわね」

「確かに、そうかもしれませんね」

 レベルや魔法などの恩恵は少な目かもしれないが、それなりに良い結果になったと思える。最初はどうなることかと思ったけど、そこそこ成功といえるだろう。


 前方に、ダイスから分離した4つの光りが浮かんでいる。光は数字に変わり、左から6、4、15、4と並んでいる。

「それじゃ、魔法とスキルの恩恵を与えるわね」

 左の6の数字が強く光る。光る数字がこちらに向かってきて、胸の真ん中あたりに吸い込まれ体が輝く。そのまま輝いた状態がしばらく続いた後、胸の真ん中から6枚のプレート状の光が飛び出し、周囲をゆっくり回る。そして、その光のプレートに文字が浮かんでくる。

「【補助魔法】【空間魔法】【刻印魔法】【魔力増】【魔力回復】【鑑定】」

 順に読み上げる。

「魔法3つにスキル3つね。バランスもなかなか良いわね」

「バランスですか?」

「スキルの【魔力増】はMP、魔力の貯蔵量が多くなるし、【魔力回復】は名前の通り魔力の回復量が優れている」

「さっき言っていた、地球人の方が魔力の吸収や操作能力が高いってやつですか?」

「そう。魔力の量も回復も良いから、魔法がたくさん使える。そして魔法が3種類。魔法の方は直接攻撃につながる様な物がないけど」

「【補助魔法】は戦闘時のサポート、【空間魔法】は周囲の索敵や瞬間移動とかで、【刻印魔法】は戦闘時以外に使う物が多いですもんね」

「詳しいわね」

 そこらへんは、魔法大全とか読んでいたから知識としてはある。上手く使えるかはわからないが。

「【火魔法】とか【水魔法】とか直接攻撃につながるのはないけど、【空間魔法】は便利だし、【刻印魔法】はお金を稼ぐのには良いわ」

「スキル【鑑定】は?」

「アイテムの強さや、人の名前やステータスが見れるわね。全部見れるってわけではないけど」

 ここら辺は、アイテム図鑑や人物名鑑などを読んだおかげかな?

「この構成だと、戦闘よりは商売向けですか?」

「個人で見た場合は、そうかもしれないわね。でもこれだけ魔法関連が揃っていれば、十分戦闘もこなせるわ」

「レベルが上がれば?」

「そうね。レベルが上がれば」

 周囲を回っていた6枚の光のプレートがうっすらと消えていく。そして、正面左側にある4の数字の輝きが強まり、胸に吸い込まれていく。

ケンヤ・モリ  Lv4 HP:64 MP:79

 物攻:14 魔攻:17 防御:14 魔防:17

 必殺:14 素早:14 技能:14 幸運:14

「色々数値が出てきたけど、これだけだとよくわからないですね」

「今はレベルが低いから、似たような数値だけど、レベルが上がれば徐々に差は出てくるわ。あとは、レベルに対してMPが高いわね」

「魔攻、魔防も合わせれば、多少魔法系が良いといったところですか?」

「そんなところね。次は年齢よ」

 15の数字が光を増し、体全体を包んでいく。

「うわっ!」

 光が体になじんでいくにつれて、体の感覚が変になる。体がゼリーにでもなったかのように、柔らかいというか頼りないないというか。プルッとした感じで波打って、徐々に縮んでいく。縮んだ後もしばらくプルプルとふるえて、だんだん揺れが小さくなると同時に、体の固さも元に戻っていった。

「変な感覚ですね」

 服の袖やズボンの裾が余り、ウエスト周りも緩んでいる。ぶかぶかのサイズで着心地が悪いのもそうだが、体が小さくなって違和感がある。

「体の違和感については、少しすれば馴染んでくると思うわ」

「そんな簡単に馴染みますか?」

「まぁ、若返った場合でいえば一度は経験した体ですから。逆に年をとったら、体が重いとか動きづらいとかあると思いますけど」

「そんなもんですかね?」

 袖をぶらぶら振りながら体を動かす。身長は10センチぐらい縮んだようだ。

「アイテムは、転送先に直接送るわね」

 声と同時に、最後まで残っていた4の数字がスッと消える。浮かんでいた数字がすべて消えると、床にあった魔方陣も徐々に薄れていく。

 これで、《運命のダイス》による恩恵の付与は終わったようだ。


「実際、地球には帰れるんですか?」

 作業が終わったので、気になっていることを再確認する。どんなことをしても、地球に帰りたいとまでは思ってはいない。そこまでの思い入れは地球側にはないのだが…

 ただ、ブランドン大陸が実際どんなところかわからない。本での知識しかないので不安ではある。最悪、地球に帰れると知っているだけでも、不安は和らぐ。

「難しいけど、帰る方法自体はあるわ。ただ、ブランドン大陸に呼ばれたのは、偶然ではないと思うの」

「意味があるってことですか?」

「そう。偶然だけで行ける場所ではないから」

 なぜ俺が呼ばれたのか。喫茶〈フォレスト〉、あそこでもらったアイテムに、たくさんあった本。彼女たちが俺を導いたのだろうか?それとも、会ったことないマスターが関係しているのだろうか?

「だから、あせって地球に戻ろうとしないで。帰る事よりブランドン大陸で生きる事を大切にして。私から言えることはそれだけ」

「わかりました。せっかく行けるのだから楽しんできます」

「ええ」

「ところで、ウィッシュ様にまた会うことはできますか?」

「どうでしょう?それに、今だって姿は見てないでしょうに」

 いたずらっぽく笑う…雰囲気が伝わってくる。

 確かに姿は見ていないけど、また話しができたらと思う。

 何て言おうかと思っていると、

「そろそろ、心の準備はいいかしら?」

 俺の周りに、淡い光のようなものが集まってきた。

「えっ、あ、あのちょっと待って、服を直したいから…」

 体が縮んだせいで、服がダボついている。転送先で動きやすいよう、せめて靴紐を結んで、ズボンの裾を直したい。あわててしゃがみこもうとして、ズボンの裾をひっかける。体勢を立て直そうと踏ん張ったが、踏ん張りきれずよろめき、両手を突き出すように前のめりに。

 地面に転がる寸前、指先に何か布のようなものが触れ、とっさに掴んだが体を支え直すにはいたらず、そのまま手で巻き込むようにゴロゴロ二転三転した。何を引っ張ったのだろうと顔を上げると…そこには一糸まとわぬ女性、驚愕の表情を浮かべたウィッシュ様がいた。

 転送の光が強まる中、思っていたより若いなぁと思いながら見ていると、少し怒ったような表情に変わった。怒った顔も可愛いなぁと、光で視界が奪われるまで見つめ続けていた。

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