表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/57

武器屋へ(ドーン武具店)

「ここが、目的の武器屋よ」

 ティルダさんに案内されてやってきたのは、〈ドーン武具店〉と書かれた、厳つい看板を掲げる、古く年季の入ったお店だった。

 用件は、《木杖ウッドロッド》に代わる、魔法用の装備を購入するため。昨日、資金がそれなりに入ったので、戦闘訓練前に寄ることになった。


「とりあえず、護衛の代金と報奨金の分配をする」

 夕食の後、護衛3人と俺はアルヴァさんに呼ばれ、護衛料をもらうことになった。

「報奨金って何ですか?」

 隣のティルダさんに聞く。

「盗賊を捕まえて、警備兵に引き渡したでしょ。それで、街からお金がもらえるの」

「昨日門の前で、警備兵にまた来てくれと頼まれているの、見ていただろう。今日行ってきたのだが、その用件が報奨金だった」

 トレヴァーさんも教えてくれる。

「とりあえず報奨金だが、盗賊の捕縛、アジトの検挙、馬の買い取り、冒険者救出でちょうど10,000G。これは5人でそのまま等分するので、1人2,000G」

 アルヴァさんを含め5人、直接戦闘に参加した人で分配するようだ。

 ちなみに内訳は、盗賊(下っ端)500、盗賊(一般)1,000×4、アジト検挙1,500、馬500×5、冒険者救出500×3。盗賊の自白でアジトを見つけられたのも、こちらの手柄になるらしい。冒険者の分はギルドからの謝礼だそうで、人質2人と攻撃に参加していた人も合わせて3人との事。冒険者の彼は、盗賊には含まれなかったようだ。

「あとは、それぞれに護衛料を渡す」

 俺の護衛料は、数えると3,900Gあった。普通の冒険者が1ヶ月4,000Gだったはず。夕方から合流した、初日を合わせても5日間。いくらなんでも高すぎないか?疑問に思って内訳を聞いてみると、日給200×5日、手当300×3日、アリシアさんの救出1,000×2回と返事が返ってきた。

「日給…いや、全体的に高くないですか?」

 内訳を聞いても、もらい過ぎのような気がしてしまう。

「普通の冒険者が、1日160G程度と言われているんだが、【索敵】の貢献度を加えて高くしてある。手当は後半3日間の事だが、魔物、盗賊との戦闘、夜営地のおとり役、夜間警戒の補助等だな」

 そんなものなのだろうか。そのまま悩んでいると、

「そんなに気にすることはない。冒険者ギルドと商人ギルドの契約で、だいたい金額の取り決めがされている。手当については、公正な判断のもと、商人ギルドの積立から払われるしな」

 トレヴァーさんも言ってくる。話をまとめると、日給は、冒険者のレベルと能力で決まり、俺は【索敵】を含め魔法やスキルの能力から高めになった。手当はギルドが判断し、今回は日給の1.5倍相当、危険度が高いと判断されたらしい。

 アリシアさんの救出については、値段をつける基準が無い。命の値段?未来の値段?色々考えたところで、判断しようがなかった。冒険者救出が500Gだから、家族を救ってもらったから、それより高いくらいに考えておこう。

 納得できる、できないじゃなく、この世界ではそれが当たり前、と思うことにした。いくら考えても、結論が出そうもないし、結果も変わらなそうだから。

 それにしても、商人ギルドの積立があるのには驚いた。話を聞いてみると、地球で言えば保険のような物みたいだ。いつ起こるかわからない、突発的な事態には、共同で対処しているようだ。

 長い間迷っていた俺を見て、ティルダさんが笑っている。

「真面目に考え過ぎ。どうせ考えるなら、お金の使い道で悩んだら」

「お金の使い道かぁ」

「明日、装備品を見に行かない?」

 そんな流れで、5,900Gの収入を得た俺は、武器屋に来たのである。


 扉を開けて入る。店員が1人、カウンターの向こうにいる。

「いらっしゃい、ティル」

「おはよう、ドナ。ドーンさんはいる?」

「今日は、ちょっと出かけてる」

「そっか。そしたら、とりあえずドナに紹介しておけばいいかな」

 そう言って、こっちを見る。

「ケンヤ・モリ、魔法使いです。よろしくお願いします」

 頭を下げる。

「私は、ドナ。ここの店員で、この店の親方の娘。それと、ティルダの友人でもあるから。よろしく」

 笑いかけてくるのは、小柄な女性、どうやらドワーフみたいだ。

「それで、ティル。今日は装備品を見に来たの?それとも別の用件?」

「ケンヤの装備品を見に来たのだけど。別の用件って何?」

「てっきり彼氏の紹介かと」

「それなら、最初にドーンさんの確認しないでしょ」

「それもそっか。相変わらず、色気のない冒険者生活をしているのね」

「人の事言えるの?」

「私は街で暮らしてるもの。声かけてくれる人くらいいるわよ」

「かけてもらっても、どうせ付き合ってないんでしょ」

「まあね。でもティルよりましでしょ」

「はいはい」

「だいたい、タイタスさんだってギルドの…」

 話が盛り上がっているようなので、適当に見て回ることにする。最後のタイタスさんの話題が気にはなったが。相手は、ディアナさんだったりするのだろうか。

 青銅ブロンズアイアン鋼鉄スチール、それに少ないがシルバーの武器、防具が並んでいる。本で読んだときには、魔法銀ミスリルもある様だったが、ここには並んで無いようだ。それにしても、銀製品は高い。青銅と鉄で約2倍、鉄と鋼鉄で約5倍、鋼鉄と銀で約10倍に値段が上がっていく。

 つい、素材にばかり目がいってしまった。崖下で拾った壊れた武器が【格納庫】にあるので、素材として売れるのか、どのくらいになるのかと。いかん、本来の目的を忘れてしまったようだ。

 気を取り直して、アクセサリーを見ることにする。指輪リング耳飾イヤリング髪留バレッタ胸飾ブローチ首飾ネックレス腕輪ブレスレットなど色々な形がある。どれも、戦闘ステータスを上げる効果がある。効果も悪くないようだが、俺が必要としている物が無かった。

 魔法使いが使う杖の類は、魔法の効果を上げ、魔法の起動速度を助ける働きがある。それに匹敵するような効果のあるアクセサリーは、残念ながら1つもなかった。

「良いのありそう?」

 2人が寄ってくる。さすがにドナさんの前で、『良い物が無い』とは言えない。

「自分の目的に、合いそうな物はないですね」

「やっぱり、そうなるわよね」

 ティルダさんは、予想していたようだ。

「どういうこと?」

 ドナさんが聞いてくる。

「杖と同じくらいの能力のある、アクセサリーを探しているんですが」

「ケンヤは、魔法使いだけど、攻撃魔法が使えないから、自分を補助魔法で強化して戦うの。だから杖じゃなくて、通常の武器を持つから、杖の代わりになるアクセサリーを必要としているわけ」

 ティルダさんが補足する。

「なるほどね。ここにあるのは、サポートするアクセサリーだからね。メイン武器に相当するものとなると、特注になるわね」

「一般的には、作られてないのですか?」

「需要がないからね」

 俺のスタイルは、特殊な部類に入るようだ。攻撃魔法が使えない、魔力の強い魔法使い…俺は、前衛、後衛どっち向きなんだろうか?

「ちなみに、需要のない理由は?」

 解決の糸口に繋がるものがないか、需要が無い理由を聞いてみる。ドナさんが顎に手を添えて、考え込みながら言う。

「まず、メインの武器並の能力を持つアクセサリーを作ったとするわね。それが1,000Gだとして、メインの武器も1,000G。両方装備して、合計2,000Gかかりました。次に、2,000Gで1つの武器を作ります。そこで前者の2つの武器と、後者の1つの武器を比べると…」

「後者の方が強いと?」

「そういうこと。そこまで強いアクセサリーを買うなら、次の武器を考えるのね」

「なるほど」

「もちろん、とても強い武器を持っていて、それに見合った強いアクセサリーを欲しがる人はいるわよ。でも、上位の一部の人だけだから、高級武具を扱うところにしか置いてないわ。この近辺だと、王都まで行かないと無いわね」

 王都には、そのうち行きたいけど、それまで武器無しはなぁ。

「次に、魔法使いが杖を選ぶ理由だけど」

 一度区切ってから、話し始める。

「魔法使いが杖を持つのは、もちろん何かあった時に、身を守る打撃武器として使えるのもあるけど、一番の理由は、武器の大きさと魔法効果の関係ね」

「武器の大きさと魔法効果?」

「武器が大きいと、材料を多く使う。そして、材料が多くなると、魔法への効果も多くなる。つまり、材料の量が魔法の効果に比例するってこと。アクセサリーのように小さいと、魔法への効果も小さくなってしまうわ」

「そうなんですね」

「一応、杖と同等の効果を発揮するアクセサリーが、作れないわけじゃない。杖と同量の材料を用意して、それを加工して力を凝縮する。そして、その材料をアクセサリーにする。ただ、技術が必要で、加工する費用が高くつくの」

「具体的にどのくらい?」

「最終的に、杖の1.5倍の値がつくわね」

「そのくらいで出来るんですね」

 思ったよりも、高くなかった。

「いや、1.5倍あれば、もっと良い杖を買うのが普通よ」

 確かにそうなんだが。ティルダさんを見ると、

「普通ならそうだけど、ケンヤのステータス構成なら、そっちの方が合ってると思う。今までの戦い方を見た限りではね」

 賛同は得られたようだ。

「さっき技術が必要と言っていたけど、ここでも作れますよね?」

 ティルダさんは、アクセサリーが無いことを予測していた。それなのにここに連れて来たってことは、ここは技術力の高いお店って思っていいだろう。

「もちろん大丈夫よ」

 思った通りの返事が返ってきた。

「今はマスターが居ないから、帰ってきたら私から話をしておくわ。明後日以降なら、いつ相談に来てもらっても、大丈夫だと思う」

「わかりました」

 とりあえず、何とかなりそうだ。後は、お金がどのくらい必要になるのかだが。馬車に有った金貨も結構あるし、大丈夫だろう。

「私は、明日から4月の下旬まで、街を離れるから。ドーンさんに、よろしく言っといてね。帰ってきたら、多分依頼に来ると思うわ」

「わかった。伝えておくわ」

 結局、今日は買物ができなかったが、明後日に期待することにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ